導入から3年、もう名実ともに「JALの主力機」になりました。

コックピットのルックスから違う!

 いまから3年前の2019年9月1日、JAL(日本航空)が初めて新造導入した欧州エアバス製の旅客機である「エアバスA350-900」が、羽田〜福岡線に就航しました。これまで同社では、米国ボーイング社の旅客機が中心の機材構成だったことから、JALのパイロットにとっても”初づくし”の機体となりました。


A350-900のJAL初号機(2019年6月、乗りものニュース編集部撮影)。

 JALのA350-900は、同社がこれまで主力機としてきた、ボーイング777の後継機として導入。2022年現在は、16機が羽田〜新千歳、福岡、那覇線をはじめとする国内幹線を中心に運用されています。同型機の導入に際しJALでは、客室仕様を全面的に刷新。全席に個人モニターやUSBポート、電源コンセントを設置したほか、シートも全クラスで新仕様のものを導入しました。

 A350-900をはじめとするエアバス製機は、パイロットから見ても、ボーイング機とは大きな違いが多数存在します。

 代表的な違いとしては、現行のエアバス機の操縦桿は、各操縦席横に設置された小さな「サイドスティック」タイプが採用されていること。また操舵を電気制御で行う「フライ・バイ・ワイヤ」が採用されており、コンピューターによる制御が多く取り入れられているのも特徴です。

 JALのA350-900初号機のデリバリーフライト(納入のための回送便)を担当した仲本大介機長によると、ボーイング機(同氏がかつて担当した737型)とエアバス機では、「操縦している感覚としてはあまり違いはない」としつつも、「操作で起こっている“コト”が違う」といいます。というのも、ボーイング機は操縦桿と動翼の動きがリンクしているのに対し、エアバス機は必ずしもそうではないのそうです。

 エアバス機は「ある一定の調整を飛行機があらかじめやってくれる感じで、飛行機もパイロットと一緒に、コースや姿勢の修正を行ってくれる」というのが同氏の弁。そのため、仮にもし同じシチュエーションであれば、パイロットの操縦桿操作はエアバス機の方が少ない傾向にあるとのことです。

 そしてA350-900は、これまでのボーイング機にはなかった機能が備わっているといいます。

A350の先進的な機能とは?

 たとえば従来機と比べて大きくなったエアバスA350-900のコクピットモニターは、テーブルに備え付けられたPCで用いるようなキーボード、トラックボールを用いて操作が可能に。一部モニターでは、タッチパネル式で動かせるといいます。ウェザーレーダーは、通常の平面表示のものだけでなく、断面も表示される高機能なものが導入されているそうです。

 また、着陸後に一定の減速率でブレーキをかけ続けてくれる自動ブレーキ機能についても、エアバスA350-900では先進的なものを備えます。

「BTV(Brake to Vacate)」と呼ばれるこのシステムは、着陸後に滑走路から離脱する誘導路を選択すると、そのポイントで安全に離脱できる速度(約20km/h)になるように自動で減速してくれるというもの。パイロットの負担軽減はもちろんのこと、滑走路占有時間の減らす効果も期待できます。


フランス・トゥールーズにあるエアバスのデリバリーセンターで出発を待つ、JALのA350-900 恵 知仁撮影)。

 このほか、エアバス機にはパイロットの燃費計算などをサポートする機能や着陸進入時に画面表示の見え方を極力共通化する機能などを備えます。

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 JALでは、現在運用されているA350-900国内線仕様機に加え、2023年には胴体延長タイプのA350-1000が長距離国際線へ投入される予定です。操縦面での進化に加え、A350-900は従来機より静かで快適性の高い客室をもつことから、これまで「過ごしやすさについては、お客様にもご好評いただいている」と仲本機長。

「(A350の)過ごしやすさは、長距離になればなるほど強みがでるのかなと思います。そういう意味では、(国際線へのA350-1000導入は)ようやくA350の本気を出せるぞ!と感じているところです」と、JAL次世代フラッグシップ導入の先陣を切ってきた仲本機長は話します。

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