4月にサンヨー食品から発売された「ビャンビャン麺風」250円 | 食楽web

 映画を観る前に、原作を読んでいたがゆえにガッカリすることは往々にしてありますが、逆もまたしかり。映像化されてもそれはそれで味わい深く鑑賞できる映画作品もあります。

 そしてこれは最近、コンビニで見かけるインスタント麺にも同じことが言えるでしょう。例えば “名店〇〇監修”と銘打たれたカップ麺を買って食べてみると、実際に店で食べたのとはまったく違う味で静かに失望する。その一方で、「案外、これはこれでイケる!」と思う商品に出くわすこともあります。

 さて今回、ご紹介したいのはサンヨー食品から登場しているカップ麺「ビャンビャン麺風」という商品。「ビャンビャン麺」は、画数の多い難解な漢字1文字を使って「ビャン」と読みます。「ビャン」1文字で58画。麺を延ばしたり台に打ちつける際に「ビャンビャン!」と音がするので、この名前がついたとか。

漢字で書くとめちゃくちゃ面倒な「ビャンビャン麺」

 パッケージにデカデカと“史上最大級の幅広麺(当社カップ麺史上)”と書いてありますが、このビャンビャン麺の故郷は、中国・陝西(せんせい)省の西安。その一帯で食べられている幅広麺を指します。

 ちなみに筆者はかつて実際に西安で食べたことがあり、それが作られる様子も見たことがあります。麺打ち職人が小麦粉の生地を台に打ちつけ、手で延ばし、これを繰り返して麺にしていました。包丁も機械も使わず、使うのは手だけ。熟練の職人は自由自在に麺の太さを変えていました。これがビャンビャン職人のワザなのか…! と西安の街角で感動した覚えがあります。

 何が言いたいかというと、肝心なのは「ビャンビャン麺」の漢字が難しいということではなく、“手延べこそが命”という点なのです。

手打ちのビャンビャン麺

 以上を踏まえると、カップ麺で手延べのビャンビャン麺など再現できるわけがない――このサンヨー食品のカップ麺を初めて見たとき、そう確信したのです。なのに、このカップ麺は「ビャンビャン麺風」と謳っています。別に絶対に手延べの本格的なビャンビャン麺じゃないと許さない! と原理主義者を気取りたいわけではなく、ただ何となく「これは食べてガッカリするパターンなんじゃないかな…」と感じたのです。

 とはいえ、食べもしないで決めつけるのはライターとして最悪です。「まぁ、どんなものか試してみるか」とカゴに入れて買って帰宅。ところが実際に食べてみると、予想は大きく裏切られました。むしろそれ以来、何度もリピート買いを繰り返している始末。そんなわけで、このカップ麺がいかに予断を裏切る商品だったのか、ご紹介していきましょう。

「ビャンビャン麺風」のカップ麺を実食

フタを取ると、かやく、後入れの特製スープ、調味ダレが入っていました

 麺はノンフライの乾麺。スープとタレを取り出して、かやくを麺の上にのせたら熱湯を注いで4分待ち、湯切り口から湯を捨てます。その状態がこちら。乾麺がお湯を吸ってかなり太くなりました。麺を計測すると約1cm。確かに、一般的なカップ麺の麺よりはるかに幅広です。

湯切り後、かなり麺が太くなっています

 そしてここに後入れの特製スープとタレを入れて、よくかき混ぜて出来上がりです。手延べでもないのにずいぶん本格的なビジュアルじゃないか…とこのあたりから期待感が膨らみ始めます。

スープやタレで、ほんのり赤くなりました

 いざ食べてみると、本場のビャンビャン麺のようなもっちり感や小麦の旨みはあまり感じられないものの、しかし思ったのは「これはこれで食べやすく、しかもコレ、美味しいんじゃないか?」ということ。その理由はまさに味付けの妙。実はこのビャンビャンカップ麺、中国産の花椒、中国産の唐辛子の刺激的な香り、辛味とシビれがきちんとあり、さらに黒酢の酸味やネギ油&醤油の香ばしいコクがあります。つまり“手延べ”以外の要素はめちゃくちゃ本格的だったのです。

麺の幅は直径1cmほどありました(食楽web)

 そして最初はイマイチかな? と思った麺も、幅広なのでタレがしっかり麺に絡みついて味を吸収し、これはこれできちんと考えて作られていることが判明。ここに至っては、もはや手延べとかどうでもいいや、とズルズル食べるのが楽しくなってきます。

 そういえば西安で食べるビャンビャン麺も、ネギ油と花椒、唐辛子、黒酢、醤油といった味付けで食べることが多く、この配合具合こそが料理人の腕の見せどころ。このカップ麺の特製スープや特製ダレには、本場のビャンビャン麺の味わいが生きている気がするのです。

 というわけで、この「ビャンビャン麺風」カップ麺。筆者はかなり気に入ってしまい、なんと最初に買ってから、すでに4個食べました。そしてまたストックする予定です。まだ未経験の人はぜひお試しください。たぶん、想像の5倍は本格的で美味しいですよ。

(撮影・文◎土原亜子)