宮城県内の三陸道などで、最高速度標識とともに「最低速度標識」が設置されています。しかし東北道などにはありません。そもそも珍しい標識、どのような理由で設置しているのか聞きました。

2車線から4車線に広がったら「最低速度標識」が現れた

 最高速度の標識は一般的ですが、実は「最低速度標識」もあります。その珍しい標識に、宮城県内で遭遇しました。


左が最低速度標識。三陸道の4車線区間で見られる(乗りものニュース編集部撮影)。

 三陸道を八戸から南へ走り、宮城県内の桃生豊里IC(石巻市)を過ぎると、暫定2車線の道路が4車線に広がります。最高速度も80km/hから100km/hに引き上がり、無料区間ながら、東北道などとほぼ同等のスペックに。この区間ではデジタル式の可変速度標識が上下に配置され、上の標識は「100」、下の標識は大型車の最高速度である「80」の数字を表示しています。

 ただ、ICの合流部だけは、この2つの可変速度標識に並んで、「下線つきの50」が書かれた通常の板の速度標識も設置されているのです。これが最低速度標識で、「50km/hを下回る速度で走ってはいけない」ことを表しています。

 この標識、同じ宮城県内でも東北道などには設置されていません。なぜなのか、宮城県警の高速道路交通警察隊に聞きました。

――三陸道の4車線区間に最低速度標識があって、東北道にないのはなぜでしょうか?

 東北道が「高速自動車国道」なのに対し、三陸道は「自動車専用道」であることに起因しています。というのも、高速自動車国道(本線車道で対面通行ではない区間)は、法令で50km/hの最低速度が決まっているのですが、自動車専用道には法令上の最低速度の定めがありません。三陸道の4車線区間には、あえて最低速度を指定しており、それを標識で周知しています。

扱いが複雑な「高速道路」ゆえの最低速度標識?

――最低速度の指定ならびに標識の設置区間は、どこからどこまででしょうか?

 仙台東部道路(亘理〜仙台港北)と、三陸道の4車線区間(仙台港北〜桃生豊里)です。これら区間は、福島方面から続く100km/h規制の高速自動車国道である常磐道と一体化しているものの、法令上は自動車専用道であり、(亘理を境に)扱いが変わります。

 加えて、三陸道の無料区間(鳴瀬奥松島以北)はICに料金所がありません。慣れないドライバーが一般道から入りやすく、20〜30km/hの低速で本線を走れば、追突の危険性が高まります。このため、50km/hの最低速度規制を敷き、標識も設置してわかりやすく周知することで、事故を防止する目的があります。


三陸道の鳴瀬奥松島本線料金所。ここで有料・無料区間が分かれる(ドラレコ画像)。

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 高速自動車国道ならば法令で最低速度が定められているので、「ドライバーも頭に入っている」(宮城県警)のに対し、ほぼ同じ「高速道路」にも関わらず、建設の経緯から法令上の扱いが異なる、しかも有料・無料も分かれる――こうした複雑な事情から、あえて最低速度標識が設置されているようです。なお、同じ自動車専用道でも2車線で最高速度80km/hの仙台南部道路などには、最低速度標識はないそうです。

 ただ当然ながら、渋滞時や危険を回避する場合など、状況によっては最低速度を下まわるスピードまで低下するケースもあるとのことで、実際には、三陸道や仙台東部道路の最低速度指定区間で、それを取り締まった事例はまだないそうです。

 ちなみに、三陸道・仙台東部道路以外では、神戸淡路鳴門道や、伊勢湾岸道の一部などで最低速度標識が見られます。