旧「鹿児島空港」のいま 移転から半世紀 空港の痕跡は残っているのか? 現地へ行く
現在鹿児島空港は、中心部から少し離れた場所にありますが、かつては中心部にほど近い「鴨池」というところにありました。空港の運用終了から約半世紀、現在はどうなっているのでしょうか。
立地抜群も拡張困難だった「鴨池空港」
現在の鹿児島空港は、鹿児島県中心部から直線距離で約30km、バスなどの陸路でおよそ40分〜1時間弱程度を要する霧島市溝辺町に位置しています。この場所に空港が設置されたのは、いまからちょうど50年前の1972年。ただ、それ以前の鹿児島空港は別の場所にありました。その地は現在どうなっているのでしょうか。
かつての「鴨池空港」の航空写真(画像:国土地理院の航空写真を加工)。
旧鹿児島空港があったのは、鹿児島中央駅から南方向へ3.5kmの距離にある鴨池地区。大隅半島へ渡る鴨池垂水フェリーが発着する鴨池港の周辺で、湾内の沿岸に沿うように位置していました。そこは、現在の鹿児島空港と区別するためか、愛称として「鴨池空港」とよばれることもあります。
鴨池空港はアクセスが良かった反面、北側には国道・人家・河川などが密集し、南側には水深の深い海が広がる立地にありました。1960年代ごろから航空需要が大きく増え、飛行機の大型化やジェット化が進みます。これに対応すべく滑走路の延長が必要であったものの、鴨池空港はこの特殊な立地上、それが困難でした。そこで、霧島市に新空港を作る計画が決定されたということです(県の公式サイトより)。
現在の鹿児島空港が供用開始となった1973年、鹿児島県は鴨池空港の跡地周辺を「鴨池海浜ニュータウン計画」として再開発すると策定。その後1996年には、跡地周辺に鹿児島県庁、県警本部庁舎なども移設され、現在では官公庁・住宅街などが並ぶエリアとなっています。
さて、2022年現在のこの地には、空港の痕跡はあるのでしょうか。実際に鴨池空港跡地周辺へ行ってみました。
「鴨池空港」跡地へ行ってみた
旧鹿児島空港こと「鴨池空港」の南北に伸びていた滑走路跡地は、整然とビルが立ち並んでいます。県庁や県警本部がある大通りは、ちょうど滑走路跡地の端に沿うような形で作られている名残からか、1km以上にわたり、ひたすら直線が続いてます。
鴨池空港滑走路北端側はかつて小さな湾となっていましたが、運用終了後に埋め立てられ、野球場などができ、対岸と陸続きとなりました。現在、県庁から北に120m程度行ったところに「竣工昭和49年(1974年)」と書かれた、小さな橋がかかっていますが、ここがちょうど鴨池空港滑走路の北端です。
「深い海がある」とされた滑走路南端側は、現在も埋め立ては実施されておらず、陸地の状況は当時のまま。ただ、南端部は現在、緑の芝生が広がる球技場となっていました。
鴨池空港跡地にいる際のカーナビより。地図で見ると、空港跡地らしさがわかる(2022年6月、乗りものニュース編集部撮影)
一方、空港ターミナルビルや格納庫などの建物は、鴨池空港としての役目を終えたあとも、そのまま別の施設として再利用されたそう。ただ、これらはすでに取り壊されてしまったようです。
なお、空港ターミナルビルがあった場所には、スーパーを中心とする商業施設「ニシムタ スカイマーケット鴨池店」が建て直され、2015年にオープンしました。店内はほぼごく一般的なスーパーではあるものの、入り口部分などに鴨池空港の写真などが飾ってあるところが、「旧空港跡地を活かした施設」らしいポイントといえるでしょう。なお同店ではその特殊な立地からか、店舗内の撮影が厳格に禁止されているようで、撮影禁止の張り紙が至るところに貼られています。