※この記事は2014年07月05日にBLOGOSで公開されたものです

 東京都議会での鈴木章浩都議らによるセクハラヤジ問題。
 前回もとりあげたけれども、やはりどこの議会でも同じということで、今度は衆院総務委員会で、男性議員が女性議員に対して「まず自分が子どもを産まないとダメだぞ」というヤジを発していたことが問題になっている。(*1)
 どうせ、自民党だろうと思っていたら、声の主はやはり自民党の大西英男衆院議員だったようだ。(*2)

 さて、朝日の記事によると、疑惑の自民党議員(朝日が取材をした議員が大西議員であるかは定かではない点に注意)が朝日新聞の取材に答えたところ、このように語ったという。

「「記憶は鮮明でなく、覚えていない」としたうえで、「少子化、晩婚化は深刻な問題だ。きれいごとではなく、政治家は行動で示すべきだ。独身の人には『結婚した方がいい』と言うことがあるかもしれない。女性蔑視やセクハラの意図はない」と語った。」(*1)

 すなわち、「政治家は行動で示すべき=子供を産むべき」という考え方なのだろう。ならば、この自民党議員はどのような行動を示して、少子化対策とするのだろうか。愛人とセックスしながら「ほーら、少子化対策だww」などといいながら……気持ち悪いシーンを想像してしまったので、話を戻す。

 そもそも、女性に対して「子供を産め!」という言い方がなぜ問題になるのかを、この議員は理解していないようだ。「子供を産む」という行為における負担は、男女の間でイコールではない。男は気持ちよくセックスしているだけで気楽なものだが、妊娠した女性は長期にわたって子供を身ごもることから、社会活動は大きく制限され、また出産時には子供のみならず、母体にも生命の危機が訪れる。子供を産むということは、女性の負担ばかりが大きい。

 そのような非対称的なリスクを理解していれば、出産の責任を女性にだけ押し付けたり、安易に「子供を産め」などと要求することなどできるはずもない。その不見識がまずは問題になるわけだ。

 だが、問題は決してそれだけではない。次にこの議員は議員の仕事というものを、全く理解していない。
 仮にヤジを受けた女性議員が自分自身で子供を産んだところで、せいぜい数人の子供しか産むことができない。一人の女性が結婚して子供を産んだところで、それ自体は少子化対策になりようがない。
 この点において、東京都議会で行われた鈴木章浩都議の「自分が結婚したほうがいいじゃないか」「みんなが結婚すればいいじゃないか」というヤジのどちらであろうとも、個々の結婚が少子化対策になると考えている時点で、少子化対策ということをマトモに考えていないことは明らかである。

 議員が少子化対策においてすべき仕事というのは、システムを整備して子供を産みやすく育てやすい社会を作り出すことだ。女性議員1人では数人の子供しか産めないが、議員がそうした仕事をしっかりと行えば、数十万人、数百万人の子供を増やすことができるかもしれない。そのためにこそ議会は動いているのであり、議員個人の責任で子供を産むことを要求することは、議員の仕事を軽視するにも程があると言える。
 議員の仕事を理解しない人間が平気で議員の椅子に座っている。ましてやそれが地方議員どころか国会議員なのだから情けないとしか言い様がない。

 自民党は一連のヤジ問題に対して、綱紀粛正の徹底を求める通達を出す(*3)そうだが、それ以前に議員に対して「本来、議員に求められている仕事」を教えるべきだろう。

 『よくわかる ぎいんのおしごと』とでも題した絵本を配って、議員のお母さんに枕元で優しく優しく読み聞かせをしてもらうところからやり直さなければ、自民党議員の幼稚な仕事観が矯正されることはないのではなかろうか。

*1:国会でも女性蔑視ヤジ「まず自分が産まないとダメだぞ」(朝日新聞デジタル) *2:国会「セクハラヤジ」の発言者、自民・大西英男衆院議員と判明(弁護士ドットコム) *3:自民 やじ問題で綱紀粛正の徹底求め通達へ(NHKニュース)