「行く意味ある?Fラン大学まとめ」記事に批判集まる 名誉毀損にならないのか?
新卒向け就活情報サイト「就活の教科書」が掲載した「底辺の仕事ランキング」と題した記事にネットで批判が集まった。運営会社は記事を削除したが、サイトには「行く意味ある?Fラン大学まとめ」と題した記事も掲載されている。
記事では「Fランク大学とは定員割れか偏差値35以下の大学のこと」と定義。「Fランク大学の定義や一覧、就活の実態をすべて解説」するとし、編集部が作成したという「世間一般的にみたFランク大学一覧表」や「偏差値35以下の真のFランク大学一覧表」、「女子大のFランク大学」などを公開している。
また、「Fランク大学の実態」として「授業は中学1年生からの復習」「喫煙者が多い」、「Fランク大学の女子あるある」として「高級ブランド好きの人が多い」「水商売をしがち」「年上の男の人と付き合いがち」などを挙げた。
就職活動に関しては、「Fラン大学に通っていても、諦めずに『学歴以上に自分は価値のある人間である』ということをアピールしましょう!」として、部活動やサークル活動、アルバイトに従事することを勧めている。
ネットでは、「名指しされた大学は訴えても良いんじゃないか?」「こんな差別的な記事はありえない」などとサイトに対してさらなる批判が集まっている。
「Fラン大学」と称することに法的問題はないのだろうか。清水陽平弁護士に聞いた。
●言われた側の社会的評価の低下が発生する余地がある
--弁護士ドットコムの法律相談には、「Fラン大学生だから頭悪いね」などと言われたという相談が寄せられています。個人に対して「Fラン大学」と言うと、どのような法的問題があるのでしょうか。
「Fラン大学」という言葉は、ネットスラング的に使われている言葉であり、一般的に言えば、明確な定義があるわけではありません。しかし、頭が悪い、知能が低いといったニュアンスを含めて使われています。
そのため、Fラン大学といった指摘を受ければ、頭が悪い、知能が低いといった指摘を受けているということができます。このような指摘を受ければ、たとえば仕事ができない人であるとか、手際が悪い人であるといった印象まで受けることになるため、言われた側の社会的評価の低下が発生する余地があります。
そのため、名誉毀損の問題が生じることになります。
--今回の記事では、大学(法人)も名指しされています。
「Fラン大学」という指摘は、大学を評価したもの、又は意見ないし論評として指摘されているものといえます。
意見・論評によっても民事上の名誉毀損は成立し得ますが、公共性、公益目的、意見・論評の前提とする重要事実の真実性がある場合には、「人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り」、違法性がないとされています。
記事では「Fラン大学」の定義を置いており、その定義に当てはまるかどうかという枠組みで名指しされている部分については、(偏差値の情報が概ね正しい限り)前提の重要事実に真実性があるといえることになり、違法性がないとされる可能性が高いといえます。
他方で、世間一般的にみたものというリストも挙げられていますが、実際にはそのように見られていないという実態があるとすれば、前提の重要事実に真実性がないといえることになります。もっとも、「人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したもの」といえるかという問題があり、違法とまでは評価されない可能性も高いように思います。
そのため、名誉毀損としていくことはできないことはないが、少々難しいケースも多いのではないかと想定されます。
●名誉感情侵害が成立するか
--名誉毀損以外の法的問題はありますか?
また、「Fラン大学」という言葉は侮辱的ニュアンスを持っていることから、民事上、名誉感情侵害を主張する余地があります。もっとも、法人には感情がないので、名誉感情侵害を主張し得るのは、「Fラン大学」などと言われた個人に限られます。
名誉感情侵害が成立するかどうかは、社会通念上許される限度を超える侮辱行為であると認められるかどうかが問題とされます。言葉自体の侮辱性が強い場合には、社会通念上許される限度を超えた侮辱行為に当たると判断される傾向にあります。
また、根拠が示されず単なる意見・感想の範囲と言える場合は、言葉だけでは社会通念上許される限度を超えていないと判断される傾向がありますが、回数や指摘されている経緯などに照らして、社会通念上許される限度を超えていると判断される場合があります。
「Fラン大学」については、どちらかといえば根拠が示されず単なる意見・感想として言われているものという分類になるでしょうから、回数や経緯に照らして社会通念上許される限度を超えるかどうかを検討することになります。
以上のように、単に一言「Fラン大学」であるといった指摘をしたとしても、それだけで法的問題が生じる可能性は低いですが、繰り返していたり、言葉を発した経緯によっては法的問題が生じることになります。
そもそも、他人を下げるための言葉となっている以上、安易な使用は避けるべきと考えます。
【取材協力弁護士】
清水 陽平(しみず・ようへい)弁護士
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、総務省が主催する「発信者情報開示の在り方に関する研究会」の構成員となった。主要著書として、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第3版(弘文堂)」などがある。
事務所名:法律事務所アルシエン
事務所URL:http://www.alcien.jp