「『何で、こんなクダらねぇことばっかりやらなきゃいけないんだ』ってことを考えるのがお笑いだと思うよ」北野武監督インタビュー - BLOGOS編集部
※この記事は2017年10月06日にBLOGOSで公開されたものです
北野武監督の最新作『アウトレイジ 最終章』が10月7日に公開される。シリーズを通して「ヤクザの掟」にこだわり続けた主人公の大友(ビートたけし)と「ヤクザの掟」を描き続けた北野監督…2人とっての「仁義」とは?【構成:ベン村さ来 撮影:弘田充】
-- まずは最新作完成おめでとうございます。パート1『アウトレイジ』とパート2『アウトレイジ ビヨンド』が完全なバイオレンス作品だったので「もし、パート3を作るならこうなるんじゃないか?」という我々ファンの予想をいい意味で裏切ってくれた素晴らしい『最終章』でした。
北野武監督(以下、北野):これ、パート4、5と作ろうと思ったらイケたんだよ。このあと大友が花菱会を潰して、韓国遠征して韓国のマフィア潰して、香港のマフィアとやって、香港のマフィア潰すとイギリスが出てきてね(笑)、イギリスが出てきたらヨーロッパ行って、最後はゴッドファーザーとやり合って…って考えたんだけど、こんなこと深作欣二監督だってやらねぇなって(笑)!俺の寿命も終わっちゃうからさ、ここらへんで『最終章』にしようと思って終わらせちゃった。
このシリーズは前作のストーリーは踏んでるけど、それぞれ一話完結もしてる。だから1作ずつ観てもいいし、3部作として観てもいい。俺はこれは五・七・五だと思ってんだよ。俳句だよな。
-- また、最後に相応しく、皆さん怖かったです。たけしさん(大友)もオープニングから不機嫌が伝ってきて怖かったです。
北野:そう?『ビヨンド』で刑事を撃ち殺して韓国に逃げてるからね…ご機嫌じゃないね(笑)。塩見三省さんなんか凄かっただろ?病み上がりだったから同じ事務所の岸辺一徳さんに「塩見さん、大丈夫?」って聞いたら「どうしても出るって言ってますんで」って言うからさ…「じゃあ、西田敏行さんとキャスティングするから頑張るように言っといてよ」って。
そしたらさ、今度は西田さんが体調崩してるでしょ。次の衣裳合わせで2人を見て…思わず「オイッ、『龍三と七人の子分たち』じゃねぇぞ!」って言ったんだけど(笑)…でも、やっぱり芝居が始まったら強烈だったね。あと、西田さんは勢いでアドリブばっかりしようするんだよ。だから、全部カットしてやった(笑)!
-- 西田さんがトーク番組に出演されて寂しそうな顔してましたよ。「俺のアドリブ、監督が全部切るんだもんなぁ」と…。
北野:だってよぉ、セリフで「今の会長はジェニ(銭)ジェニジェニジェニぬかしやがって」ってあったんだけど、そのあとに「リトル・リチャードか(ヒット曲『Jenny,Jenny』)!」って、誰が知ってんだよ(笑)!知ってんの70歳以上しかいねえって!
「芸人としての生き方なんて勉強するもんじゃないんだよ」
-- 今回は北野映画の看板役者、大杉漣さんが「待ってました」の登場となりました。過去の作品ではベビーフェイスが多かった大杉さんが今回は誰からも嫌われる役でしたが。
北野:「待ってました」だっただろ?だから、大杉さんに「カラ威張りしてくれよ」って頼んだの。で、みんなに「頭使え、バカヤロー!」とか言って嫌われる感じでやってくれって。「そんな(イヤミな)感じでいいんですか?」って言って心配してた(笑)。
-- 今回の大杉さん(野村=花菱会会長)は修行をしてないヤクザ。「ヤクザの掟」にこだわる大友の一番嫌いなタイプだと思います。たけしさんご自身も芸人として徒弟制度の中で修行時代を過ごされました。北野監督は「仁義」というものをどうお考えですか?
北野:うーん…今はね、お笑いも学校で勉強して覚えるようになってるけど、そこで勉強して漫才コンビを組んでも、ほとんど役に立たないんだよ。やっぱり、寄席や演芸場で修行した方がいい。俺もあんまり師匠を持ちたくなかったんだけど…一応は深見千三郎って人の弟子だから、寄席や演芸場に行けば師匠や先輩後輩がいる。嫌いな先輩もいたけど、そういうのも含めて芸人は鍛えられた方がいいと思うね。特に芸人としての生き方なんて勉強するもんじゃないんだよ。生き方なんて自然に染みつくもんで。だから、学校に行くということは、わざわざ染みつかないようにしてるようなもんだよ。
だいたい、お笑いで習うことなんて不条理だからね。若い頃は無茶ばっかり振られたよ(笑)。「何で、こんなクダらねぇことばっかりやらなきゃいけないんだ」って思ってたけど、「何で、こんなクダらねぇことばっかりやらなきゃいけないんだ」ってことを考えるのがお笑いだと思うんだよ。
-- 映画の中で、そんな「仁義」が通じ合う相手が白竜さん演ずる李ですね。立場は違えど、男の仁義に変わりはないシーンには感動しました。
北野:大友は張会長(金田時男さん)に恩義を感じてる。会長側近の李は男として大友を買ってる。ただ、李には李の立場があってだんだん板挟みになっていくんだけど、大友と李はお互いの気持ちをしっかり読み合ってるんだよな。あの2人のシーンは自分でもいいところだと思ってる。
映画作りの最初は4コマ漫画から
-- そんなシーンもありながら、北野監督のお好きな緊張感の中の笑いも散りばめられていましたね。大友と市川(大森南明さん)の異常なまでのタチウオへのこだわりだったり、塩見さん(中田)の大上段に振りかぶった「あー?」だったり、ピエール瀧さん(花田)の性的趣味だったり。
北野:ピエール瀧は本当はベットの上で裸にして〇〇で〇〇の〇〇〇に〇〇〇〇させる予定だったんだよ。もう、自分でも笑っちゃってさ。これは気持ち悪すぎるぞってやめたの(笑)。〇〇に〇を突っ込んだりさ…あれ、こういうのはネットでもダメなの?
-- すみません。全部、伏せ字です(笑)。しかし、この緊張と緩和を脚本にしていく作業は大変です。どのようにして書かれているんですか?
北野:俺は4コマ漫画だよ。起承転結。いくつも4コマ漫画を作って、それの枝葉を広げて映像で繋げていく。だから、最初は4コマ漫画から始まってるんだよ。繋げる作業が楽しいときもあれば、辛いときもある。ただ、起承転結で漫画的にはできあがってるから、それに沿わせていく作り方だな。
でもなぁ、恋愛映画なんかは恥ずかしくてな…。男と女の恋愛を自分で撮るのは。
-- 失礼ですが、北野監督でもそんな風に思われることがあるんですか?
北野:あるよ!笑っちゃうんだよ。衣裳からカバンから、どこのブランドだの指定しなくちゃいけないんだろ?時計のブランドとかで「オシャレな女はそんな高いのしてない」とか言われたくないよ。面倒くさくてさ…。あっ、他の監督に撮らせてみようかな?それで「ヘタクソ!」とか言ってみようかな(笑)。
北野武監督最新作 映画『アウトレイジ 最終章』は10月7日より全国ロードショー。