高校生が居酒屋に通っているって!? - 赤木智弘
※この記事は2017年12月16日にBLOGOSで公開されたものです
渋谷の居酒屋が高校生たちで賑わっているという。(*1)
記事によると、多い日には客の8割が高校生ということもあるという。理由としては普通の飲食店よりも騒ぎやすいということがあるようだ。
この記事を見たときに、確かにその絵面は衝撃的ではあるものの、居酒屋で食べることを思いついた若者たちは頭がいいと思った。
元々、居酒屋のメニューは、酒飲みのお腹がいっぱいになって、酒が飲めなくならないように、酒のアテになるつまみを少量ずつ安く出してくれる。酒を呑むということを考えなければ、食べ物の種類は多く、また一皿ごとの価格が安いことから色々食べられることになる。
これがファミレスだと、どうしても食事のメニューか、からあげやポテトといったありきたりのサイドディッシュになってしまう。先に食事をして、後はドリンクバーで粘って安く済ませたいならそれでもいいが、ある程度食事を楽しみながら時間を使って楽しめるのは、ファミレスよりも居酒屋だろう。
焼き鳥などは高校生が好むものではないというイメージも強いが、これも僕は個人的な経験から否定したい。少なくとも僕は小学生の頃から、スーパーの前で営業している焼き鳥屋で、親に買ってもらって食べていた思い出がある。
また、記事中にあるように、店にとっても、高校生たちは本格的にサラリーマンなどが入ってくる前の比較的空いている時間に入ってくれることから、その後のピーク時間との住み分けもうまく行っているようだ。
確かに「居酒屋」という文字面だけをみると「高校生が居酒屋に入り浸るなんてとんでもない」という批判をしたくなるのは理解できる。しかし、少なくとも僕は居酒屋に高校生が行くことを否定しようと思わない。なぜなら僕もサイゼリヤなどのファミレスを居酒屋代わりに使うことがあるからだ。
赤ワインを500ml頼み、あとは辛味チキンやピザ、ミラノ風ドリアなどをつまみにして飲む。十分堪能して値段は1500円くらいとお安く豪遊できる。
最近はファミレスを居酒屋使いする人は珍しくもなんともない。Web上にはファミレスで酒を飲む記事もたくさん書かれており「ファミレスで酒を飲むなんて」という否定的な意見も見当たらない。少なくともファミレスを居酒屋使いしていることを許容する人たちが、居酒屋をファミレス使いしている高校生を批判できる道理はない。
そもそもファミレスにだってお酒は置いてある。中にはお酒の飲み放題を用意しているような、明らかに居酒屋使いを念頭に置いたファミレスもある。
ファミレスと居酒屋の違いは、前者が食事のメニューを最前に押し出し、後者がお酒とつまみを最前に押し出すという程度のものでしかない。そして本来、少人数での長時間の「ダベり」や「騒ぎ」に向いているのはファミレスではなくて居酒屋だ。
特に記事の中にも出てくる「食べ放題」には大抵2時間程度の時間制限があり、店にとっても計算できる時間での回転が保証され、また客にとっても程よい時間で話を一旦打ち切ることができるようになっている。もし話し足りなければ別の店をはしごすればいいし、それで十分なら解散するだけのことだ。
かつては大学の新歓コンパで盛り上がった居酒屋も、若者の数が減り、また若者の酒離れというか金の若者離れの影響で稼ぎづらくはなっている。しかしその一方で、冷凍技術の発達などにより、居酒屋の食事はかつてよりも美味しく提供できるようになった。
今後間違いなく過当競争での潰し合いとなる居酒屋業界の中で今後生き残るためには、酒の売上に頼るのではなく、フードメニューの充実でもって客に選んでもらう必要がある。居酒屋に高校生が来るようになったのは、そうした居酒屋の変化から生まれた必然なのだろう。
世間の目に怯えて「高校生は出入り禁止にしよう」などと考える居酒屋もあるのだろうが、目の前のお客様が求めているなら、それを提供するのも居酒屋という飲食業界の1つの姿であろう。
僕は、高校生が居酒屋にやってくることを否定しない。
*1:制服姿のJKで賑わう渋谷の居酒屋、動き出しが早い高校生はお店のメリットにも(AbemaTIMES)https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171215-00010021-abema-bus_all