「糖尿病」の症状・食事・原因・予防法はご存知ですか?医師が監修!

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「人生100年時代」といわれている現代で問題視されているのが生活習慣病です。生活習慣病は食事や睡眠などの生活習慣の中で発症する病気のことをいいます。

こうした生活習慣病を防ぐために脂質や糖質などの栄養素には上限量や推奨量などが設定され、改善のために健康診断や栄養指導などが行われているのです。

今回はそんな放っておくと大きな病気にもなりかねない生活習慣病の1つ、糖尿病について解説していきます。

糖尿病の診断を受けている人も、ならないように気をつけたいという人もぜひ参考にしてみてください。

糖尿病の特徴

糖尿病とはどのような病気ですか?

三大生活習慣病の1つで、簡単に説明すると血糖値が高くなる病気です。血糖値が上がると尿に含まれる尿糖も高くなり、甘いにおいがします。これが「糖尿病」という名前の由来です。糖尿病は以下のように分類されます。

1型

2型

妊娠糖尿病

肝臓疾患・内分泌疾患などの他の疾患、治療薬の影響によるもの

どの型であるかによって治療方法が異なりますが、基本的に完治はしない病気であるといわれています。だからといって諦めて放置してしまうと合併症や失明・体の壊死などの恐ろしい症状を引き起こすこともあるため注意が必要です。

また緩徐進行1型糖尿病と呼ばれ、2型糖尿病のような状態から始まり徐々に1型糖尿病の状態になっていくタイプもあります。

1型糖尿病と2型糖尿病の特徴を教えてください。

1型は自己免疫性・ウイルス感染症・薬剤性など様々な要因で発症します。2型は後天性という肥満や生活習慣による糖尿病のことを指します。

2型は生活習慣の改善が治療として有用ですが、1型は血糖値を下げるホルモンであるインスリンを体内で作ることができないため、インスリン注射による治療が必要です。

糖尿病の原因は何ですか?

前述したように糖尿病はどの糖尿病に分類されるかによって原因も変わってきます。まず1型の場合は自己免疫疾患などの免疫疾患を持病とし、通常は体内で作られるはずのインスリンが作られません。

私たちの体は普段血糖が上昇すると血糖の増加を抑えるためにインスリンというホルモンが放出されます。しかしこのインスリンが作られないと血糖はどんどん増加していき、糖尿病を引き起こすのです。

2型の場合は、肥満などの生活習慣による脂肪の増加でインスリンの分泌量が低下することで糖尿病になります。そして妊娠糖尿病については後述にて詳しく解説しますが、主に妊娠による体の働きの変化によって起こるといわれています。

妊娠中に糖尿病になることがあると聞きます…。

妊娠糖尿病といわれてはいますが、妊娠糖尿病の定義は「妊娠して初めて起こった糖代謝異常」とされています。妊娠糖尿病は母子ともに悪影響を及ぼす危険性があるため、妊娠中の食事などに注意が必要です。特に持病として糖尿病がある人や肥満体型の人はリスクが高いため検査が必要になります。

糖尿病になるとどのような症状が現れますか?

糖尿病になると糖によって血液が濃くなってドロドロになります。すると体が血液の濃度を下げようと大量に水分を欲するようになり、口渇感が生じるのです。強い口渇感によって多く水分をとることで頻尿の症状も現れ、さらに症状が進行していくとインスリンの低下によって著しい体重減少や全身に激しい倦怠感を感じるようになります。

特に激しい倦怠感や吐き気が生じている場合は非常に危険な状態であるため、すぐに診察を受けましょう。

糖尿病の診断と治療

糖尿病の診断基準を教えてください。

糖尿病には血液検査が用いられ、主な診断基準としては以下のようなものがあります。

早朝空腹時血糖値:126mg/dL以上

随時血糖値:200mg/dL以上

ヘモグロビンA1c:6.5%以上

75g経口ブドウ糖負荷試験:200mg/dL以上

ちなみに項目ごとの説明をしていくと、早朝空腹時血糖値は夕食から8時間以上おいた翌朝の早朝に血糖値を測ります。何も食事を摂取していない状態でどの程度の血糖値であるかを調べるわけです。反対に随時血糖値は時間帯などの縛りをせずにありのままの血糖値を調べます。

ヘモグロビンA1cは赤血球内のたんぱく質の1つであるヘモグロビンの中でどの程度のヘモグロビンが血糖の影響を受けているかを示す値です。高ければ高いほど多くのヘモグロビンが血糖の影響を受けていることになり、糖尿病の疑いが強くなります。

そして75g経口ブドウ糖負荷試験は75gのブドウ糖を摂取してから2時間後にどのような状態になっているのかを調べる検査です。このようにあらゆる項目の値から糖尿病の診断は下されています。

糖尿病ではどのような治療を行いますか?

糖尿病の治療は完治ではなく、血糖のコントロールを目的として行われます。その方法として行われるのが以下の3つです。

食事療法

運動療法

薬物療法

食事療法では糖質の制限をするだけではなく、急な血糖の上昇などを防ぐことも大切です。最初に野菜を食べ、最後に炭水化物をとるようにすると糖の吸収が緩やかになり、血糖値の急な上昇も防げます。あとはよく噛んで食べると満腹中枢が刺激されて食べ過ぎを防げます。

運動療法は特に生活習慣や肥満などが原因として挙げられる2型糖尿病にはもちろん1型糖尿病の人にも有用です。筋トレと一緒に有酸素運動も行うことでより効果的になります。

薬物療法としては飲み薬である経口血糖降下薬と自己注射によるインスリン注射が主です。血糖値を下げる薬には糖尿病の状態や原因にあわせて多くの種類があります。内服薬とインスリンを併用する場合もあるので、どの方法を選ぶかは患者さんの状態などによって判断します。

飲み薬やインスリン注射は一生続けることになりますか?

冒頭で解説したように糖尿病は「治る病気」ではありません。一度罹った場合には「治すこと」ではなく「上手く付き合って生きていく」ことを目標に治療が行われます。そのため食事・運動療法に「いつまでも」付き合っていくものとして考えておきましょう。

シックデイについて知りたいです。

糖尿病の患者さんは基本的に免疫力が低下している状態にあります。そのため感染症などによって下痢や食欲不振などの体調不良を起こす人も多いです。そういった一時的な体調不良の状態をシックデイといいます。シックデイになったらなるべく消化の良いものを摂取し、医療機関に相談しましょう。

糖尿病の予防と注意点

糖尿病の予防方法を教えてください。

糖尿病の中でも多いとされているのが後天性の2型です。2型は主に肥満や生活習慣が原因として挙げられるため、普段から炭水化物や脂質などの過剰摂取を控え、適度な運動を心がけましょう。また、定期的に健康診断を受けることで糖尿病の早期発見も期待できます。

糖尿病と診断されたら日常生活や食事で気をつけることはありますか?

糖尿病と診断された場合、指示された薬の服用はもちろん、栄養指導における管理栄養士からのアドバイスをもとに糖質を制限した食事を心がけましょう。適度な運動も有用です。

糖尿病になると合併症に注意しないといけないと聞きます。

糖尿病に罹った場合に懸念される合併症は以下の3つです。

網膜症

腎症

神経障害

目の毛細血管の出血などが見られる網膜症は、最悪の場合失明の危険もあるため注意が必要です。腎症はほとんど自覚症状のないところが恐ろしく、気づいたときには腎不全になっているケースも少なくありません。神経障害になるとしびれや感覚麻痺などが起こり、日常生活に支障をきたす恐れがあります。これらは糖尿病の三大合併症として恐れられ、早期発見と早期治療が求められる病気です。

最後に、読者へメッセージがあればお願いします。

身近な病気である糖尿病は一度罹ると治ることがないため注意を必要とする病気です。治らないからといって放置しておくと血糖でドロドロになった血液によって血管が詰まり、体の一部が壊死してしまうこともあります。そうなると切断しか方法がないため、油断して放っておくと今後の人生を大きく左右する病気として認知しておいてください。

編集部まとめ


いかがでしたか?今回は私たちにとって身近な病気である生活習慣病のうちの1つ、糖尿病について解説しました。

糖尿病は放っておくと合併症や失明・体の一部の切断など、「血糖値が高くなる病気」としての認識だけだと恐ろしいことになるのが分かっていただけたかと思います。

糖尿病は生活に身近な病気であるからこそ、生活習慣の改善によって防げる病気です。日頃の生活習慣を見つめなおして糖尿とは無縁の生活を目指しましょう。

参考文献

糖尿病|e-ヘルスネット

糖尿病|厚生労働省

対象疾患・治療法HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)ってなに?|国立研究開発法人国立循環器病研究センター

糖尿病に関する留意事項|事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン

B.医療関係者の皆様へ|厚生労働省