82年前の9月7日、ドイツの飛行艇「BV 222」が初飛行しました。

アメリカ行き旅客便の夢から誕生


ドイツ空軍の飛行艇「BV 222」(画像:kitchener.lord)。

 1940(昭和15)年の9月7日。ドイツの飛行艇「BV 222」が初飛行しました。

 全長37.0mに対し、全幅46.0m、全高10.9m、最大離陸重量は約50t。胴体は魚のハゼのようにずんぐりむっくり、主翼にはプロペラが計6つ横並びで備えられ、100名近い人員と約20tの装備・運搬が可能な当時としては異例の巨大機でした。

 開発のきっかけは、大西洋航路で郵便輸送を行っていたルフトハンザ航空が、旅客便を就航しようと動いたからです。この要望にブローム&フォス社は応え、まず3機が製造、そのなかで「V1」と名付けられた初号機が、80年余り前のきょう、初飛行しています。

 しかし、実用化できるようになったころには、すでに第2次世界大戦が勃発しており、ドイツ企業がアメリカ方面へ旅客便を飛ばすことは、ほぼ不可能となります。代わりにこの飛行艇を採用したのがドイツ空軍でした。 

 BV 222の注目点は、当時は珍しい軽油を燃料とする「ディーゼルエンジン機」だったこと。これの何がメリットかというと、いざという時に潜水艦「Uボート」などのディーゼル搭載艦からでも燃料を補給できたため、自国から遠く離れた洋上でも味方艦船と出会えれば、給油を受けることができたという点です。

 当時の航空機のほとんどはガソリンを主燃料とするレシプロエンジンを搭載していたため、これは珍しいことでした。

 戦線に投入されたのは1941(昭和16)年夏からで、物資輸送や兵士の救援に力を発揮しました。しかし本来、旅客機として開発されたこともあり、敵機の襲撃に対して脆弱であり、なおかつ足も遅かったため、最終的に製造された13機のうち約半分が撃墜されています。

 その後、ドイツ軍は後継機として1944(昭和19)年に「BV 238」を製造。こちらはガソリンエンジン搭載で、サイズはひと回り大きくなり、最大離陸重量は倍の100tもあったとか。同機は大戦中に造られたドイツ機のなかで最大を誇っていましたが、結局1機のみの製造にとどまり、実戦投入される前にイギリス軍の攻撃で破壊されています。