11日、東証で投資家向けに中間決算を発表するキリンビールの加藤社長(撮影:吉川忠行)

写真拡大

国内ビール大手各社の2006年6月中間期の連結決算が出そろった。今年上半期のビール系飲料(ビール、発泡酒、第3のビール)の販売量(課税ベース)で、キリンビール<2502>がアサヒビール<2502>をわずかな差で追い抜き、5年ぶりに首位に。業績面でも、キリンが上回り、2強がデッドヒートを繰り広げる状況が浮き彫りとなった。

 キリンは、売上高が前年比5.7%増の7827億円、営業利益が同19.9%増の449億円、純利益が同27.1%増の189億円と、いずれも中間決算ベースで過去最高を更新した。

 昨年春に「のどごし生」で参入した第3のビールの販売量が対前年比2倍と堅調、市場縮小が著しい発泡酒でも2月発売の「円熟」の好調などで対前年比1.9%のプラスを確保。国内酒類の好調で、診療報酬の改定に伴う医療事業の減益を吸収した。

 一方、アサヒビールは、売上高は前年比1.2%増の6644億円、営業利益は同7.1%減の286億円、純利益は同23.8%減の144億円だった。

 「新生」など発泡酒の販売量が同36.2%の大幅減となり、5月の「アサヒぐびなま。」投入などで同46.4%増だった第3のビールや6年ぶりのプラスとなったビールの好調でもカバーし切れず、酒類単体では減収減益。子会社化で連結対象となった食品・薬品会社の売上高が上乗せされたため連結ベースで増収は確保したが、販管費の増加や減損質が減益につながった。

 荻田伍社長は、決算説明会でキリンに上期で首位を奪回されたことに「腸(はらわた)の煮えくりかえる思い」と総括。「下期は何とかビール、新ジャンルの商品を出しながら反転攻勢する」と強調し、通期で売上高が前年比4.1%増の1兆4880億円、営業利益が同5.8%増の955億円、純利益が同12.9%増の450億円と、いずれも過去最高益更新を達成する決意を示した。

 2強の明暗を分けたのは、第3のビールと発泡酒。ともに業界最後発として05年4月に第3のビールの新商品を発売したが、キリンは破竹の勢いでシェアを伸ばし、「ドラフトワン」で独走するサッポロからトップを奪った。一方、アサヒは3番手に甘んじた。

 また、1─6月の販売量が前年比15.5%マイナスとなった発泡酒市場で、アサヒが市場縮小の影響を直に受けたのに対し、キリンでは「円熟」が「淡麗」「淡麗グリーンラベル」に次ぐ第3の柱に成長し、業績を下支えした。

 その一方で、アサヒは6月、拡大が続くプレミアムビール市場に新商品「プライムタイム」を投入、秋には第3のビール「極旨」、発泡酒でも新商品を発売し、通期で6年連続となる首位死守に向け攻勢を強める。荻田社長は「乱売を仕掛けて、シェアを奪回する意図はない。成長を図るためには商品を育成しなければならない」と説明し、危機感をにじませた。

 キリンの加藤壹康社長は、決算説明会で「他社の新商品についても一時的には効果は出るが、結果的には弱い既存品を持っていると共倒れになる危険性を持っている」と述べ、アサヒの新商品攻勢を暗にけん制。「むやみに価格競争、新商品をバンバン打って出ることは計画していない」と続け、“ひとり勝ち”の第3のビールと発泡酒を軸に、通期で年初目標より480万ケース上方修正した1兆8960万ケースの販売計画を達成することを強調した。【了】