※この記事は2011年05月12日にBLOGOSで公開されたものです

　5月12日の朝刊最終版は、朝日、読売の主要2紙が一面トップで東京電力の賠償問題を取り上げた。福島第一原子力発電所の被災者への賠償を、政府が支援する方針が固まったことを報じるものだ。東電を含む電力各社が資金を出し合って「原発賠償機構」を作る。数兆円にも達する賠償金を支払うために、必要時に政府が公的資金を貸与するという枠組みだという。東電を存続させることが最優先された結果、電気料金の値上げに繋がる可能性が高くなってきた。
　
　しかし、同じことを報道しながらも、この2紙の書き方は微妙に異なっている。

　朝日は1面では、4段ブチ抜きで「賠償支援　きょうにも決定」の大見出し。それを受けた3面の記事では「東電賠償　ツケは電気料金に」と、値上げに批判的なトーンだ。「菅政権は世論や金融市場、電力の安定供給を視野に検討してきたが、東電が存続し、貸手責任も問われない案が通った」として、“政府プランは東電に甘い”と言いたげな記事だった。
　
　一方、読売の1面の大見出しは「東電の破綻回避」。東電の存続が固まったことを強くPRする一方、電力料金の値上げ問題には、ほとんど触れていない。さらに、3面の社説では「東電が賄えぬ分は国が責任を」とし、政府の更なる資金関与を求める意見を打ち出した。ここでは「政府は、国にも賠償の責任があると再三、強調してきた。ならば前面に立ち、さらなる負担に応じるべきではないか」と、政府がより一層の資金投入をして、東電のサポートをするプランを求めているようだ。
　
　この他の新聞も見てみよう。朝日と足並みを揃えたのは、毎日、東京の2紙。毎日は2面の見出しで「電気料金転嫁の恐れ」と報じている。東京新聞はさらに強烈で「これは東電救済策だ」の社説を掲載。「はっきり言って、これは国民負担による東電救済策だ。菅直人政権は霞が関と金融機関の利益を代弁するつもりなのか」と怒りに満ちた書き方で、政府批判を展開している。

　日経はこの日は大きく扱わず、東電の株価が一ヶ月半ぶりの水準に上昇したことを5面で「原発賠償策固まる　市場ひとまず好感」と報じる程度。産経は社説で「政権の責任曖昧にするな」と触れているが、1面トップは「北スパイ活動関与か」の特ダネ。他社と一線を画す結果となった。

　未曾有の大災害となった原発事故の被災者への補償は、すでに東電一社が払えるような額ではなくなっている。政府案に従って電力会社各社が負担することになれば、電気料金の値上げは不可避。読売が主張するように政府が賠償するのであれば、新たな財源が必要になる。いずれにしても、被災地以外の国民が補償金を肩代わりをせざるを得ない状況になりそうだ。

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