セラミックの歯の詰め物の種類を歯科医が解説 ジルコニア・アルミナ・ハイブリッドの違いは?
「自分の歯と同じ色の詰め物を入れたい」という場合に、素材の選択肢の1つに挙げられるセラミック。ただ、そのセラミックにも「アルミナ」「ジルコニア」など、いくつかの種類があるのをご存じでしょうか? 今回は詰め物の治療で使用されるセラミックの種類やそれぞれの特徴、さらにセラミックの詰め物を長持ちさせる秘訣などを神楽坂わたなべ歯科クリニックの渡部康男先生に聞きました。
歯の詰め物(インレー)の素材には何がある? 金属やセラミック、それぞれの特徴は?
編集部
歯の詰め物(インレー)に使用される素材にはどのようなものがありますか?
渡部先生
現在、詰め物(インレー)に使用される素材に「金銀パラジウム合金」「ゴールド(金)」「セラミック」「ハイブリッドセラミック(ハイブリッドレジン)」があります。このうち保険診療で使用できるのは金銀パラジウム合金で、一般に「銀歯」と呼ばれる詰め物に使用される素材がこれに当たります。白い詰め物の素材に使われるのは、ハイブリッドセラミック(ハイブリッドレジン)とセラミックです。
編集部
同じ金属の詰め物でも、いわゆる銀歯とゴールドインレーではどのような違いがあるのでしょうか?
渡部先生
銀歯の素材で使用される金銀パラジウム合金には、金と銀、パラジウムのほかに銅や亜鉛、スズなど複数の金属が含まれています。金銀パラジウム合金は一定の強度があるほか、保険適用なので比較的安い価格で詰め物を入れられる点がメリットです。一方で、溶けだした成分がアレルギーを引き起こしたり、歯や歯ぐきの黒ずみの原因になったりします。
編集部
ゴールドインレーはどうなのですか?
渡部先生
ゴールドインレーでは、主に金合金やプラチナ加金が用いられます。銀歯で使用される金属よりも溶けだしにくいため、銀歯よりもアレルギーを起こしにくく、さらに歯と歯ぐきの変色も少ないのが特徴です。
編集部
白い詰め物で使用される「セラミック」と「ハイブリッドセラミック(ハイブリッドレジン)」はどう違うのでしょうか?
渡部先生
セラミックはいわゆる陶材の一種で色調や質感が天然歯に近く、審美性に優れる素材です。また、表面に汚れがつきにくく、むし歯のリスクが抑えられるのもメリットです。一方で、「割れやすい」「ほかの詰め物に比べると歯を削る量が多い」などのデメリットもあります。
編集部
なるほど。ではハイブリッドセラミック(ハイブリッドレジン)は?
渡部先生
ハイブリッドセラミック(ハイブリッドレジン)はプラスチックにセラミックを混ぜあわせた素材です。近年はハイブリッドセラミック(ハイブリッドレジン)を使ったCADCAMインレー(コンピュータ上で設計し、機械で削りだして作る詰め物)が保険適用となっています。ただ、「セラミック」と名前にあるものの、本来のセラミックとは素材の性質が異なるため注意が必要です。詰め物を白くできますが、選べる色が限られるほか、セラミックと比べると質感や透明感、強度などが劣ります。
目立たないセラミックインレー(詰め物) アルミナ・ジルコニアなどの各特徴を教えて
編集部
セラミックの詰め物にも色々なタイプがあると聞きましたが、どのような種類がありますか?
渡部先生
セラミックには主成分の違いによっていくつかの種類があります。現在、主に使用されているものではアルミナセラミック、ジルコニアセラミック、また近年は二ケイ酸リチウムガラス含有セラミックスなどが代表的です。
編集部
アルミナとジルコニア、それぞれの違いや特徴を教えてください。
渡部先生
アルミナはこれまでにも広く使われてきたセラミックで、セラミックの中でもとくに透明感に優れているのが特徴です。その審美性の良さから前歯のオールセラミック(セラミック100%の被せ物)などに使用されます。一方でジルコニアほどの硬さはなく、「割れやすい」という欠点があります。
編集部
ジルコニアはどうなのでしょうか?
渡部先生
ジルコニアは人工ダイヤモンドと同じ成分でできており、セラミックの中でもっとも硬いのが特徴です。アルミナの弱点であった硬さが改善されているため、インレーのほかに奥歯の被せ物やブリッジにも使用できます。かつては「アルミナよりも透明感が劣る」ともいわれていましたが、近年は従来よりも光の透過性を高めた高透過性ジルコニアが誕生しています。
歯医者が教える歯科治療後のセラミックの寿命や長持ちさせる方法
編集部
セラミックにも寿命はあるのでしょうか?
渡部先生
セラミック自体が劣化することはありませんが、歯につける際に使用した接着剤が溶けて詰め物が外れてしまうことはあります。ただ、その場合も、むし歯などの問題がなければ再装着が可能です。また、セラミックは割れやすいため、硬いナッツ類などを頻繁に噛んでいると、割れてしまうことがあります。
編集部
ほかに注意点などあれば聞いておきたいです。
渡部先生
気をつけていただきたいのは噛み合わせですね。セラミックは天然歯よりも硬く削れることはありませんが、天然歯は次第に「咬耗(こうもう)」といって上下の歯がこすれて減っていきます。そうすると噛み合わせ全体が変わってしまうため、結果としてセラミックにも大きな負担がかかってダメになってしまうことがあります。
編集部
セラミックを長持ちさせるためには、どのような点に気をつけたらよいですか?
渡部先生
まずは、日頃のセルフケアをしっかり行うことですね。自身の歯をむし歯や歯周病にしないことが、セラミックを長持ちさせる一番の方法だと思います。それにくわえて、歯科医院で定期的にメンテナンスを受けることも重要です。先ほどもお話ししたように、セラミックは硬いのですり減ってしまうことはありませんが、天然歯は使うごとに少しずつすり減って噛み合わせが変わっていきます。したがって、噛み合わせなどを定期的に歯医者さんで診てもらうことも長持ちさせる秘訣だと思います。
編集部
最後に、MedicalDOC読者へのメッセージがあればよろしくお願いいたします。
渡部先生
今回ご紹介したもの以外にもセラミックにはいくつかの種類がありますので、担当歯科医と相談のうえ、自分にあったセラミックを選択しましょう。
編集部まとめ
一口に「セラミック」といっても、アルミナセラミックやジルコニアセラミックなどいくつかの種類があります。詰め物の素材にセラミックを希望する際はそれぞれの素材の特徴をよく理解し、歯科医と相談しながら自身の歯にあうものを選びましょう。また、セラミックを長持ちさせるためには、治療後も定期的に歯科医院でメンテナンスを受けることが重要です。せっかく入れたセラミックが外れたり割れたりすることがないよう、セルフケアにくわえて歯科の定期検診を習慣づけましょう。
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