「信念の赴くままに創作活動を続けていきたい」ろくでなし子氏が海外メディアに向けスピーチ - BLOGOS編集部
※この記事は2014年07月25日にBLOGOSで公開されたものです
自身の性器の3Dデータを送信したとしてわいせつ電磁的記録頒布容疑で逮捕され、18日に釈放された、芸術家のろくでなし子こと五十嵐恵氏が、日本外国特派員協会で会見を行った。冒頭発言は以下の通り。※会見中、通常では不適切とされる単語が使用されましたが、会見者の主張の意図を考慮し、そのまま表記させていただきました。
冒頭発言
皆様、こんにちは。本日、ここにこうして海外の文化を背景に持つ皆様の前で、お話しできることを大変光栄に思います。拘留中の6日は、大変に辛く、女子留置所の厳しい現状を目の当たりにいたしましたが、弁護士の先生方、全国、そして世界中の支援者の皆様のおかげで、裁判所の判断により無事、こうして釈放され、今は大きな喜びと感謝の気持ちを感じています。
今回の逮捕は大変急なものでした。休日の朝9時に約10名ほどの捜査員が自宅に入り、作品の説明を求めた後に、乱暴に作品類を押収し、手錠をかけられました。国家権力が、私のようなフリーランスで、週3日のアルバイトで頑張っている生きている人間をあっさりと逮捕した現実は今でも非常に憤りを感じています。
今回の罪状は、「わいせつ電磁的記録媒体頒布罪」ということですが、私はそもそも検察・警察がクラウドファンディングというシステムを明確に把握していたのかが、疑問でなりません。私は自身の女性器のCADデータをクラウドファンディングで募金・支援をしてくださった方々に対して、お礼の形として送付いたしました。CADデータは、特殊なソフトを介さなければ視覚化することができず、それ自体は数字の羅列のようなものです。頒布した理由は、データを元に一人ひとり「まんこを使った面白い作品を作ってみてほしい」という考えからでした。
そもそも私は、自身の肉体から離れた造形物を私の体の一部とはみなしておらず、「デコまん」などの石膏・シリコン作品もまんボートも私の肉体を元にした造形ではあっても、肉体性を有するものとは考えておりません。
「ここを触ると気持ちがいいんだろう」と、石膏作品を触って見せる男性もよくいましたが、石膏を触って気持ちがよくなれば、そんなに楽なことはありません。そういった浅はか男性の存在もまた私のまんこアートの原動力となっていきました。
日本のメディアでは、「まんこ」と発言したり、表記することが不可能な状況です。テレビではノイズにより、「まんこ」という言葉を吹き消され、「まんこ」と発言した女性有名人たちが番組を降ろされるという事件も実際に起こっています。
ちなみに「ちんこ」という発話は特に問題とならないのも大きな疑問です。紙媒体でも「まんこ」は伏字を使って表記されることがほとんどです。そういった女性器=わいせつ、隠して当たり前という常識とその弊害について、改めて疑問を呈するために、私は活動を続けてまいりました。
女性器は女にとっては、生理、セックス、妊娠、出産と自分の肉体の一部としてあまりにも身近なものです。それが「わいせつ」という言葉によって、女性の持ち物であるにもかかわらず、女性器がどこか遠い存在になっている。これはおかしいのではないか。そういった思いが私の根底にはあります。
「女性器はありのままでいいのではないか」という考えが、私に「デコまん」やその他の作品類を作らせているのです。
おかげさまで、女性の間でデコまんは大人気で、「作りたい」という女性からの声も多いです。女性が自分の性器と向き合う機会が非常に少なく、体の一部なのに歪んだイメージを持っていることも多いです。私もそうでしたが、デコまんは自分のありのままを愛するきっかけにもなっています。
海外の皆様、日本では昔からの性器を奉る信仰がある一方で、こうした日本独特のわいせつ観が存在します。今回の私の逮捕は、こうした日本の性的なイメージに関する歪みが、私個人の逮捕という形で現れたものではないかと考えます。私は釈放はされましたが、まだ取り調べ中の身ですし、再逮捕という可能性もぬぐいきれません。
どうか女性器のイメージについて問い直したい。忌避でも礼賛でもなく、女性のイメージをもっと中庸なものにしたい、という私の活動の意図を一人でも多くの方に知っていただきたいと思います。
また、逮捕後に私の釈放を求めるデジタル署名活動が起こり、1週間もしないうちに約2万人の方々の賛同を得たと伺いました。心より感謝申し上げます。これは、今回の逮捕は多くの一般市民の皆様方もおかしいと感じてくださっているのだと思い、改めて本事件の正当性を問うていきたいと思います。
今後も逮捕、拘留の経験にめげず、信念の赴くままに創作活動を続けていきたいと考えております。ご支援のほどどうぞよろしくお願いいたします。
質疑応答
―今回の問題は、一つは男性と女性について、明らかに性器の表現についてダブルスタンダードがある。また、今回の事件は、国際的に注目を集めていて、日本が世界からどう見られているかということにも影響を与えている。ご存じのとおり、日本では性表現産業、ポルノグラフィーの産業というのは非常に大きなものになっており、女性の体の商品化というのは存在する。私もすごく日本が矛盾しているなと思いまして、例えば、電車の中刷り広告とかでは、子どもやいろんな人が見る場で、すごくわいせつな文章で煽ったりしている広告が堂々と出ていたりして。それこそ、そういうものを見たくもないのに見させられる方が、不愉快というか。
一方で、こういう活動で、「まんこ」というものそのものに悪いイメージを与えて、それがいけないものみたいにして…。その見方がとても男性目線的で、女性の主体性がまったくないんです。それがおかしいと思って、ずっと活動してきております。
―なぜ今この時期に摘発されたのでしょうか?事前に警告のようなものがあったのか。
まず、警告もなされず、突然逮捕されました。去年から大手出版社の週刊誌では、しょっちゅう「女性器特集」という変な特集が組まれていまして、その中でも私の作品を取り上げてくれた雑誌もあったんですけれども、私の作品以上に、週刊誌の方でいろんなまんこをテーマにしたものをずっとやっていて。その中で3Dスキャンをしたという特集もあったんですけれども、何故か私が逮捕されてしまいました。
-日本のゲイムーブメントに携わった東郷健という人物がいるが、彼は何回もわいせつ関連の法規で逮捕され、それを最高裁まで争ったり、あるいは選挙に出て訴えたり、政見放送にでたりしていた。東郷さんのように選挙に出て訴えるとか、最高裁まで争うとか、そういったことは考えているのか。
※前提として、今回の場合、裁判になっていないので最高裁まで行けるかどうかわからない。不起訴になることもあると、山口弁護士の説明がはいる。
もし起訴されたら最高裁まで頑張る。信念を貫きたいと思います。
―選挙にでることは
もしそうなったら、まんこ党ですね(笑) (会場笑)
―うわさで聞いたのですが、あなたは自分の性器に整形手術を施したそうだが、なぜそのようなことをしたのか、差支えなければ教えてほしい。
先ほどの人の方の質問の中でもあったように、日本では性器にモザイクがかけられて、どういうものかがわかりづらい、わからないんです。私はだから、モザイクをかけられているので、他の人がどういう形かもわからなかったんですね。
ネットで検索すれば出てくるという知識がなかったので、自分の形が人よりも変なのではないかという悩みを抱えていたんですけれども…。それで整形出術をしたんですけれども、した後で、別に私の形は特に異常じゃなかったということに気づきました。
―留置所の生活について、印象に残ったことや言いたいことがあれば教えてほしい。
留置場というのは、とても人権を無視した酷いところで。まだ、犯罪者と確定されたわけではない人もいるのに、検察庁と裁判所に行くときは、護送車に乗っていくんですけれども、その待ち合わせ場所というのが、ものすごく狭い部屋に10人ぐらい押し込めて、すぐそこはお手洗いなんですけれど、そこで手錠をずっと掛けたまま、イスもすごく硬い木のイスなんですけれども、そこにずっと6時間以上座っていけないといけないんです。
ご飯を食べるときは、検察庁は片手にしてもらえるんですが、裁判所で待っているときは、手錠つなぎっぱなしでパンを食べないといけなかったり。その部屋っていうのは、クーラーがなくて扇風機しかないんですよ。トレーナーなどを着ていくと、とても暑いんですが脱ぐと怒られるんです。
その手錠もすごく限界ギリギリまでビッチリかけられて、「指が痺れていたい」とか言っても「我慢しろ」とか言われて、なかなか緩めてもらえない。
あと、お風呂にこの夏の季節に週2日しか入れないんですよ。
また、私は痔もちなんですけれども、「痔がちょっと痛いなので、ボラギノールとかください」といったんですけれども「そんなものはない」と言われ、「じゃあ痔の人はどうしたらいいんですか」というと「月2回の健康診断の日まで待て」と言われた。
いろんな病気を持っている方と同じ部屋になるんですが、例えば水虫を持っている人と同じ部屋になるとうつってしまうんじゃないかと思います。他にもいろいろあるんですけど、マンガにします(笑)。
―個展を開いたり、作品を出版しているにも関わらず、報道で“自称芸術家”とされたことについて、どう思うか?
実はずっと“自称芸術家”と書かれるんじゃないかと思っていました。(警察は)そのぐらい汚い人たち、汚いというか、それぐらい酷いことをもっとされてきたので、それぐらいはいうだろうなと思っていたので。若干、あきらめていたんですけれども。
ただ、出てきたときに周囲の人たちが、そうした報道に非常に怒っていて、逆に私がびっくりしてうれしかったです。