東京〜博多をあえて「新幹線」ってアリ? 5時間があっという間になる過ごし方
東京〜博多間は新幹線「のぞみ」で約5時間。こうなると飛行機が一般的になりますが、新幹線派も根強く存在します。ならではの楽しみのひとつは「車窓」です。車窓ウォッチに“テーマ”を立てると、時間の感覚も変わるかもしれません。
のっけから“江戸城”が見える「歴史の車窓」
東京から九州へ行くなら、飛行機を使うのが一般的です。しかし、筆者は2022年春、小学生の息子と二人で東京〜九州間を新幹線で往復しました。理由は、その時期に飛行機の方がチケットが高かったのと、「新幹線の方が面白そうだったから」。
東海道・山陽新幹線で東京〜博多間は5時間近くかかる(画像:写真AC)。
JR線は、片道601km以上の往復乗車券は片道あたり1割引になるほか、小学生の運賃は大人の半額です。親子二人分の片道費用を比べると、その時は空路の最安値で4万4260円、新幹線は3万8390円で、差額5870円。往復だと約1万2000円の差がありました。タイムコストを考えたら飛行機に軍配が上がるのですが、なかなかない機会と捉え、新幹線の往復チケットを購入しました。
こうして品川11時17分発の「のぞみ27号]へ乗車。新幹線フリーWi-Fiを利用し、富士山のベストビューポイントを抑えるべく、Googleマップ片手にリサーチを始めたところ、程なくして、車窓から史跡が案外見えることに気が付きました。新幹線の車窓から見える景色は、歴史スポットのオンパレードだったのです。
何がどんな風に見えて楽しめるのか?!
今回は品川駅から乗りましたが、東京駅から乗車すれば、博多方面右側(E席側)に「江戸城」、つまりは皇居が拝めます。お堀や石垣はもちろん、じっくり目を凝らせば、「櫓」や「二重橋」も見えるようです。
神奈川県に入り新横浜駅を過ぎると、進行方向に向かって左側(A席側)から見えるのは「小田原城」です。ただし、見えた途端にトンネルに入ってしまうので、見逃し率も高そう。“小田原城攻め”は容易ではありません。
程なくして新幹線は静岡県に入ります。眼前に広がる富士山を堪能し静岡駅を過ぎると、“出世城”こと東海の名城「掛川城」が登場。山の上にそびえ立っているので、車内からでも確認しやすい歴史名所です。続いて、徳川家康の居城でもあった「浜松城」の近くを通るものの、こちらは建物に遮られるため確認は難しいです。
名古屋城は見えるのか? その後に現れる目立つ城は
さらに、美しい浜名湖に癒されながら、豪華絢爛な名城「名古屋城」を迎え撃ちますが、ここも肉眼で捉えるには大変にハードルの高い史跡です。林立するビルの狭間から、見分けるコツを掴む必要がありそうです。
続いては「清洲城」です。織田信長亡き後に後継者を決める「清洲会議」が開かれた城でもあり、歴史好きには知られた史跡です。ありがたいことに、素人でも車窓から分かりやすく、しっかり見ることができる貴重なお城です。
そしていよいよ、ハイライトの一つ、「関ヶ原古戦場」です。天下分け目の合戦跡は、車窓からも目視できる大看板で出迎えてくれるので、見逃すことはないでしょう。さらに続いて「佐和山城」の大看板が現れますが、石田三成の居城も今は昔、廃城になり建物などはありません。山を越えていくと、国宝「彦根城」が建っているはずですが、これまた車窓からの目視は素人にはなかなか厳しい史跡です。
13時38分、新大阪駅に到着。新幹線の開業当時は大阪城天守も見ることができたようですが、開発が進んだ今では全く拝むことはできません。
静岡の茶どころをゆく東海道新幹線(恵 知仁撮影)。
山陽新幹線も城のオンパレード!
新大阪駅を出発し、山陽新幹線エリアに突入です。「明石城」に続いては、白鷺城こと「姫路城」が北に現れます。さすが世界遺産の巨城、新幹線からもチェックしやすいです。
さらには「岡山城」、広島に入ってからは「福山城」と見えてきます。福山城は全国でも屈指の“駅チカ城”であるため、車窓からもバッチリ確認できます。続いて、「三原城」「広島城」「岩国城」とありますが、これらは車窓から見つけるのは至難の史跡です。
16時近くなり、平家滅亡の「壇ノ浦の戦い」の舞台となった関門海峡はトンネルで通過すると、九州に入ります。「小倉城」が現れるはずですが、ビル群に阻まれており確認できません。
そうこうしているうちに、16時06分。あっという間に山陽新幹線の終点・博多駅へ到着しました。
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今回利用した東海道・山陽新幹線沿いには、20以上のお城のほか数々の史跡もあり、車窓から見られるものも少なくありません。お供に地図アプリは必須で、望遠機能があるカメラ、それに双眼鏡があるとより楽しめることでしょう。時間と気持ちに余裕があり、歴史が好きな方はもちろん、ちょっと違った趣向で今夏の旅行の計画を立てたい方には、意外とおすすめの旅ではないでしょうか。