1億7600万円で落札...安倍元首相「国葬」、演出請け負うのはどんな会社? 過去に、ビートルズの武道館公演など担当
日本武道館で2022年9月27日に開催される安倍晋三元首相の国葬について、論議が続いている。なかでも最近、注目されているのは演出を取り仕切る会社のことだ。報道によると、この会社は安倍元首相が開催してきた「桜を見る会」の運営もしており、安倍氏の催事とは縁が深い。一体どんな会社なのか。
5年連続で「桜を見る会」
この会社は、東京都江東区のイベント会社「ムラヤマ」。共同通信によると、2022年9月2日、国の入札情報で、同社が国葬の企画・演出の業務を1億7600万円で落札したことが分かった。
さらに、国の入札情報によると、同社は2015年3月以降、5年連続で、安倍元首相が在任中に主催した「桜を見る会」の会場設営業務を一般競争で落札。17〜19年の会では、いずれも入札前に、同社と内閣府が打ち合わせしていたことが発覚し、野党から批判されたという。
同社はこれまでに、中曽根康弘元首相の内閣・自民党合同葬や、東日本大震災10年の追悼式、秋篠宮さまが皇位継承順1位の皇嗣の地位に就いたことを内外に示す「立皇嗣の礼」事務局などの会場設営や運営業務なども落札しているという。
創業120年の老舗企業
ムラヤマのウェブサイトによると、同社は創業120年の老舗企業。以下のような社史がつづられている。
〇1906年・・・日露戦争凱旋門を芝大門上に制作。〇1920年・・・日本初の模擬店を制作。今では当たり前の形式を考案。現在の東京・江東区砂町で初めて人々の目に触れる。〇1952年...日本人初のボクシング世界チャンピオン白井義男の世紀の一戦のリングを制作。戦後の日本人の希望の舞台を演出。〇1964年...「第36回東京オリンピック」の舞台でも日本中の感動の裏方を務める。〇1966年...音楽界にとどまらず、後世の人々にまで影響を与えたザ・ビートルズ。初来日のあの伝説のステージを制作。〇1970年・・・大阪で開催された万博に参画。
日露戦争勝利を祝う凱旋門から、庶民相手の模擬店、白井義男の世紀の一戦、東京オリンピックにビートルズ来日公演、さらには大阪万博と、社史はそのまま20世紀の日本の社会史、世相史につながる。
さらに90年代には、社運を賭けてテーマパーク「サンリオピューロランド」に取り組み、後のUSJユニバーサルスタジオ・ジャパンを始めとする各種パーク参画への礎を築いた。創業100周年の2002年には、アジア初のサッカーワールドカップ「2002FIFA World Cup Korea Japan」という世界的イベントにも挑戦した。
業務内容は、「展示会、企業プロモーション、販促イベント、商業・アミューズメント施設、国家的式典、国際スポーツイベント、テーマパーク、MICE関連事業と弊社が手掛ける領域は多岐に亘っています」と記している。
なお、ウェブサイトには最近の主な事業の紹介が並んでいるが、「桜を見る会」は掲載されていない。
日本テレビの子会社に
同社が国葬を担当することになったことで、あらためて「桜を見る会」との関連が注目されることになった。
TBSによると、岸田文雄首相は4日、「そもそも武道館でこうした事業を担うことができる業者というのは4社ほどに限られていると聞いている」と述べたうえで、「今回正式な手続きのもとに落札されたものだと認識している」と話した。
また、FNNによると、松野官房長官も5日の記者会見で「特定の業者に便宜をはかった事実は一切無い」と述べ、所定の手続きのもとで一般競争入札を実施した結果、1社から入札があり落札が決定したことを明らかにした。
もっとも、SmartFLASHによると、同社は今年3月、日本テレビHDの子会社になっていることから、「日テレは国葬儀は賛成なんやな!」という声がネットで出ていることを紹介し、報道機関としての日テレの立場にも影響を与えるのではないかとの懸念を伝える。
国葬についての大手メディアの世論調査は概ね「賛成」よりも「反対」が上回っている。とりわけ直近の9月4日に公表された読売新聞の調査では、「評価しない」が56%、「評価する」が38%。両者の差が一段と開いている。
TBSによると、政府は9月6日、国葬の費用について、これまでに支出を決定した会場設営費などおよそ2億5000万円に加え、▽警備費におよそ8億円、▽海外要人の接遇費におよそ6億円などが追加でかかると明らかにした。総額はおよそ16億6000万円となる。