世界初の商用「砂電池」がフィンランドでエネルギー貯蔵を開始
クリーンなエネルギーとして太陽光発電や風力発電に注目が集まっていますが、これらの再生可能エネルギーはいつでも発電ができるわけではないので、化石燃料からの移行には安価かつ大容量な蓄電池が欠かせません。そのため、これまで鉄・コンクリート・溶融塩などにエネルギーを蓄えるアイデアが登場してきました。さらに、フィンランドの企業が世界で初めて砂に熱エネルギーを蓄える「砂電池」の商用運転を開始しました。
https://polarnightenergy.fi/news/2022/7/5/the-first-commercial-sand-based-thermal-energy-storage-in-the-world-is-in-operation-bbc-news-visited-polar-night-energy
World's first commercial sand battery begins energy storage in Finland
https://newatlas.com/energy/sand-battery-polar-night/
以下は、フィンランドのエネルギー企業・Polar Night Energyが、同国西部にあるエネルギー企業・Vatajankoskiと共同で設置した砂ベースの熱エネルギー貯蔵装置です。大きさは幅が4メートル、高さ7メートルで、右下に立っている男性との対比からかなり大きな設備であることが分かります。
断熱タンクの中には100トンの砂が詰められており、中心にある熱交換器で加熱することで8メガワット時(公称定格100キロワット)に相当する熱エネルギーを蓄えることが可能とのこと。貯蔵した熱エネルギーは必要に応じて取り出すことができるので、Vatajankoskiはこの熱と自社のデータサーバーの熱を周辺地域の暖房システムに供給し、建物の暖房や温水プールなどに役立てています。
Polar Night Energyの最高技術責任者であるMarkku Ylönen氏は、「電気を熱に変換するのはとても簡単ですが、熱から電気を作るにはタービンなどの複雑な機構が必要になります。一方、熱を熱として使うのはシンプルなままです」と話しました。同社によると、この砂電池の効率は最大で99%に達し、数カ月間熱を保存することも可能で、寿命は数十年とのことです。
砂は乾燥していて可燃性のゴミが混じっていないという条件さえクリアしていれば使用可能で、消耗品を使わない完全自動運転なのでコストも非常に少なく、設置費用は1キロワット当たり10ユーロ(約1300円)です。
スケールアップも容易で、地下貯蔵施設や廃坑の再利用も可能とのこと。また「中心部で長期的な蓄熱を行い、表面では短期的な繰り返し利用を行う」といった液体ベースのエネルギー貯蔵システムにはない使い方もできます。
Ylönen氏は砂を蓄熱に利用するシステムについて、「このイノベーションはスマートでグリーンなエネルギー転換の一環です。蓄熱は、断続的に発電する再生可能エネルギーを電力網に組み込むのに大きく貢献するとともに、廃熱を都市の暖房に利用できるレベルまで高めることにもつながります。これは、燃焼を伴わない熱生産に向かう上で理にかなったステップです」と話しました。