東武鉄道がSL大樹の「三重連」を実施しました。SLの現役時代にも極めて珍しかった3重連。汽笛の鳴らし方も“ならでは”の流儀があります。

蒸気機関車3重連では3両とも合図

 昭和の時代にSLが現役だった当時でも、極めて珍しかった「3重連」が、令和の時代に実現しました。

 東武鉄道が2022年6月19日(日)、南栗橋車両管区(埼玉県久喜市)で「SL大樹3重連イベント」を実施しました。復元作業が完了したC11形123号機を先頭に、JR北海道より借入のC11形207号機、真岡鐵道より譲受したC11形325号機、3両の蒸気機関車を連結し、14系客車3両と12系2両からなる編成をけん引しました。

 SLが現役だった当時は、急勾配区間などでパワーを補うため、SL2両で列車を牽引する「重連」が行われましたが、同様の理由で「3重連」が行われる区間もありました。今回はC11形123号機の復元作業が完了し、日本国内において唯一、同一形式の車両を動態保存として3両保有することを記念して実施。列車は旅行商品の利用客を乗せて試運転線を往復しました。


復元作業が完了したC11形123号機を先頭にした3重連列車(2022年6月19日、伊藤真悟撮影)。

 さて今回の列車、出発する時にはC11形123号機が「ポー」と汽笛を吹鳴。後ろ2両のC11形も続けて「ポー」と汽笛を鳴らしました。

 しばらく走るとC11形123号機は長い汽笛1回と短い汽笛2回の「ポー、ポッポッ」という汽笛を鳴らし、それに呼応して後ろ2両のC11形も「ポー、ポッポッ」と汽笛を鳴らします。まるでSLどうしの汽笛による掛け合いのようですが、実はれっきとした意味があります。

 これは「絶気合図」と呼ばれるもので、力行から惰行(惰性で走行)に変わったことを後ろの機関車の運転士に知らせるためのもの。後ろの運転士は「絶気合図」を聞いたことで自分が運転する機関車も惰行にして同様に「絶気合図」の汽笛を鳴らすのです。

「絶気合図」は蒸気機関車の重連や3重連だけでなく、蒸気機関車+電気機関車あるいは蒸気機関車+ディーゼル機関車の重連といった、後ろの機関車にも運転士が乗務している場合に行われ、単独でけん引する場合には行われません。

 ちなみに、JRの中央西線で見られるEF64形重連の貨物列車などは、「重連総括制御」という先頭の機関車の運転士が後ろの機関車も一括で制御できる機能を有しているため「絶気合図」は行いません。この場合、後ろの機関車は無人となっているのです。

※一部修正しました(6月19日19時00分)。

【迫力満点!】C11形の「絶気合図」3連チャン 動画で!(0分16秒頃〜)