なぜ? 高速道路トンネルの“右側”に非常駐車帯が…アンバランスな道路設備のナゾ
トンネル内の非常駐車帯は、進行方向から見て左側にあるはず。ですが、一方通行のトンネルなのに、なぜか右側にも設けられている場合があります。実はこれ、道路の歴史に関係しているのです。
正体は「不要になった反対側の非常駐車帯」
故障車や緊急車両(消防・救急・警察など)・道路管理車両が一時停車できるようにするための道路施設が非常駐車帯です。自動車専用道路ではおおむね200m、高速道路では500m、トンネル内では750m間隔で、通常は道路の左側に設置されています。
しかしなかには、一方通行のトンネルにも関わらず、道路の右側にも非常駐車帯がある場合も。追越車線側で緊急停車するなど極めて危険ですから、そうした非常駐車帯は通常、ポールなどで閉鎖されています。では、何のために設けられたのでしょうか。
高速道路の非常駐車帯は通常、車線の左側にある(画像:写真AC)。
あるNEXCOのOBによると、こうしたトンネルはもともと双方向通行だったものだといいます。道路を拡張する過程で、仕方なく非常駐車帯を閉鎖したのだそう。
特に地方の高速道路では、暫定2車線(片側1車線)で開通させ、後から並行道路を追加で作るようにして上下線を分離し4車線化する手法が多く採用されています。1本のトンネルを対面通行で使用していたところ、並行してもう1本のトンネルが建設され、それぞれ一方通行として使用するようになると、既存トンネルでは対面通行時代の向かい側車線の非常駐車帯が不要になります。
とはいえ、その非常駐車帯をコンクリートで埋めるのはさすがに手間がかかるため、閉鎖扱いにしているというわけです。たとえば、近年4車線化された東海北陸道や、湯浅御坊道路などの一部トンネル、かつ“先にできたほう”のトンネルで、閉鎖された右側の非常駐車帯が見られます。
このように、道路拡張の過程を物語るアンバランスな設備は、非常駐車帯だけではありません。たとえば東名高速下り線の大井松田IC〜御殿場ICは、「右ルート/左ルート」に分かれますが、この右ルートは昔の上り線であり、その当時の面影がいまも一部に残っています。
同区間では、上り線用の道路を別ルートで作って、既存ルートの上り線を下り線として使うことで、車線を増やしたのと同じ効果を得ました。元・上り線だった右ルートは、左右の路肩の幅が通常の下り線とは異なっていたり、旧・鮎沢PA上り線跡地が管理施設に転用されていたりします。