地域のお年寄りを見守る移動販売車 モデル転換で低コスト運用も - BLOGOS編集部PR企画

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※この記事は2017年11月16日にBLOGOSで公開されたものです

過疎地域に車両を乗り入れ、移動の難しい高齢者に食品や生活必需品を販売する移動販売車。

必要性は理解されつつも、規制に合わせた車両の整備や、仕入れコストの高さから採算が取りにくいことがネックとなり、中々導入が進んでいないのが現状だ。この状況を打破すべく、高齢化がすすむ鳥取県智頭町では現在、日本財団と共同でコストを抑えた運用を目指してモデル事業を展開している。

買い切り型から委託販売型に切り替えることで仕入れコストを削減

従来型の移動販売車の運用を難しくしていたのが、商品の仕入れコストだ。

移動販売車は需要予測が難しく、多様なニーズに対応するために事業者が多種類の商品を仕入れても売り切ることができない場合もある。そのため生鮮品などの足の速い商品を取りそろえようとすると、ロスが生じてしまうというわけだ。

この問題を解消するため、鳥取県智頭町では地元のスーパーと事業者が提携。ロスをそのまま移動販売事業者が被ることになる買い切り型の仕入れから委託販売型の仕入れに切り替え、売り切れなかった商品は夕方以降にスーパーの店頭に並べるなど、商品のロスを出さないための工夫がされている。

移動販売を行うスタッフは現在のところ2人。智頭町の移動販売事業は障害者の就労支援も兼ねており、1名は事業を円滑に進めるための指導員、もう1名は軽度の障害を持つ販売員の若者となっている。移動販売では利用者とのコミュニケーションが重要となるため、障害者の就労訓練にもなるそうだ。

3月に移動販売を始めた当初は1日13,000円ほどだった売上も、9月には約33,000円にアップ。売上をスーパーと移動販売事業者でシェアすることで、大幅な利益は出ないものの、持続可能なモデルを構築していきたいとしている。

病気の早期発見など、見守り効果も

山間の町らしく、智頭町には軽自動車1台がなんとか通れるほどの細い道も多い。この移動販売車は利用者の庭先まで入っていくため、車両も小型だ。通常、車両の調達には100~200万円ほどかかるというが、智頭町の移動販売車は日本財団が用意した。

移動販売車は販売場所に到着すると、手早く開店準備にとりかかる。出てきたお年寄りには販売員が「こちらは魚と昆布の佃煮です」「納豆はどうですか」と声をかけながら商品を勧めていく。実際に移動販売を利用する女性は、「自分が食べる分は自分で買いたい。近くまで来てくれるので便利になった」と話す。また別の利用者は「若い人が笑顔で話しかけてくれるのが嬉しい」と、利便性だけではない価値を語ってくれた。

指導員の安住さんは「最初は警戒もされたが、買ってくれなくても挨拶をするなど、声かけを行って認知してもらった」と販売当初のことを振り返る。今ではすっかり町にも馴染み、雨の中、傘を差して待っていてくれるお年寄りもいるそうだ。現在は1日あたり30~40箇所を回り、1つの場所には週に2度訪れている。

安住さんは以前、介護施設で働いていたこともあり、お年寄りの様子を見ることにも長けている。あるとき、顔色が悪いと利用者に病院へ行くことを勧めたら、軽い脳梗塞だったこともあるという。商品を届けるだけでなく、地域のお年寄りを見守ることも、現在では大切な仕事になっているようだ。

今後も「笑顔を大事に頑張っていく」という2人。鳥取県によると、地域を見守る移動販売車は、県内の別の町でも展開できないか検討中だという。

鳥取県×日本財団共同プロジェクト「みんなでつくる“暮らし日本一”の鳥取県」

深刻な少子高齢化が進むなか、日本財団は高齢者や障害者の方の生活を民間レベルで支えていく「地方創生のモデル」づくりに取り組んでいます。

2015年11月、日本財団と鳥取県は、地域住民が元気に暮らし、誇りを持てる社会づくりのための共同プロジェクトを実施することで合意。5年にわたり30億円規模の共同プロジェクトを実施する予定です

公式WEBサイト:鳥取県×日本財団共同プロジェクト「みんなでつくる“暮らし日本一”の鳥取県」

11月17日より行われる「にっぽんの将来をつくる 日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム」では「鳥取:人口最小県からの挑戦」というテーマのプログラムを開催。チケットなどの詳細はこちらから。