会社こそ柔軟であれ - 赤木智弘
※この記事は2014年05月04日にBLOGOSで公開されたものです
JTB中部の男性社員が、高校の遠足バスの手配を忘れ、それをごまかそうとして、遠足を中止しなければ自殺するという手紙を学校に届けた事件。警察が立入検査を行うなど、大事となっているようだ。(*1)事件としてはあまりに自分勝手かつ幼稚な事件で、苦笑しかできない。
もし、この自殺をほのめかす作戦が成功したとして、その後の処理はどうするつもりだったのだろうか?
キャンセル料なども発生するだろうから、そのうちの本来であればバス会社に払う分のお金などはどうするつもりだったのだろうか? 手配がなかったことを隠すためには横領をするしか無かったに違いない。
そういう意味では、嘘がバレなければバレないほど、さらなる罪を重ねた可能性は大きく、この段階でバレたのは本人のためにもなったのではないだろうか。もちろん、最初から嘘などつかず、前日に手配をしていなかったことに気づいた時点で、怒られようがなんだろうが、周囲に頭を下げまくって必死にバスをかき集めれば良かっただけの話ではあるが。
確かにこの問題は本人の幼稚さによるものではあるし、それが批判されるのは当然ではあるが、同時に社内にそうしたミスを共有できる空気があったかどうかも考えるべきだろう。ミスをした人間が当然のように責任を取らされるような社内環境では、取り戻せるかもしれないミスが報告されず、結果として大きな問題を引き起こす可能性がある。そうした認識が口先だけではなく、本心として社内で重要視されていたのかどうか。
また、学校の行事は毎年、同じような時期に行われる行事なのだから、手配がなければ他の誰かしらが気づくはずである。それに気づかないのであれば、一緒に働く社員のなかで情報共有が十分にされていなかったということである。
日本ではこうした問題が発生した時に、とにかく個人のせいにしてしまい、気を引き締めて仕事をしていれば、こうした問題は発生しないはずだと結論付けてしまうことが多いような気がする。
だが、業務に人間が介在する以上、ミスはどうしても起こりうる。社員がミスを起こすのであれば、企業が社員をサポートするために、それに柔軟に対応できる体制を持ち合わせるべきなのである。
ともすれば、今の日本では会社の硬直性に対して社員の側が柔軟に対応している光景をよく目にする。硬直した就労環境に対応した、サービス残業の常態化なども、そうした問題の1つであるだろう。
会社の信頼を落とさぬためにも、会社の側にこそ、様々な事態に対応できる柔軟性を求めたい。
*1:JTB立ち入り 観光庁、中部本社と多治見 バス手配漏れ(岐阜新聞)