※この記事は2011年05月13日にBLOGOSで公開されたものです

　5月13日付け産経新聞朝刊の1面コラムで、中曽根康弘・元首相（92）が今後のエネルギー利用に関し「原子力に頼らざるを得ないのではないか」と、原子力発電所の継続利用を強く訴えた。福島第一原発で放射能漏れの事故が起きているさなかで、しかもこの日は、一号機の燃料棒がメルトダウンしていることが発覚したばかり。原発推進の立役者だった中曽根氏の発言だけに大きな波紋を広げそうだ。

　まず中曽根氏は、菅首相が中部電力・浜岡原発を停止させたことを
　エネルギー政策上の原子力発電の意義を明確にさせないままの応急手当的な処置だったのではないか。政府・与党の基本的姿勢が問われるだけに、「決断」は疑問を持たせたと言わざるを得ない。
と一刀両断した。返す刀で、
　日本のエネルギーは今後、風や波や太陽光など自然力への比重を増していくだろうし、それは推進すべきだ。しかし、効率性や日本の科学技術力などを考えると、代わりの物を入手しない限りは原子力に頼らざるを得ないのではないか。
として、原子力の必要性を強調。風力発電などの再生可能エネルギーが原発の代替になることに悲観的な見通しを示した。

　その上で、今回の原発事故を「津波と地震による複合的な災難であり、今までの想定を超えた問題」として、事故予防のために以下のような提案をしている。
　新設の原発を海辺に築くのは、もはや難しい。いかに防潮堤を高くしても、津波が乗り越えることはないという保証はないからだ。いかなる津波も届かないという安全な場所に建設するくらいの基準を作らないといけないだろう。
　中曽根氏は、若手議員だった1954年に、日本初の原子力関連予算を提出して成立させた。翌1955年には超党派の議員立法で「原子力基本法」を成立させるなど、その政治家キャリアの長きにわたって原子力行政をリードしてきた。原発事故を受けて、「反原発」の空気が広がる中で、強烈なカウンターを当てたと言えよう。

　実は、最近の自民党は原子力行政について軌道修正を始めている。12日の記者会見で、自民党の谷垣禎一総裁は「過去の日本の原子力政策にいくつか盲点があったのは否定できない」として、自然災害の想定など政権与党時代の政策に問題点があったとの認識を示めしたほどだ。しかし、過去の自民党を代表する中曽根氏が、頑なに原子力推進の立場を崩さなかったことで冷や水を浴びせられた格好になった。

【参考記事】
・【転換への挑戦】元首相・中曽根康弘　場当たり的な「政治決断」 - MSN産経ニュース
・東電、１号機「メルトダウン」認める - 産経新聞
・特集ワイド：「国策民営」　日本の原子力、戦後史のツケ - 毎日ｊｐ(毎日新聞)
・自民党：「過去の原子力政策に盲点」　谷垣総裁が言及 - 毎日ｊｐ(毎日新聞)

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