「情熱大陸」名ナレーター・窪田等氏を悩ませた最強難語″きゃりーぱみゅぱみゅ″ - 松田健次

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※この記事は2017年10月24日にBLOGOSで公開されたものです


現在のテレビ界で指折りの声の持ち主――、「情熱大陸」ナレーターの窪田等。その声を表する言葉は(「美声」だと今ひとつ足りていない気がする)・・・、優美なもの希少なものを見て、目の保養になった時に使う「眼福(がんぷく)」。その派生による造語だが「耳福(じふく)」が思い浮かぶ。

「耳福」なあの声を耳にする機会はとても多いが、肉声を聴く機会は珍しい。10月19日放送「くにまるジャパン極」(文化放送)に窪田等がゲスト出演し、パーソナリティーの野村邦丸を聞き手に、自身の来歴や、代名詞である「情熱大陸」の裏話などを、あの声でたっぷりと語った。

その中で、たまらず笑ってしまったのが、窪田を悩ませたフレーズに関するくだりだった。

立ちはだかった最強難語「きゃりーぱみゅぱみゅ」

<2017年10月19日 「くにまるジャパン極」(文化放送)より>

野村「窪田さん今まで40ウン年間ずっとナレーター生活を送られてきて、窪田さん今回の原稿はこれですって頂いて、そのとき、あ、これいいなって思う原稿もあれば、来ちゃったよ・・・ってのも?」

窪田「あります、それは、苦手な部分とかね」

野村「窪田等さんが苦手、ってなんですか?」

窪田「僕なんかあんまり滑舌が良くないほうだと自分では思ってますんでね、苦手なところがあると、ウワーッ、ついに来たか、っていうのがありますよ」

野村「ええ~!?」

窪田「とくにここ数年では、きゃりーぱみゅぱみゅ」

野村 (爆笑)

「情熱大陸」では2013年2月17日放送回で、きゃりーぱみゅぱみゅが出演している。ある意味、最強ナレーターに立ちはだかった最強難語の「きゃりーぱみゅぱみゅ」。。窪田はこのフレーズをいかに乗り越えたか、その攻略法も明かした。

<同上より>

窪田「ハッキリ言わなきゃならないからね、ごまかすわけにいかないんでね。早口で言うワケじゃないからわりと。『ぱみゅぱみゅさんが』(早い調子)、『ぱみゅ、ぱみゅ、さんが』(通常の調子)。

調子をつけて読めないからなんかね、やりにくいなと思って。そんときは、ほぼほぼうまく行きましたけどね。で、わかったのが『みゅ、みゅ』、母音を大事にするっていうのが、『きゃりーぱみゅぱみゅ、みゅう、みゅう・・・』、『みゅ』のほうを意識して。『ぱむぱむ』になっちゃうから。『ぱみゅぱみゅ(う)』、母音を意外に大事にする」

野村「今、先生ですね」

窪田「なーんてね。そんときに思ったのが、あ、そう言えば意外と言えるのかって」

野村「言いやすいように、ドラえもんでやるといいって言うけどね。情熱大陸でそれやるわけにいかないもんね」

窪田「結局母音伸ばすから、『(ドラえもんの調子で)ぱみゅぱみゅう~』って伸ばすから」

野村「あははははは」

きゃりーぱみゅぱみゅという言葉をいかに発声するか、この場面に「なるほど」と耳を傾けつつ、『みゅうみゅう』と真剣に発声する窪田におかしみが張り付いてくる。そして、ドラえもん式発声法を振られ、さらっとあの声でドラえもんボイスを披露する声マニア耳福なレアシーンも飛び出した。

窪田氏を待っていた「さらに理不尽」なフレーズ

きゃりーぱみゅぱみゅの「情熱大陸」、窪田流の攻略法があったとはいえ、その壁は「にんじゃりばんばんば~ん」と勢いで越えられるようなものではなかっただろう。ただ噛まずに言えればいいわけではない。あの味わいあるナレーションのクオリティーを保たなければならないのだから。

当時の放送を振り返ると、窪田に最も高い壁として立ちはだかったと思われるフレーズがあった。

<2013年2月17日 「情熱大陸 ~きゃりーぱみゅぱみゅ~」(毎日放送)より>

NA(窪田)「今持つ正式名は、きゃろらいんちゃろんぷろっぷきゃりーぱみゅぱみゅ。名前もかわいい響きにこだわった」

おそらくは自我を滅してプロの仕事に徹し、集中力を注いだであろうフレーズ「きゃろらいんちゃろんぷろっぷきゃりーぱみゅぱみゅ」。この理不尽なコトバのナレーション録りは一発でOKだったのか、それとも幾度か録り直したのか。

もしも、そこに挑む表情をカメラで追った窪田等の「情熱大陸」があれば、番組史に刻まれる眼福となったに違いない。

ちなみに窪田は「くにまるジャパン極」で、絶対にいやな、絶対にやりたくない「情熱大陸」として自分自身の「情熱大陸」を挙げていた。ちなみに「情熱大陸」は来年(2018年)春で20周年だという。