寝るときの姿勢が体に与える影響は? 「仰向け・うつ伏せ・横向き」どれがいい?

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「仰向けで寝るのが習慣」という人もいれば、「横向きじゃないと寝られない」という人もいます。人それぞれですが、誰にとっても「寝心地のいい姿勢」というのはあるのではないでしょうか? そもそも、寝る姿勢によって体に与える影響は変わるのでしょうか? 変わるとしたら、どのような姿勢で寝るのがベストなのでしょう。アンポ接骨院院長の安保先生に教えてもらいました。

寝るときの姿勢は、何がベスト?

編集部

寝るときの姿勢が大事だと聞きました。それはなぜですか?

安保先生

なぜなら、寝るときの姿勢は睡眠の質に深く関係してくるからです。「十分な時間、眠ったはずなのになぜかすっきりしない」「よく眠れない」と、睡眠の不満を抱えている人は、寝るときの姿勢が崩れていることが少なくありません。

編集部

なぜ、寝るときの姿勢が睡眠の質に関係しているのですか?

安保先生

寝ているときに限らず、良い姿勢とは、その姿勢をどれだけ長く保っても疲れたり痛みを感じたりしないものです。その反対に悪い姿勢を続けていると、疲れが溜まったり、痛みが生じたりしてしまいます。

編集部

確かに、座っているときも、姿勢が崩れていると腰や背中に痛みを感じることがあります。

安保先生

正しい姿勢が大事なのは、眠っているときも同じことです。本来、睡眠は疲労をとり、体を休めるために必要なもの。それなのに、寝ているときに誤った姿勢をとっていたために疲れが溜まったり、痛みが生じたりすれば、体を休めることはできません。

編集部

寝るときの姿勢には、仰向けやうつ伏せなどいろいろあります。具体的に、どのような姿勢で寝るのが理想なのでしょうか?

安保先生

極論を言うと、「自分が寝やすいと思う姿勢が一番」です。背骨が変形していたり、円背状だったりする高齢者などは、それぞれに自分の寝やすい姿勢があります。しかし、体の構造から考えると、仰向けが理想的です。なぜなら立っているときと同じ姿勢で横になるのが、体にとって一番負荷が少なく、楽な姿勢であるからです。

「立っているときと同じ姿勢で寝るのがいい」のはなぜ?

編集部

なぜ、立っているときと同じ姿勢で横になるのがいいのですか?

安保先生

人間は直立しているとき、背骨がゆるやかなS字カーブを描いています。なぜこのような弯曲があるのかというと、人間は直立二足歩行をするからです。人間が立って歩くときは、大きくて重い頭を、首や背骨で支えなくてはなりません。加えて、走ったり飛んだりすれば、首や背骨に対する負荷は数倍にもなります。

編集部

ボーリングの球と同じくらいの頭を、細い首や背骨で支えるのは大きな負担がかかりますね。

安保先生

しかし、背骨が自然なS字カーブを描いていれば、負荷を分散することができます。また、上下運動の衝撃も吸収することができます。そのため、背骨はゆるやかなS字カーブを描いているのです。

編集部

寝るときも、S字カーブをキープした方が良い、ということですか?

安保先生

そうです。背骨が自然なS字カーブを描いた状態で横になると、体圧が均等に分散され、体への負荷が少なくなります。また、血流がスムーズになるので、疲労回復の効果も期待できます。

編集部

なるほど、眠っているときの体の負担を軽減するために、仰向けが良いのですね。

安保先生

それから、仰向けで寝ると寝返りを打ちやすいというメリットもあります。寝返りは睡眠中、体にかかった負担を軽減し、体をほぐすために、無意識に行われる行動です。仰向けだと寝返りを打ちやすいので、体にかかる負荷を上手に解消することができます。

編集部

そのほかにも、仰向けで眠るメリットはありますか?

安保先生

たとえば、胃酸が逆流するのを防ぎ、消化管の問題を減らすことができるのも、仰向けで眠るメリットです。また、顔が枕や布団に触れないことから、顔の肌呼吸が守られますし、摩擦も起こりにくいため、吹き出物やシミ、しわ、たるみなどの肌トラブルが起きにくいということも挙げられます。

「仰向けだと寝づらい」という人は?

編集部

でも、「仰向けだと寝づらい」という人もいると思います。

安保先生

確かに、そういう人もいます。たとえば、「仰向けだといびきをかく」という人もいるでしょう。これは、重力で舌が落ち込み、気道の一部が塞がれてしまうから。この場合は無理に仰向けで寝る必要はありません。横向きに寝ることで、いびきをかきにくくなるでしょう。

編集部

「腰痛がひどくて仰向けで眠れない」という人もいますね。

安保先生

その場合は腰の下に枕やクッションを入れて高くし、膝を折り曲げて寝ると腰の痛みを緩和できます。あるいは、無理に仰向けで眠ろうとせず、横向きで眠るのもよいでしょう。横向きの姿勢になり、脚の間に枕やクッションを挟むと、腰の痛みが軽減されるので、ぜひ試してみてください。

編集部

安定して仰向けで眠るためには、どのような環境を整えれば良いでしょうか?

安保先生

マットレスや敷布団の硬さや反発力に気をつけましょう。反発力が強すぎると、自然な寝返りを妨げてしまいます。また柔らかすぎると、腰が沈み込んでS字カーブを保つことができなくなったり、頭や腰が落ち込んでしまったりします。

編集部

枕はどのような高さが良いのでしょうか?

安保先生

私が考えるベストな高さは、厚手のタオルを四つ折りにしたくらいの高さです。実際にタオルを四つ折りにしてその上に後頭部を乗せてみると、イメージがつきやすいでしょう。間違えてはいけないのは、タオルや枕を首に当てないということです。

編集部

なぜ、首に当ててはいけないのですか?

安保先生

枕を首に当てると全身の筋肉が硬くなり、緊張してしまうから。本来、寝るときには首に何も当てない方が良いのです。習慣的に、首に枕を当てていた人は、いきなり何も当てないと寝づらいと思うので、少しずつ高さを減らしていきましょう。枕やタオルを首に当てたときと、当てていないときで、自分の腕やふくらはぎ自身で圧迫して比較してみてください。はっきりと違いがわかるはずです。

編集部

そのほか、睡眠の質について寝るときの注意点はありますか?

安保先生

あとは、室温も気をつけましょう。冷え過ぎは禁物です。窓を開けて寝ている人は、できれば閉じて寝るようにしましょう。どうしても息苦しいという場合は、ベッドから遠く離れた窓を少し開けるようにしましょう。

編集部

ほかに、睡眠の質をあげるためにできることはありますか?

安保先生

お勧めしたいのは呼吸法です。真向(まっこう)法という呼吸法で内臓を整えると自然と睡眠が深くなります。具体的なやり方としては、まず、仰向けで横になります。そして両手をおへそのところに置き、鼻から吸って口から吐く呼吸を繰り返します。できれば7回、難しければ3回行いましょう。次に、両手をおへそと恥骨の間へずらして、同じ呼吸を繰り返します。次は恥骨の上へ両手を置いてまた呼吸。こうすることで筋肉が緩み、仰向けで質の良い睡眠を取ることができるでしょう。

編集部

呼吸によって内臓が整い、睡眠が深くなるのですね。

安保先生

大事なことは、ゆっくり呼吸をすること。これによって全身の筋肉が弛緩し、内臓も本来あるべき場所へ整います。できればこの呼吸法を習慣化し、毎日続けてみましょう。「仰向けでは寝られない」という人でも、次第に仰向けでも心地よく眠れるようになると思います。

編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

安保先生

不眠は生活の質を左右する大きな問題。日本では多くの人が不眠症など、睡眠に関するトラブルに悩んでいます。自己流にあれこれ試してみるのではなく、治療院やクリニックなどの医療機関に通うと、スムーズに問題が改善されることもあります。ひとりで悩まず、専門機関に相談することをお勧めします。

編集部まとめ

睡眠の質が低下すると、日中の活動が妨げられ、仕事や勉強のパフォーマンスが落ちることも。そのため、できるだけ良質の睡眠を取るために、まずは姿勢や呼吸を整えるところからはじめてみましょう。

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