コカ・コーラの運送会社がなぜ“野菜“を運ぶのか? 新しい農産流通のしくみ「やさいバス」全国に広がる
路線バスや配送サービスなど、一定ルートで地域を巡回する運送サービス。これを、野菜の流通に活用する「やさいバス」が全国に広がっています。北海道では意外なサービス事業者が野菜を運ぶようになりました。
全国各地に拡大中の“やさいバス”
コカ・コーラの飲料を運ぶ運送会社が野菜を運ぶ――そのような取り組みが北海道にて2022年5月から本格的に始まりました。名付けて「やさいバス」。新しい流通サービスとして、注目が集まっています。
写真はイメージ(画像:dototo)。
「やさいバス」は、静岡県を拠点とするやさいバス株式会社が全国で展開しており、北海道が11例目となります。その仕組み一言で言うと、農家で採れた野菜を買い手に直接届ける巡回バスのこと。時刻表に合わせて運行、途中のバス停で商品を集荷、買い手が待つ最寄りのバス停まで届ける新しい流通システムです。
ポケットマルシェなど農家から消費者が直接食材を購入できるプラットフォームがありますが、それにバスのシステムを掛け合わせたようなシステムです。ただし、こちらは注文主が消費者ではなく小売店や飲食店。店がインターネットを通じて注文すると、農家は注文数に応じた野菜をバス停まで運びます。
その野菜を運ぶのが、やさいバスと名付けられた車両です。バス停を巡り、採れたての野菜を集荷、注文者が指定した別のバス停まで運び、それを注文者が取りに行くという仕組みになっています。
車両の運行を担っているのは地域の運送会社のほか、広島県では広島電鉄をはじめ複数の路線バスでの「貨客混載」事業として、県内各地の野菜を広島市内へ運んでいます。
思いついたきっかけは…自動車工場?
やさいバス株式会社の加藤百合子社長によると、生鮮野菜はできるだけ早く需給と供給をマッチングさせ、物流に載せることが大切だそう。しかし、ドアツードアの宅配だと物流コストが高くつきます。そこで自動車部品のミルクラン方式(複数の調達先を巡回、部品や商品を集荷する方式)を参考にして、今回の“バス停システム”をつくったそうです。
物流コストの削減だけでなく、バス停を介した地域コミュニティの創出にも貢献できるのではないかといいます。ちなみに、バス停では顔見知りが多いからか、盗難などの大きなトラブルはまだ発生していないそうです。
広島電鉄の路面電車。広電はやさいバスへ社員を出向させるなど、連携を深めている(画像:robertchg/123RF)。
冒頭の北海道での取り組みは、北海道コカ・コーラボトリングとグループの運送会社が“やさいバス”に参入。自社飲料の配送などで得たノウハウの活用、さらに取引先である小売店や飲食店を通じた販路の拡大が狙いとか。バスの運行は週3回あり、専用のサイトから注文を受け付け、最短で翌日にはバス停に新鮮な野菜が到着します。
ちなみにバス停は、大丸札幌店や札幌市内の青果店、農園、指定郵便局など。大丸札幌店の地下1階の「大丸食品フロアほっぺタウン」では、特設コーナーも設けられ、届いた野菜を購入できるそうです。北海道コカ・コーラボトリングは、5年以内に取引高ベースで数億円規模を目指すとしており、今後、さらに“やさいバス”の運行エリアは広がっていきそうです。