※この記事は2014年06月25日にBLOGOSで公開されたものです

24日政府による新たな成長戦略が発表された。その中では、労働の生産性を高めることを目的に、労働時間ではなく成果によって報酬が決まる新たな「労働時間制度」を創設を目指し、来年の通常国会をめどに必要な法整備を図るとされている。この“新たな労働時間制度”をめぐっては、国会内でどのような議論があったのだろうか。6月16日の決算行政監視委員会における民主党・山井和則氏の質疑の模様を書き起こしでお伝えする。この中では、新たな労働時間制度の対象者の要件が問題とされた。(※可読性を考慮して表現を少し整えてあります。)

安倍総理「希望しない人には適用しない」

山井和則議員(以下、山井):私からは決算とも関連しまして、この度の成長戦略。そして、その目玉についてのご質問を安倍総理にさせていただきたいと思います。安倍総理にはすべて質問通告をさせていただきましたので、総理の答弁をお願いを申し上げます。

今回、成長戦略について、5月1日ロンドンで安倍総理は講演をされました。こちらのフリップにございますように有名な講演ですね。「労働改革と年金運用改革をドリルの歯となってやっていく」と。どんな改革をするのかなと思いましたら、ここに書いてありますように、「労働の制度は新しい時代の新しい働き方にあわせ、見直しを進めます。これをドリルの歯は最大速度で回転しています」。

このドリルの歯を最大速度で回転して、この労働改革をしていくと。具体的に、どういうことかと思いましたら、「残業代ゼロ制度」、別名「ホワイトカラー・エグゼプション」。安倍総理が第一次安倍政権で行われようとして、頓挫をしたのがこの残業代ゼロ制度でございました。

簡単にご説明をさせていただきますと、残業代は管理職には払われておりません。管理職以外の一般社員には、労働基準法によりまして、残業代が払われているわけでございます。しかし、今回の残業代ゼロ制度というのは、一般社員であっても残業代をゼロにしていくという、そういう制度でありまして、この制度、今年収が1000万以上とかいろいろ議論が出ておりますが、ドンドンこの年収要件が下がって拡大していってしまうのではないかと、私は心配をしております。

実際、今日も配布資料に書きましたけれども7年前、第一次安倍政権で取り組まれた時は、日本経団連が年収400万円以上ということを要望されたわけですね。400万以上。ところが、最終的に年収900万円以上で、なんとかやろうとしたと。しかし、次の資料にありますように、2007年1月16日に決定があったわけですね。「現段階で国民の理解が得られていると思えない」という風に安倍総理が述べられて、この残業代ゼロ案というのは7年前に一度安倍総理が断念をされたわけです。

そして、今回下に産経新聞も配布資料でありますけれど、「対象は年収は1千万以上、残業代ゼロ、関係閣僚が合意」。産経新聞の6月12日の朝刊に記事が出ております。そこで安倍総理にお伺いしたんですが、7年前、第一次安倍政権でこの残業代ゼロ、ホワイトカラー・エグゼプションができなかった。今回、成長戦略の目玉としてやろうとされている。7年前に頓挫した残業代ゼロ制度と今回の残業代ゼロ制度。どのように違うのでしょうか?

安倍総理:(以下、安倍)そもそも、まず委員は「残業代ゼロ」と、そういうレッテルを貼っていますよね。さすがに、そのレッテルにもちょっと自信がないので、クエスチョンマークをつけているようなんですけれども、そういう考えでは、まったく考え方が異なるわけでありまして。

創造的な仕事と能力をもった方々を「どれだけ長く働いたか」ということで評価することが適切だとはいえないわけでありまして、日本人の創造性を解き放って、付加価値を高めていくためには、残業代という概念がないような時間で働く。そういう人々がですね、そういう世帯で成果をあげていく。あがった成果に対して評価をしていくことが大切であります。

極めてクリエイティブな仕事をしている人たちにとっては、いわば時間という制約ではなくて、そういうひらめきが起こった、集中的に仕事をしていくわけでありまして、そこで結果を出していくということになります。それが短時間で成果が上がる場合もあるわけであります。そして、さらにですね私から「希望しない人には適用しない」。そもそも希望しない人には適用されないんです。そして、対象は「職務の範囲が明確で、高い職業能力を持つ人材」に限定をします。それ以外の一般の勤労者の方々は対象にしません。そして、働き方の選択によって賃金の下がることがないようにしっかりと手当てをしてまいります。それをした上で検討するように、関係閣僚に対して、指示をしたところであります。

今のご説明をするとですね、最初山井議員が話された時に、「大変なことが始るのかな」と思った多くの方がご安心をしていただいたのではないかと。

そこで私の目指す労働改革はですね、子育て・介護などの事情を抱える方、高度な専門性を持つプロフェッショナルな方など、様々な方が柔軟に働き方を選べるようにするものであります。現在、政府内部で検討を進めているところでありまして、今後与党とも協議を行いまして、成長戦略の改定に向けてしっかりと方向性を出していきたい。その上において、制度の詳細について、今後関係審議会において検討を行うこととしているところでありますが、いずれにいたしましても労働環境は大きく変わったわけでありまして、春闘で直近10年間で最高水準の賃上げを実現をし、ボーナスにおいても過去30年間で最高の伸び率。有効求人倍率は、政権を取って以来17ヶ月連続で改善をしているわけであります。

その中におきまして、使用者側も、いい環境、いい賃金を提供しなければ、だんだん人が集まってこなくなっているという状況ができつつあるということも申し添えておきたいと思います。

山井:最初に申し上げますが、今日配布資料にも書いてありますが、私だけが残業代ゼロと呼んでいるわけではなく、朝日新聞でも産経新聞でもそういう風に報道をされているということを申し上げたいと思います。そして、また安倍総理は「本人が希望しないとこの制度の対象にならない」と言いますが、幹部候補生などが対象になると言われていますが、やはりですね、上司や会社側から、「こういう制度、将来の幹部であるあなたにやってほしい」と言われたら、なかなか本人は断れない。そういうものだという風に、私は思います。

おまけにですね、安倍総理。今、私が質問したことに結局お答えになりませんでしたね。7年前には、「現段階で国民の理解が得られていると思えない」といって断念をされたんです。この制度、ホワイトカラーエグゼプション、残業代ゼロ制度。今回とどう違うんですか?

安倍:前回もですね、その制度自体が悪かったのかどうかということよりも、残念ながら理解が得られていなかったということであります。そして、もう既に山井委員がご指摘になったようにですね、今回1千万以上ということでございますし、そしてまた国民の理解を得る上において、今こういう機会も与えていただいておりますので、「本人が、そもそも了解をしなければ、適用にならない」ということも含めて、今条件を明示させていただいたところでございます。そういうことも含めてですね、国民の皆様に対する理解を進めていくことが、これからは充分に可能ではないかと、こう考えている次第でございます。その点が、7年前とは大きく違うというところでございます。

年収要件が1千万から、800万、600万と下がることがあるのか

山井:それは7年前でも、本人の了解が必要なのは、そんなことは当たり前だと私は思いますし、結局7年前は900万円以上で失敗したから、今回は1千万以上なのかということかという風に思います。

これについては経団連の方からは、少なくとも10%程度の方を対象にしてほしいと。そういう要望が来ているわけであります。少なくとも全労働者の一割は対象に、という風に経団連の会長はおっしゃっておられます。ということは、全労働者5千万人おられますから、1割と言う事は500万人ぐらい対象にするようにということが要望されております。 さらに7年前の要望でも400万円以上というのが、経団連の要望でありました。そこで安倍総理にお伺いしたいんですが、これですね、今1千万円以上ということを安倍総理はおっしゃいましたけれど、これはずっと1千万円以上なんですか?それともこの制度導入して、何年かたったら800万円、600万円という風に年収要件下がる可能性あるんですか?

田村厚生労働大臣:(以下、田村)今、総理からお話がありましたとおりですね、成長戦略の改訂版にですね、載せる検討を今いたしております。これ骨格決まってまいりましたら制度設計するわけでありまして、制度設計の中で少なくとも1千万以上というような言い方をしておりますけれども。妥当な、つまり今委員がおっしゃられたとおり、例えば労働者が納得しなくたって、そう迫られたらそうせざる得ないじゃないかといわれましたが、そのような交渉力のある方、そのような金額というのはどれぐらい給料だろうか。

あわせて申し上げれば、先程以前のホワイトカラーエグゼプションと一緒じゃないかといわれましたが、これに関してはですね、以前のはまさに自己管理型の労働制。課長さんのこと言われましたよね、労働時間を自分で管理できる。そういうような視点から前回は提案をさせていただいたわけでありますが、今回は成果を評価する。

労働時間を計るのではなくて、成果を評価する働き方。こういう方々に限定をいたしておりますので、おのずから変わってくるわけでございます。そういうところを含めてですね、交渉力のある。そういう年収、こういうものを一つ設定してまいりたい。詳細決まった上でですね、その後もいろんなことを形を示してまいりたい。このように考えております。

山井:安倍総理、質問通告もしておりますので、安倍総理からもお答えください。ここは重要なところです。なぜならば国民にとっては1千万円以上の方だけの話なのか、導入時はそうだけど、将来的に800万円、600万円と年収要件が下がってくるかは非常に重要な問題ですから、安倍総理お答えください。

田村:今から、まず金額については話し合って決めていきます。その後に関しましては、経済状況もいろいろと変わってまいります。先程も申し上げました。交渉力のある年収はいくらであるか。そういうことを勘案してですね、その後に関していろんな議論をしていくということであります。

山井:安倍総理、逃げないでください。質問通告もしっかりしてあります。この年収要件は下がる可能性はあるんですか?

安倍:これは担当大臣がいるんですから。あなたが聞いているのは事実関係でしょ?(山井:違います。総理の考えを聞いているんです)。私の考えというよりも厚生労働大臣がお答えしていることが事実ですよ。厚生労働大臣が話しているんですから。ですから、“交渉力のある”ということで現在では1千万円ですよ。つまり、これは段々ですね、今この労働市場もタイトになっている中において、かつ1千万円以上であればですね、企業にとって、その人材は絶対に必要なんですよ。つまり、そういう人材が必要な中で、「あなたはどういう働き方がいいですか」という選択をして。そういう時代なんですよ。

山井さんもちょっとですね、考え方がだいぶ古いですよね。はっきりと申し上げまして、新しい時代でグローバルな中で勝ち抜いていかなければいけない。企業も勝ち抜いていかなければ雇用も確保できないんですよ。よって、国民にとってもしっかりと収入の場が確保できないという中にあるわけですね。その中で今、大臣がお答えをしたように現時点では1千万円というのが目安になるわけでございまして。

経済というのは生き物ですから、これはですね、我々今デフレ脱却が出来ましたから、デフレ脱却は出来ていませんが、“デフレではない”という状況をつくりました。デフレ脱却をしてですね、完全に。だんだん物価安定目標に向かってですね、ちゃんと進んでいけばですね、1千万円がだんだん状況としては上がっていくということになります。しかし、逆にですね、世界経済が大きく変化する中においてですね、これはいわばお金の価値がまた変わってくれば、それは当然そういうことが起こるわけでありますが。いずれにいたしましても、今ポイントはですね、大臣がお答えをしたように、いわばそのしっかりと交渉をする、交渉力を持つ金額ということで今、答弁をさせていただいたとおりでございます。

あくまで“交渉力のある”人材であることがポイント

山井:これも質問通告してありますので、安倍総理に改めてお聞きしますが、それではこの法案。労働基準法の改正ということで、来年にも出て来るんだと思いますが、いくら以上の年収の方を対象にするということは法案に明記をされるんですか?

田村:あの先程申し上げました、これは成長戦略の改訂版の中に盛り込んでまいります。その上で、制度設計するわけであります。これは当然のごとく、いろんな議論をいたします、党内でも議論いたしますが、使用者の代表者、労働界の代表者、学識者、こういう方々が入っていただいて、いろいろと議論をいただいて、最終的な制度設計に向かっていくわけでありまして、その中で、どのような形で法案の中に盛り込むのか。他の方法があるのか?。それはそこでいろんな議論をさせていただきながら、法令としては最終的に厚生労働省として、大臣として決定をさせていただきたい。このように考えております。

山井:これですね、本当にこれがどんどん年収要件が下がっていくかどうかは、雇用政策にとって一番重要です。私、安倍総理がおっしゃってわからないのは、私の考えは古いとおっしゃいますが、私は今労働時間が延びたり、残業が延びたり、過労死が深刻化する中で、如何に労働者の健康を守っていくか。そして、企業を成長をさせるか。非常に重要な課題だと思っております。残業代をゼロにするのが、なぜ新しい考えなのか、よくわかりません。

今も法案に年収要件の額をいれるのかどうかわからないという無責任な答弁が田村大臣からありましたが、安倍総理に改めてお伺いをさせていただきます。1200万円の年収要件で、有料職業紹介の規制緩和、これ2002年には年収1200万円以上の経営管理者、科学技術者からの手数料徴収を容認するということで規制緩和が2002年にされました。しかし、なんと翌年にはもう500万円も下がって700万円以上の方には、手数料徴収を容認すると。国会審議を経ずに政省令や告示の変更で簡単に年収要件というのは下がってしまいます。

ですから私は、安倍総理にお聞きしたいのは1千万円、1千万円とおっしゃいますが、これが将来800万や600万、中所得者に下がるのかどうかというのは、国民が一番知りたいことなんです。安倍総理がドリルの歯となって、最大速度で回転して、労働改革していく。この1千万円の収入要件というのは将来、この有料職業紹介のように下がる可能性ありますか?

安倍:これはですね、もう田村大臣が応えて、先程私が応えたことがすべてでありますが、要はですね、今山井委員はですね、「過労死をするかもしれないような人たち、どうするんだ」と。それは絶対あってはならないことでありますから、我々はそれはしっかりとやらなければいけない。そういう意味においてはですね、労働基準局もちゃんとさらにその仕事を徹底していくのは当然のことであります。

より一層徹底していくと言うことを前提にですね、かつ今回の新たな労働時間制度については、「希望しない人には適用しない」。そして、「対象職務の範囲が明確で、高い職業能力を持つ人材に限定」をして、それ以外の一般の勤労者の方々は対象にしない。そして、さらに「働き方の選択によって、賃金が下がることがない」。この3原則の中で、対応していくということであります。

絶対額についてはですね、今後経済の状況が変化をしていく中にあって、その金額がどうかというのはありますよ。しかし、それは今の段階で、今の段階で言われている800万とか600万円という水準の方々に、今の物価水準、賃金水準において、そういう方々に適用ということは、この三原則から外れるわけでありますし、そこのところは今後三原則は変わらないと言うことであります。

山井議員「今回1千万円が、蟻の一穴になるんではないか」

山井:ということは安倍総理、これは重要なことです。労働者派遣法でも最初は少しだけ緩和しますが、どんどん拡大して言ってるんですね。ですから私は、今回1千万円っていうのが、蟻の一穴になるんではないか。金額がどんどん下がっていくのではないか。実際、有料職業紹介では、1200万が翌年に700万に下がっているんです。国会審議もなしに下がっているんです。

安倍総理、それではお聞きしますが、5年後も10年後も1千万円から下がらないということでよろしいですか?

安倍:経済と言うのは生き物ですから、これはですね将来の賃金水準、全体のですよ、全体の賃金水準、そして物価水準というのは、これはなかなかわからないわけですよ。そこで例えば年金においても安定的な制度とするために、年金額も物価が下がっていけば、物価スライドで下がっていくじゃないですか。4月から下がった。これは民主党も賛成したわけですね。

つまり、その意味において、例えば10年前に、「10年後に、年金額は絶対下がらないんですね」と言われても、それは応えられなかったわけでありまして。それは代替率はどれぐらいですよ、という形で応えている、現役との関係において代替率がこれぐらいですよ、という形で応えていくわけであります。

ですから、先程来より申し上げておりますように、今の現在の段階における賃金の全体的な状況からすれば、今の1千万円というのであれば、今の段階で800万円、600万円、400万円の方々は、それは当然はいらない。ということは明確であります。そして、先程申し上げました今後については、先程申し上げましたような三原則にのっとってしっかりと進めていくということであります。

山井:そこをはっきりしていただきたいと思います。三原則の中には、年収要件は入っておりませんから今後については、800万円や600万円に下がる可能性は否定されないということでよろしいですか。

田村:総理がなんども申しておりますけれども、要するにお金の価値がどうなるか、という問題が当然ありますよね。例えば、所得水準がみんないっぺんに下がっていって、仮にですよ、今の10分の一になったときと、違うわけですよね。ですから、そういうような経済の状況だとか所得の状況に応じて、どうなるかという将来はなかなか予見できないことであります。

ただ、一ついえる事は、山井委員が思い描いておられるような方々、つまりですね、それほど所得が多くない、今全般の中でですよ、働いてる方の中で、あまり所得が多くない方々まで適応することは考えていないわけであります。あくまでも仕事をする労働契約を結ぶ時に、交渉力のある方、「このような職務ならば、私としてはこれは労働契約は結べない」といえるような、そんな交渉能力のあるような方ということでありますから、そのような年収をしっかりと稼げる方であります。

山井:私は、こういうことを聞いているのは、先程も言いましたように、経団連は現に10%少なくとも5千万人の労働者からすれば500万人は適用されるようにと、ということを要望しているわけですね。それで400万円以上という年収要件を7年前に要望をしておられる、実際に。だから私は聞いているわけです。

それで安倍総理も逃げておられるのは、今後は3要件とおっしゃりましたが、3要件の中には肝心の年収要件は入っていないんです。安倍総理、今後も年収要件は、物価の変動とかはいいですよ。それよりも大幅に下がるということはないということで、いいですか?国民はそのことを今、一番知りたがってるわけですから、安倍総理お願いいたします。

安倍:これはあの繰り返しになりますが、この「希望しない人には適応しない」というわけでありますし。また、ポイントの一つはですね、「対象が職務の範囲が明確で高い職業能力を持つ人材に限定」している。そこにポイントがあるわけでございます。その中においてですね、我々は1千万円というだいたい年収の額をお示しをしているわけであります。その言わば、この1千万円というラインにおいて、この3要件というもので、現在考えているわけでございまして。

今後についてはですね、先程来田村大臣もお答えをさせていただきましたように、それはこの全体の賃金水準、あるいは物価動向もありますが、そういうものも勘案しながら、当然それは決まっていくと言うことになるんだろうと思いますが、それであっても、この3要件は変わらないということになるわけであります。

山井:ということは、この3要件には年収要件は入ってませんから、将来的には年収はいくらになるかわからない。ということは、経団連が言っているように400万円以上とか、全労働者の10%ということになる可能性もあるわけですか?

安倍:それはあの将来の予測ですからね、これはわかりませんよ。例えば、国会議員の歳費だってわかりませんよ、10年後いくらになっているか。それは全体のですね、全体の平均収入と関わりがあるわけでありますから、全体の平均収入、果たして今絶対いくらかということは絶対そうだということは明確にはいえないわけであります。

もちろん、今おかれている予測値はありますよ。この予測値で、我々がしっかりと2%の物価安定目標を達成をして、3%の成長をしていくということであれば、1千万円を切るという事は、もちろんないわけであります。しかし、それがですね、絶対にそうだとは、「絶対」とは経済においていえないのは当たり前でありまして、そこは市場主義の経済でありますから、それはないわけでありますが、繰り返しになりますが、我々は3要件、経団連の言っていることと、私たちは政府として申し上げていること、そこは違うわけですから、私たちは申し上げている事は3要件の範囲、これは明確であるということでございます。

山井:3要件、3要件とおっしゃっていますが、重要なのはこの3要件には、ここに書いてあります通り「希望しない人には適用しない」「対象を絞り込む」「賃金が減ることのないように適正な処遇を確保する」ということで、肝心の年収要件は入っていないんです。ですから、改めてお聞きしますが、この3要件、これはっきり言いまして、どうとでも解釈できるんですね。非常にあいまいな定義です。ですから、私も今、安倍総理が将来の事はわからないといったのは非常にびっくりしまた。

ということは、この3要件には年収要件は入っていないということは、将来経団連が要望しているような10%、500万人程度、あるいは400万円の年収制限ということにもなる可能性があるかもしれないということですか?

安倍:制度の詳細においては、先程申し上げたように今後関係審議会で行うことになります。その審議会で議論を行う際には、先程申し上げました3要件の上に、この詳細な設計を行っていく、ということになります。

山井:安倍総理、今制度の詳細をおっしゃいましたが、年収要件が1千万円なのか400万円なのかは詳細じゃないんです。これは根本なんです。高所得者だけなのか?中所得者まで入るのか?国民が一番不安に思っているのは、ただでさえ今生活が苦しい、また長時間労働がある。その中で、私は高所得者へのこの残業ゼロ制度も反対ですが、中所得者が入ればもっともっと反対ですから。安倍総理、そうしたら将来的にもしかしたら、この3要件に合致したらですよ、中所得者の方も残業代ゼロ制度入る可能性があるということですか?

田村大臣「山井議員が思い描いておられるような方は対象外」

田村:あの何度も申し上げておりますが、「職務の範囲が明確で、職業能力の高い方が対象」。これ絞り込むという風に総理から我々は指示をいただいておるわけであります。そういう方が、どういう方かとお考えいただければですね、ご理解いただけるんじゃないかと。たぶん、山井議員が思い描いておられるような方は対象にならないということであります。

山井:これ、国民の皆さんも非常に心配しているところです。残業代がなくなって、賃金が減るんじゃないか。残業代がなくなって、長時間労働になるんじゃないか。安倍総理、これ中所得者には将来的には絶対に広がらないということでよろしいですか。というのは、この3要件だと、中所得者も入りますよ。中所得者で専門的能力の高い人、入る危険性がありますから、いかがですか、安倍総理。

安倍:先程ですね、申し上げたように我々では1千万円ということを目途としているわけでありますけども。当然その人はですね、希望しない人には適用しないという中において、当然高所得がある人。山井さんが言ったご懸念がですね、顕在化しないような、そういう対象を描いているわけでありまして。

正に創造的な仕事をしている、専門性の高い仕事している、そういう人たちがですね、むしろ今の労働時間性ではですね、その範疇の中で、仕事をしていることによって、かえって効率性が下がるという方々もおられるわけでありますから、そういう方々に選択肢、もっと自分の生産性を上げていきたい、もっと自分の能力を生かしていきたい、もっと自分の能力を開花したいと言う人たちに、そういう働き方が出来るようにしていく。そういう制度であるということを重ねて申し上げたいと思います。

山井:「本人の希望なんだ」「本人の希望なんだ」とおっしゃいますが、私はそれは机上の空論だと思います。幹部候補生で、残業代ゼロでやってくれと言われたら、それは多くのサラリーマンの方々、断ることがなかなかできません。それに安倍総理、今もお答えになっていなかったのが、希望しない人には適応しないということですが、もう時間来ましたので、最後一問だけお聞きしますが、中所得者ですね、これ最後にお答えください。中所得者には、この3要件に一致しても適用しないんですか?するんですか?これは大事な質問です。

田村:何度も申し上げております。時間で測るのではないんです。成果で測るようなそういうような職種、能力のある方、そういう方に正に対応する、適用するわけでございますので、その充分に合致するような年収するような方とご理解ください。

山井:以上で終わります。ありがとうございました。

出典:衆議院インターネット審議中継 - 決算行政監視委員会(6月16日)