今季J1のベストイレブンを独自選考。「安定感抜群」「勝敗に直結する貢献」「他を圧倒する能力の高さ」と評価された選手たちは誰か
最終節まで優勝決定がもつれ込んだ今季のJ1で、リーグの顔と言うべき活躍を見せたのは誰だっただろうか。ここでは、5人のライターにベストイレブンを選んでもらった。
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優勝争いをした横浜FM、川崎の選手たちに多くの票が集まった
杉山茂樹(スポーツライター)
FW/チアゴ・サンタナ(清水)
MF/鈴木優磨(鹿島)、西村拓真、(横浜FM)、家長昭博(川崎)
MF/喜田拓也(横浜FM)、岩田智輝(横浜FM)
DF/相馬勇紀(名古屋)マテイ・ヨニッチ(C大阪)、谷口彰悟(川崎)、山根視来(川崎)
GK/キム・ジンヒョン(C大阪)
GKは、ランゲラック(名古屋)かキム・ジンヒョンかで迷ったが、成績上位の後者にした。
右サイドバック(SB)は酒井宏樹(浦和)を抑えて山根視来。歴代のSBのなかで最も今日的で、この選手がいるといないとでは川崎の順位は3つぐらい違うのではないか。左はチームで主にウイングバックを務める相馬勇紀を半列下げ、SBとして選出する。4バックの左SBは鹿島時代にプレーした経験があるので、相馬の左SBは4バックで戦う日本代表にも適用できるアイディアだと考える。
センターバック(CB)の1人目はマテイ・ヨニッチ。何と言っても安定感が抜群で、C大阪は彼の再加入で順位が2つぐらい上がったと考える。2人目は谷口彰悟。彼が後方でボールを持つと、パスワークになんとも言えない立体的のようなものが生まれる。
守備的MFは横浜FWの2人。ガッツ溢れる喜田拓也と、CBもこなす総合能力の高い岩田智輝だ。タフな後者は、もっと評価されるべき選手である。
布陣を4−2−3−1にすれば、3の列には西村拓真、鈴木優磨、家長昭博を選びたい。西村は元チャンピオンズリーガーであること忘れてはならないし、鈴木も26人登録、交代枠5人制で行なわれるカタールW杯に最適な選手であると、声を大にしたくなる多機能型だ。家長は今季もベスト11から外せない実力を発揮した。
センターフォワードは、チアゴ・サンタナ。横浜FM、川崎でプレーすれば倍は点を取りそうな、Jリーグナンバーワンの外国人選手だと考える。
リーグ優勝を争った横浜FMと川崎の選手が中心小宮良之(スポーツライター)
FW/チアゴ・サンタナ(清水)
MF/マルシーニョ(川崎)、家長昭博(川崎)、水沼宏太(横浜FM)
MF/岩田智輝(横浜FM)、脇坂泰斗(川崎)
DF/ジエゴ(鳥栖)、谷口彰悟(川崎)、マテイ・ヨニッチ(C大阪)、山根視来(川崎)
GK/高丘陽平(横浜FM)
やはり、リーグ優勝を争った横浜FMと川崎の選手が中心になるだろう。横浜FMはターンオーバーだったことで、ひとりの選手が目立つ割合は減った。アンデルソン・ロペス、西村拓真、小池龍太を選んでもおかしくない。川崎は世代交代のなかで苦しんだところもあるが、最多5名で、地力を見せた。
ほかは各チームで核となった外国人選手の存在感が際立った。勝敗に直結する貢献。マテイ・ヨニッチは単純に守備力を上げたし、ジエゴは左サイドを中心に試合を支配した。
拮抗した戦いが多く、ベテラン、中堅、ルーキーと幅広い活躍も目立った。36歳になる家長昭博の‟青春"、32歳での水沼宏太の日本代表入りは目を引いた。
その反面、有力選手の海外移籍と外国人選手の全体的な質低下で、やや迫力に欠けるシーズンだったか。その点、各試合を引き締めたのはGKの活躍が大きく、ランゲラック、ヤクブ・スウォヴィク(FC東京)、朴一圭(鳥栖)、菅野孝憲(札幌)など、国籍年齢問わず、群雄割拠だった。
ルヴァンカップ優勝の広島は、組織の完成度は右肩上がりだった。サッカーの質を追求するチームが増えた印象か。鳥栖、札幌もその一つで、福田晃斗(鳥栖)、青木亮太(札幌)は戦術のなかで成長を遂げた選手と言える。
広島を牽引した2人もベスト11に相応しい原山裕平(サッカーライター)
FW/チアゴ・サンタナ(清水)
MF/満田誠(広島)、家長昭博(川崎)、水沼宏太(横浜FM)
MF/岩田智輝(横浜FM)、脇坂泰斗(川崎)
DF/佐々木翔(広島)、谷口彰悟(川崎)、アレクサンダー・ショルツ(浦和)、山根視来(川崎)
GK/高丘陽平(横浜FM)
横浜FMと川崎の2強が際立った今季は、当然ながら両チームから多くの選手を選出することになる。加えて復活を印象づけた広島を牽引した2人もベストイレブンに相応しいと判断した。
GKは最少失点の横浜FMの不動の守護神を。最終ラインはワールドカップメンバーにも選ばれた川崎コンビと、群を抜く対人の強さを見せつけた佐々木翔をやや強引ながら、左SBに配置。アレクサンダー・ショルツは現在のJリーグで最高のCBと言っても差し支えない。この男が不在だったら、浦和はもっと低迷していたかもしれない。
中盤でインパクトを放ったのは横浜FMの岩田智輝。強度の高い守備をベースにCBとボランチをハイレベルにこなし、強烈なミドルシュートも目を見張った。脇坂泰斗はリーグトップのアシスト数を評価。水沼宏太と家長昭博の両ベテランは優勝争いを演じたチームを牽引し、満田誠は攻守両面でルーキーとは思えない存在感を放った。
人材不足のFWは消去法の意味合いが強いものの、やはりトップスコアラーであることを称えるべきだろう。
GKはシーズンフル稼働の高丘陽平中山 淳(サッカージャーナリスト)
FW/森島司(広島)、家長昭博(川崎)
MF/エウベル(横浜FM)、満田誠(広島)
MF/岩田智輝(横浜FM)、脇坂泰斗(川崎)
DF/小池龍太(横浜FM)、佐々木翔(広島)、谷口彰悟(川崎)、山根視来(川崎)
GK/高丘陽平(横浜FM)
過去2年は川崎の選手が多数を占めたベストイレブンだが、今季は優勝チームの横浜FM勢に、ルヴァンカップ優勝、天皇杯準優勝、そしてリーグ戦でも上位と大旋風を巻き起こした広島勢も加わってくる。
GKはシーズンフル稼働で優勝の立役者となった高丘陽平。DFラインは、群雄割拠の左SBには左でもプレーした右SBの小池龍太をチョイスして、右SBには安定の山根視来。CBは広島の荒木隼人の活躍も目立ったが、主将としてチームを統率した佐々木翔と谷口彰悟の2人を選びたい。
中盤のセンターは、CBでも活躍した岩田智輝と、チームの中心的存在に成長している脇坂泰斗。左はターンオーバー制のなかでも安定したパフォーマンスをキープしたエウベル、右には攻撃的MFとしてシーズンを通して活躍した満田誠を選んだ。
際立った活躍を見せた選手がいなかったFWは、最も悩ましい。そこで、今季も大黒柱として大活躍した右ウイングの家長昭博と、攻撃的MFとして相手の脅威となった森島司の2トップコンビをセレクト。鹿島の絶対的存在として傑出した働きを見せた鈴木優磨も選びたかったが、悩んだ末に、今回はチーム成績を優先することにした。
攻撃の起点としても力を発揮した谷口彰悟浅田真樹(スポーツライター)
FW/エウベル(横浜FM)、家長昭博(川崎)
MF/マルシーニョ(川崎)、西村拓真(横浜FM)、水沼宏太(横浜FM)
MF/脇坂泰斗(川崎)、清武弘嗣(C大阪)
DF/小池龍太(横浜FM)、谷口彰悟(川崎)、岩田智輝(横浜FM)
GK/高丘陽平(横浜FM)
今季J1においては、横浜FMと川崎の"2強"が頭ひとつ抜けており、必然的にこの2クラブから多くの選手を選出する結果となった。
横浜FMからは6人。まずGKは、背後のカバーやビルドアップでJ1屈指の能力を見せた高丘陽平を選出。DFでは、岩田智輝がボランチとCBを兼務しながら、強度の高いサッカーの肝となり、小池龍太は果敢にして緻密な連係による攻撃参加が目を引いた。
MFでは、右からのチャンスメークとチームを鼓舞するリーダーシップが光った水沼宏太と、トップ下で新境地を切り開いた西村拓真を。FWでは、攻撃の中心的役割を果たしたエウベルをそれぞれ選んだ。
続いて、川崎からは4人。DFでは守備の要だけでなく、攻撃の起点としても力を発揮した谷口彰悟、MFから精度の高いラストパスが際立った脇坂泰斗を選出。
FWでは、今季もまた他を圧倒する能力の高さを見せつけた家長昭博と、スピードあるドリブルで攻撃の切り札となったマルシーニョを、いずれも迷うことなく選んだ。
そして最後のひとりは、唯一上記2クラブ以外から選んだMFの清武弘嗣。ケガの影響で出場時間が短く、本来ならベスト11にはふさわしくないのかもしれないが、出場時のパフォーマンスがあまりにすばらしく、外すことはできなかった。