課題もまだまだあります。

次世代燃料のアンモニア

 日本郵船、ジャパンエンジンコーポレーション、IHI原動機、日本シップヤードの4社は2022年9月7日(水)、研究開発中の「アンモニア燃料アンモニア輸送船」について日本海事協会から基本設計承認(AiP)を取得したと発表しました。


アンモニア燃料アンモニア輸送船のイメージ(画像:日本郵船)。

 アンモニアはカーボンニュートラルに向けた次世代の船舶燃料の“本命”のひとつと目されています。7月に基本設計承認を取得したアンモニア燃料タグボートに続き、大型船の実用化にひとつの画期を迎えました。4社は2026年度の実証運航の実現を目指しています。

 現時点で、アンモニアを舶用燃料として利用するための国際規則は存在しないことから、既存の重油燃料やLNG燃料を利用する船舶と同様の安全性をアンモニア燃料船において担保すべく、4社は研究開発を進めてきました。アンモニアを舶用燃料として利用する際の安全性について、HAZID(安全性評価手法の一種)を通じてリスク評価を実施、その担保が可能との見解を得て、AiP取得に至ったといいます。コンセプトに留まらず代替設計承認を見据えたリスク評価とAiPの取得は、世界初だということです。

毒性あるアンモニアの課題

 現在の日本ではLNG(液化天然ガス)燃料船の普及が進んでいますが、これは過渡期のソリューションとされており、2030年代以降、燃焼してもCO2を排出しないアンモニアなどが普及していくと考えられています。

 ただし、以下の課題が挙げられています。

・難燃性かつエネルギー密度の低いアンモニアの使用比率を高めながら、エンジンにて安定的に燃焼させ運用する必要がある。

・アンモニアを燃焼させるとCO2を発生しない代わりに亜酸化窒素(N2O:CO2の約300倍の温室効果)が発生する可能性があるため、発生を抑制する燃焼制御が重要。

・毒性があるアンモニアを漏洩しない設計、万が一漏洩した場合には安全対策を取る必要があり、従来の船舶と同等水準の安全性を確保するため、リスクアセスメントを通した対策が求められる。

 これらの課題に対して4社は、従来船と同等以上のアンモニア積載量を確保しながら、課題点を克服しうるプロトタイプ船の設計を完了しAiPを取得しました。

 4社は今後も研究開発を進め、日本が主導するアンモニア燃料船に係る安全ガイドライン、法規制などの整備に貢献することを目指すといいます。