中部山地を縦貫する「中部縦貫道」の建設が進んでいます。完成すれば、長野・新潟へ迂回する上信越道よりも近い、東京から北陸3県への最短路に。一般道区間も多いこのルートは、どれだけ“使える”でしょうか。

山を越えれば「北陸まで最短」

 東京から北陸へクルマで向かう場合は、関越道〜上信越道〜北陸道経由が一般的です。2019年には上信越道の長野・新潟県境前後に残っていた暫定2車線区間も全て4車線化され、だいぶ走りやすくなりました。

 しかし、「最短ルート」という観点では別の選択肢が浮かびます。それが、長野県松本から中部山地を貫き、福井へ続く国道158号、並行して「中部縦貫道」の建設が進むルートです。東京から松本までは中央道・長野道を使います。

 上信越道経由の場合、東京の新宿駅から金沢までは約470km(東京〜京都間とほぼ同等)ありますが、中部縦貫ルート〜東海北陸道を経由した場合は、おおよそ410km程度まで縮まります。

 福井までなら、上信越道経由で約560km、東名経由で約510kmのところ、おおよそ450kmに。中部縦貫道は、関東甲信と中部地方の山間部をつなぐだけでなく、「関東〜北陸3県の最短路」ともうたわれています。

 急峻な中部山地を貫く中部縦貫道、いまどれくらいできているのでしょうか。以下、3区間に分けてみてみましょう。

長野県松本〜岐阜県高山


中部縦貫道の一部になる安房峠道路(乗りものニュース編集部撮影)。

 北アルプスを越えるこの区間は、中部縦貫道で最も具体化が遅れています。長野道から松本の平野部にかけて「松本波田道路」の建設が進んでいるものの、そこから岐阜県境に近い中ノ湯までは事業化すらしていません。

 2車線の国道158号は狭く、つづら折りのカーブが続くうえ、大型車がすれ違えないトンネルが連続。ただ一部区間は、「奈川渡改良」の事業名で古いトンネルを迂回する別線の整備が進んでいます。

 県境の中ノ湯〜平湯間は有料道路「安房峠道路」があり、これが将来的に中部縦貫道の一部になります。それまでの狭い山道から、標高約1800mもの高所で幅の広い高規格道路トンネルに入ると、ちょっとホッとするかもしれません。

 安房峠道路から岐阜県高山の市街地までの区間も事業化されていませんが、後述する「高山清見道路」を高山ICから東、旧丹生川町まで延伸する工事が進んでいます。

 とはいえ、松本ICから高山駅までのアルプス越えは現状、安房峠道路経由でも2時間近くかかります。

できてきているのは「高山より西」

 岐阜県高山市から西はどうなっているのでしょうか。

岐阜県高山〜同・郡上

 高山市街地の高山ICから西へ、東海北陸道の飛騨清見ICに接続する24.7kmの「高山清見道路」が2007(平成19)年までに開通しています。これも中部縦貫道の一部で、暫定2車線、無料の自動車専用道です。

 高山市は「飛騨ナンバー」の地域ですが、市街の日常的なショッピングセンター駐車場などでは「岐阜ナンバー」も目立ち、そこから高山ICへ流入し郡上方面へ向かっていくクルマも見られました。高山と郡上のあいだは山越えが必要ですが、高山清見道路の開通で、日常的な往来も増えたのかもしれません。

 なお、飛騨清見ICから白鳥ICまでの約41kmは、東海北陸道との重複区間です。


高山清見道路(乗りものニュース編集部撮影)。

岐阜県郡上〜福井

 中部縦貫道で目下、建設が佳境を迎えているのはこの区間。白鳥ICから福井県境を越える「油坂峠道路」に続く福井県内の区間「大野油坂道路」35kmの建設が進められています。こちらは2022年度から26年度にかけ、3回に分けて開通する予定です。

 これに続く「永平寺大野道路」26.4kmは2017年に全線開通しており、北陸道の福井北JCTへ接続しています。

 岐阜県と福井県のあいだは険しい山が阻んでいるため、いくつかあるルートはどれも峠道の難所です。大野油坂道路が開通し、東海北陸道〜北陸道が結ばれると、福井と中京圏の往来は大きく変わるのではないでしょうか。

※ ※ ※

 ただ前出の通り、中部縦貫道は長野〜岐阜のアルプスを越える区間の多くが未着手となっていることから、岐阜〜福井の区間が開通しても、関東甲信からこのルートを使って福井に行こうという人は限定的でしょう。関東甲信と中部山地を隔てる細い動脈、国道158号が“太く”なる日はいつになるでしょうか。