※この記事は2014年04月11日にBLOGOSで公開されたものです

4月11日に行われた衆議院内閣委員会において、日本維新の会所属の杉田水脈(みお)議員が、内閣府で予算化されている対外広報費に関連した質疑を行った。この質疑の中で、菅官房長官は注目を集めている河野談話の検証チームの人選などについても言及した。その答弁の様子は、後半部分に登場する。本記事では、今回の質疑を書き起こしでお伝えする。なお、実際の質疑の様子は、衆議院インターネット審議中継で確認できる。※可読性を考慮して、表現を一部整えています。

広報費は慰安婦関連訴訟の支援にも使うべきではないのか?

杉田水脈議員(以下、杉田):「日本の国益増進に資するようアジアを含め欧米各国における対日理解、好感度を向上させる広報費」についてお伺いしたいと思います。これは昨年、初めて内閣府で予算が取られ、昨年25年度は5億円でしたが、今年度は3倍の15億円の予算化がなされています。実際どのように機能的、効率的な広報を行っていくのか、ということは国民の皆さん、関心があるところではないかと思います。今日は具体的にお聞きしたいことがございますので、よろしくお願いいたします。

まずは、アメリカのグレンデール市に建立されました慰安婦像について、現地に在住の日本人、日系人の人たちでつくるNPO法人「歴史の真実を求める世界連合会」が、慰安婦像の撤去を求めて、グレンデール市を相手取って裁判を起こしました。グレンデール市を提訴しています。この裁判の詳細を、どこまで把握なさっていますか。

下川・外務省大臣官房参事官(以下、下川):本年2月20日、「歴史の真実を求める世界連合会」が、米国カルフォルニア州グレンデール市等に対して、米国連邦政府の地方裁判所に提訴したことをは承知しております。

原告は、グレンデール市における慰安婦像の設置は、連邦政府の行政部門に外交問題を管轄する権限を付与している米国憲法に違反する行為である、と。そういう立場から慰安婦像の撤去を求めているということです。

具体的には、連邦政府の権限である外交に地方政府が関与できないこと。2番目に慰安婦像と碑文は市の条例に反すること。3番目に碑文は市議会決議を経ておらず無効であること。そういった点を論拠にいたしまして、慰安婦像の撤去を求めているという風に承知しているところでございます。

杉田:この裁判の原告の方々が、先月11日に、国会内で報告会を開きました。この会合には、西川京子文部科学副大臣ら与野党の国会議員が多く出席をいたしました。今日、この中にいらっしゃる先生の中にも来ていただいた方がいます。

そのときに、原告の一人の目良浩一さん、この方はハーバード大学の元助教授で、非常に熱心にこの問題に取り組んでいらっしゃるんですが、勝訴して判例ができれば、米国の他の自治体が慰安婦像を作るのを阻止することができる、と。なので、この訴訟は非常に意義のある訴訟だということを説明をされました。

この民間の方々が、裁判を闘っております。いい弁護士さんがついたということも聞いているのですが、向こう側も非常に能力の高い弁護士さんを雇ったということもニュースで報道されています。なにしろ連邦の最高裁まで訴訟が続いた場合、だいたい期間にすれば、5、6年掛かる。そうすると費用が約6億円ぐらい掛かる、というようなこともおっしゃっていました。これについて寄付を呼びかけて、かなり寄付は集まっているのですが、とてもじゃないが6億円も寄付は集まっていないです。こないだの報告会の中でも、海外で日本人としての誇りをもって、子孫の名誉のために率先して戦おうとしている同胞を守ってほしいということで、日本政府へ支援を求めていました。

政府として、どのような支援ができるのか。そして、先ほど私が申し上げた日本の国益の増進に資するようアジアを含め欧米各国における対日理解、好感度を向上させる広報費。この広報費というのは私は、こういうところに使用していくべきじゃないかと思うのですが、どのようにお考えですか?

下川:そもそも慰安婦像の設置につきましても、わが国政府の立場と相容れないものであり、きわめて残念であると考えておりますし、本件の訴訟もそのような思いの中で起こされたものと認識しております。

その上で申し上げますが、本件訴訟自体につきましては、米国内の裁判所において、民間団体が提訴した係争中の訴訟でございます。そして、日本政府自身が当事者ではございませんので、個別具体的に中身についてコメント、あるいは支援というのはなかなか難しい面があるのかなと考えています。

他方で今、ご指摘があったように歴史の問題に関しては、政府として政治問題、外交問題化させるべきではないという基本的な立場の基で、日本の立場、これまでの取り組みについて、もし海外において誤解が生じている場合であれば、国際社会の正しい理解を得るべく、日本政府の立場や、これまでの取り組みについてしっかりと説明するなどして、対外的な広報を戦略的に行っていかなければならないと考えておりまして、これからもそういう風に取り組んで生きたいと考えているところでございます。

そういう意味で、この訴訟に関連いたしましても、従軍慰安婦問題に関しましても、わが国の大使館および総領事館を通じまして、重層的に情報収集を行うと同時にですね、必要に応じて、関係する議会や地方自治体の関係者、あるいは世論に影響力のある有識者、メディアに対して理解を得るべく、努めていきたいという風に考えているところでございます。

このように国際社会の正しい理解を得るべく、対外的な広報を強化していくことは非常に重要でありまして、わが国の国益の実現に資するよう効果的な発信につとめていきたいと、考えているところでございます。

杉田:これまでも、これからもというご答弁いただいたんですけれども、これまでやってきた中で実際に慰安婦像がアメリカが建ってしまったということがあるんですよ。その中でですね、この方々は、もし勝訴すれば、アメリカの中でほかの自治体が慰安婦像を建てることができなくなる。それを阻止するために戦っているんですよ。ほかの手段で、阻止する手段ってありますか。これからも強化されるという答弁でしたが。

下川:先ほどの答弁と重複いたしますが、海外におきます慰安婦像等の設置や決議に関しましては、現地のわが国大使館および総領事館を通じて、これまでもいろいろと情報収集を行うと同時に、いろいろなチャンネルを通じまして、必要に応じて、議会、地方自治体の関係者の方々に対して、直接、間接あるいは世論に影響力のある有識者、メディアに対して、働きかけを行い、慰安婦問題についての日本政府の考え方やこれまでの取り組みについて、理解を求めるように努力してきたとことでございます。

いずれにしても、日本政府としては、この問題を政治問題、外交問題にするべきではないという基本的な立場のものでですね。海外において、誤解が生じている場合には、取り組みをさらに説明して理解が得られるように、これからも積極的に取り組んで生きたいと考えているところでございます。

杉田:私たち一般国民は日本政府と外務省の働きを信じていれば、もう世界中に慰安婦像は建たないんですか。これ以上、アメリカに建たないんですか。皆さんががんばってくださるとおっしゃってましたけど。

下川:これからもですね、大使館、領事館を通じまして働きかけを、いろいろな手立てを使いまして、最大限努力していきたいと考えているところでございます。

杉田:最大限の努力で、一切建たないというような確約はしていただけないようなので、アメリカから話をオーストラリアに話をもって行きたいと思います。

オーストラリアのシドニーの近郊のストラスフィールドの市議会が、今月1日に慰安婦像の設置の当否をめぐる初の審議会を開催いたしました。その中で、中国系と韓国系の市民が連携して、同市に設置の嘆願書を出したのですが、その内容を把握していますか?

下川:本年4月1日、慰安婦像の設置をめぐり、市議会公開セッションにおいて、中国・韓国系コミュニティから提出された嘆願書について、審議が行われたと承知しております。その後、非公開セッションに起きまして、市長を含む市議会議員7名で議論し、慰安婦像の設置案については、これは「地方自治体が判断できる事項ではない」ということで、連邦政府および州政府に意見を紹介するという結論を発表したと承知しているところです。

杉田:今回は、「これは地方の議会が決めることではない。州か連邦政府の立場を明確にして、それに従う」と言っているんですね。だから、一旦ストラスフィールド市における慰安婦像の設置は止まったようには見えますけれども、今後連邦政府が、もしもこれを建てるべきだという判断をすれば、今度はオーストラリア中に慰安婦像が建ってしまうと思います。こうした動きに対して、日本政府として、どのような働きかけをしていかれるのでしょうか?

下川:ただいまご説明申しあげました動きにつきましては、わが方の在オーストラリアの高官からも報告を受けているところで、わが方としましても状況を注視するとともに、必要な働きかけ。先ほど申し上げましたようなわが国の取り組みに対する理解などについての説明ということもしっかりとやっているところでございます。

先生ご指摘のとおり、このプロセスは今後も続いていくことになりますので、今後も引き続き情報収集、必要な働きかけということをやっていきたいと考えているところでございます。

菅官房長官「私たちは宣伝に国として取りくまなすぎた」

杉田:何回聞いても、情報収集と必要な働きかけという答弁しか返ってこないんですけれども、どうしてこんなに日本政府、働きかけとおっしゃっても強い働きかけはまったくなされていないですよね。

私は、先ほど申し上げましたように今日は広報予算のことについて質問しています。広報予算をいかに戦略的に使っていくか。15億もとっているわけですから、ぜひこういった慰安婦像の設置も阻止していただきたいと思っているんです。日本の対日理解、好感度上げる、一番の目的はここにならないといけないと私は思っているんですよ。

その予算の使って広報をいくにあたって、一点私は明らかにしていただきたいことがあります。今日皆さん方に資料としてお配りしております、いわゆる昭和20年の9月に連合国の最高司令部が発したプレスコードです。今日30項目、全部皆さんのお手元に方にお配りしておりますけれども、ここにいろいろ書かれているんですよ。こういったことは日本の報道機関は報道してはいけないというような、そういうような指針だったんですけれども。これは現在も効力を持っているんですか?

水嶋・外務相大臣官房参事官(以下、水嶋):ご指摘の連合国最高司令官が発しましたプレスコードに関する総司令部覚書に基づいてとられた措置は、サンフランシステコ平和条約の発効に伴いまして、失効してございます。

杉田:既にもう失効しているとのことで、私もそのとおりだと思うんですけれども、今考えると、失効しているとは思えないんですね。いまだに、日本の報道はこれにとらわれているように思いますし、日本政府の対応や見解も、これにとらわれているように思えて仕方がないんです。

昨日、ちょうど上智大学の渡部昇一名誉教授がこられまして、国会内での勉強会がありました。その中で、渡部教授が、「今、世界的に見て、この歴史問題が時事問題になっているんだ」と言っていました。「時事問題として、対応していかなければいけないんだ」と。 つまり、「もう外交問題化しません」と言っているのでは、日本はどんどん遅れていってしまうということをおっしゃっているんです。

このプレスコード、先ほどもう失効されているといわれたんですけれども、実は昭和30年代の初頭ぐらいまで、新聞の部分はずっとGHQが握っていたという事実があります。だから、完全に失効してないんじゃないかという懸念があるんですが、このあたりはどうお考えですか。

水嶋:(重複することを詫びた上で、ほぼ同じ答弁を繰り返す)

杉田:失効しているということで、これをご覧になっている報道機関の皆さんは、こういったことにとらわれず、キチンとした報道をしていただきたいと思います。失効しているのならば、例えば 習近平国家主席が、ドイツで「南京大虐殺で30万人、日本人に虐殺された」という演説をしたのですが、これに対して、どうして日本の総理なり、官房長官なりが「南京大虐殺はありませんでした」という事実をどうして反論しないんですか。

菅内閣官房長官(以下、菅):中国の主席の発言については、私の方から記者会見ですぐ反論しました。そして、また外務省ルートを通じて、そこも申し上げました。

ぜひ、ご理解をいただきたいのですが、政権の座についてから、この問題については、きわめて重要だと私たちは考えております。そして、海外広報の広報費、3倍になっているという話がありましたが、私たちはまさにこの宣伝力。戦略的に、国として取りくまなすぎた。そこは反省をしなければいけないという、まず出発点につきまして、広報関連の予算を倍にさせていただきました。

倍にしても他国と比較をして、非常に少ないということも事実です。しかし、少ない中にあっても、私たちは何かあったら、すぐその場で対応するという、そこのことについて、外務省に指示をいたしました。国民の皆さんの思いをしっかりと反映することができるよう、今政府としては取り組んでいるところでございます。

そして、これもご理解をいただきたいのですが、教科書につきましても私たちは1月28日に、指導の中で、尖閣さらには竹島について明快に現状、政府の考えを教科書の中に書き込むことができました。その中に、南京事件についても従来のことではなくて、客観的事実とを述べさせていただきました。皆さんから今までの問題点を指摘していただいて、その輪を広めていただいているところであります。その中で、政府としてもできる限り、この問題については、史実に基づいて、客観的にですね、しっかりと広報のできるようにしたいと思います。

まだまだご不満あろうかと思いますけれども、そこは思いは同じかと思っています。

杉田:思いは同じだとおっしゃっていただきましたので、是非今後に期待していきたいと思います。そこで一点、昨年の4月の予算委員会の際にも、私はこの広報費のことについて、菅官房長官にお尋ねしました。

その際、日本が5億円計上したのに対して、中国、韓国の同様の予算はどのぐらいありますかという質問をさせていただきました。その際、「中国は公表していないので、いくらかけているかわからないが、韓国の同様の予算は2億4千万だ」とお答えいただいたんです。つまり、日本が5億だったら、韓国は2億4千万ですから半分なんですね。

しかし、韓国がいろいろ行っている広報活動。欧米で行っている広報活動について、日本と韓国を比べたら、どっちがすごい広報活動をやっているかというと、全世界の方に聞いても韓国の方が激しい活動をやっているということになると思うんです。

ですから、額にしてみれば日本の方が多いけれども、向こうの方が有効的な広報活動をやっているのであれば、これは私はお願いをしておきたいのですけれども、徹底的にライバルがあるのならば、ライバルがどのような手を使ってやっているのか、というのを徹底的に調べないと…。今、「喧嘩になりません」と言いそうになったのですが(笑)、喧嘩じゃないんですが、相手があるのであれば、相手がどういう手を使っているのかを徹底的に調べて、それを上回る戦術を取っていかないと、情報戦には勝てないと思います。

ですから、外務省になるのでしょうか?。私は内閣府の予算なので、内閣府ということでお願いしたのですが、結局外務省からしか答弁いただけてないんですよ。ですから、しっかりと内閣府と外務省で連携をとって、戦略的な広報活動を行っていただきたいと思います。これは要望として申し上げます。

次の質問なんですが、河野談話の検証を行うということで、2月20日の予算委員会のときに、石原信雄元官房副長官が参考人承知でこられて質疑があったときに、「検証を行います」と官房長官におっしゃっていただいたんですが、今現在、この検証の進捗状況はどれぐらいなんでしょうか?

菅:まず、政府として検証を行うということを答弁いたしました。その背景としては、河野談話を作成した際の事務方の責任者、官房副長官の石原さんが、高齢にもかかわらず、国会に出席をしていただいて、証言をされました。

そこでは、河野談話の作成について、韓国側とすり合わせをして作られたことが推測されるということが新たに明らかになったことであります。さらに、その当時の日韓関係を考えて、善意として行ったことが今またこのような問題になっていることに対して、非常に残念であるという趣旨の発言をされました。

そうした石原さんの思い、また山田委員からの発言を受けまして、私たちはそこは検証させていただきますということを申し上げました。その中ですね、現在人選などを進めておりまして、いろんな方にお願いをしているというところであります。

杉田:今人選を進めてらっしゃるということだったのですが、おそらく有識者や民間の方にも入っていただいて、検証チームみたいなものをつくって、進めていかれるんだろうと思います。あのぜひ、どういう方が検証チームに入ってくるかというのを公開していただきたいと思うのですが。

菅:検証チームには、十分に注意しながら、有識者の方にお願いしていこうと思っております。基本的には、やはり法制度に明るい方とか、あるいはマスコミの方、女性の方、客観的に見て偏ることなく、「なるほどな」と思われる方にお願いをいたしております。そして、政府内の検討チームにしたいと思います。

その中で、静かに検討する環境の中で行うべきであろうと思っておりますので、その公開の中でということでなくてですね。本来は、どういう状況の中で、この談話が出されたのかというのを検証することが、最重要ですから。

そして、これは予算委員会でも申し上げましたが、結果について、国会から要望があれば、提出をさせていただきたいということは申し上げました。当然、そのときに、どのような方々によってチームがつくられて、ということは明らかにすべきかなと今は考えております。

杉田:今、「静かな状態で検証を進める」というお言葉があったのですが、次に私が質問をさせていただきたいのは、会議は公表されるのか、もしそれが公表されない非公開でやるというなら、非公開の理由をお尋ねしたいと思うんですけれども。

菅:河野談話を作成するにあたって、日本と韓国の政府の間で、慰安婦については公開しない。これは政府間の約束ですから、しっかりと私たちは保持するのが、約束は守るとして、ここは当然のことだろうと思います。そういう中で、検証するわけですが、政府だけでなく、有識者の方に入っていただいて、お願いをするわけでありますけれども、その結果にいついては、国会から要請があれば、私は提出させていただくということも述べていますし、どのような方によって、どういう回数行ったといったことについては、その時点で明らかにさせていただければなと今は思っています。

杉田:結果は公表していただけるということですが、この問題、今非常に国民の皆さんの関心が高いです。河野談話の見直しを求める署名活動を日本維新の会が行っておりますけれども、一ヶ月の間に14万筆を越えました。国民の声として、なんとかそれを官邸の方にお届けしてまいりたいと思っています。非常に関心の高いことですから、しっかりとした結果をだしていただくことを要望したいと思います。

-杉田議員は、最後に食品のアレルギー表示についての質問を行って答弁を締めくくった。

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