2022年4月に続き、10月からさらに【フラット35】が改正されます。【フラット35】S(ZEH)がはじまり、住宅の性能や長く住むための配慮等に応じたポイントの合計により、【フラット35】の金利引下げ方法が変わります。改正のポイントとメリット、デメリットについて解説します。

これまでの制度に比べてつまりどういう改正?

4月の改正では【フラット35】維持保全型が始まり、長く住み続けるための品質を保持できる住宅や、自治体と連携して子育て世帯を支援する【フラット35】地域連携型(子育て支援)で金利引き下げ期間が拡大しました。10月の申込受付分からは、【フラット35】S(ZEH)が始まり、【フラット35】からの金利引き下げ方法は、省エネなどの住宅性能、管理・修繕、エリアに応じたポイントの合計から決まる制度に変わります。ほかにも【フラット35】Sの基準が見直されるなど、大幅な改正となります。

【フラット35】S(ZEH)とは?

ZEH(ゼッチ)とは、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量をおおむねゼロとする住宅のことです。断熱性や気密性が高い住宅で省エネを実現する一方で、太陽光発電等でエネルギーをつくり、年間のエネルギー消費量の収支がおおむねゼロとなることを目指します。地球温暖化防止の観点から、政府は2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指しています。

こうした背景から10月以降【フラット35】S(ZEH)が新設され、下表の条件に当てはまる住宅について、当初5年間は0.5%、6年目から10年目までは0.25%【フラット35】の金利が引き下げられます。

住宅金融支援機構制度変更案内チラシより抜粋

金利引き下げの対象となる建物は、戸建て、マンションにかかわらず屋根や壁、床、窓、ドアなど外気と接触する部分の断熱効果が高く、太陽光発電など再生エネルギーを除いた温暖化ガス削減効果が20%以上ある住宅です。

また、寒冷地や多雪地帯、都市部の狭小住宅など一部を除いて、再生エネルギーを含む省エネ基準は、エネルギーの収支がおおむねゼロとなることが求められます。

金利引き下げ方法が性能等に応じたポイント制に

【フラット35】からの金利引下げ方法は、(1)住宅性能、(2)管理・修繕、(3)エリアの区分ごとにポイントが付与され、ポイントの合計に応じて変わる制度となります。金利引き下げの対象となるポイント数は以下の通りです。

出典:住宅金融支援機構制度変更案内チラシ

【フラット35】リノベを選択した場合、上記(2)の管理・修繕のポイントは併用できません。長期優良住宅の認定を受けている場合は(1)と(2)のそれぞれの該当ポイントの合算となります。

ポイント数に応じた金利引き下げは幅及び期間は以下の通りです。

出典:住宅金融支援機構制度変更案内チラシ

たとえば、ZEHと長期優良住宅の両方を満たす戸建ては合計4ポイントとなり、当初10年間0.5%の金利引き下げとなります。

【フラット35】S等の基準見直し

2022年10月以降に設計検査を申請する分から【フラット35】S等の基準が見直されます。

新築住宅、中古住宅とも省エネルギー性の基準が強化されます。中古住宅では【フラット35】S(金利Bプラン)のバリアフリー性の基準が強化され、段差の解消や手すり設置だけでは利用できなくなり、高齢者配慮等級2以上の基準を満たすことが必要になります。逆に中古住宅の【フラット35】S(金利Aプラン)では、耐震性、バリアフリー性、耐久性・可変性について基準が緩和されます。

なお、【フラット35】の借り換え融資を利用する際、長期優良住宅であれば返済期間が延長できるようになります。たとえば借り換え時が当初借入から15年後の場合、現行では「35年-15年」で借り換え後の最長の借入期間は20年となりますが、10月以降に借り換え申込みを行った場合は「50年-15年」で35年となります。借り換えで借入期間が長くなると、毎月の返済額の負担は減りますが、返済が長期間続き、総返済額も多くなりますので、安易な延長は禁物です。

10月改正はどんな人にメリット・デメリットがある?

10月改正でメリットがあるのは、ZEHの基準を満たす家を取得する人です。【フラット35】S(ZEH)の基準を満たした場合、それだけで合計ポイントが3ポイントとなり、【フラット35】からの引き下げ幅は、当初5年間は0.5%、6~10年目は0.25%となります。また、【フラット35】S維持保全型や地域連携型との併用で合計ポイントが4ポイント以上になれば、当初10年間0.5%の金利引き下げとなります。現制度では【フラット35】S(金利Aプラン)の省エネルギー性の基準を満たした場合で、当初10年間0.25%の金利引き下げですので、10月改正で金利引き下げ幅が拡大します。

では、ZEHの対象となる住宅を取得した場合、10月改正前後で具体的にいくらくらい返済額が変わるのでしょう。以下の3つの場合で比較してみます。なお、金利引き下げの基準となる【フラット35】の金利は1.5%とします。

(1)9月までに【フラット35】S(金利Aプラン)を申し込んだ場合
(2)10月以降申し込みで合計ポイントが3ポイントの場合
(3)10月以降申し込みで合計ポイントが4ポイント以上の場合

借り入れの条件

借入額:3,000万円 返済期間:35年 【フラット35】 金利:1.5% 元利均等返済 
ボーナス返済なし

住宅金融支援機構シミュレーターで試算

【フラット35】S(ZEH)を満たす場合は、10月以降に【フラット35】S(ZEH)に申し込んだ方が総返済額が約39万円少なくなります。また、合計ポイント数が4ポイント以上になれば、総返済額は約73万円少なくなります。

逆に10月以降気をつけたいのは、省エネルギー性の基準で【フラット35】Sを、またはバリアフリー性の基準で【フラット35】S(金利Bプラン)の利用を予定している人です。いずれも基準が強化されるので、現制度の基準でクリアしていても利用できなくなる可能性があります。

また、中古住宅の購入と併せて一定のリフォームを行うと利用できる【フラット35】リノベ(金利Bプラン)または、【フラット35】S(金利Bプラン)と【フラット35】地域連携型(地域活性化)を併用する人は、10月改正で返済額が増えます。現制度ではいずれも当初5年間0.5%の金利引き下げに対し、当初10年間0.25%の金利引き下げに変わるためです。

借入額3,000万円、35年返済、もともとの【フラット35】の金利が1.5%だった場合で現制度と改正後の返済額を比べてみましょう。

借り入れの条件

借入額:3,000万円 返済期間:35年 【フラット35】 金利:1.5% 元利均等返済 
ボーナス返済なし

住宅金融支援機構シミュレーターで試算

35年間の総返済額は9月までに申し込んだ方が約5.5万円安くなり、当初毎月返済額は3,540円少なくなります。総返済額の差はそれほど大きくありませんが、購入当初の返済額を抑えたい人は改正前に申し込むメリットがありそうです。

なお、【フラット35】リノベ(金利Bプラン)と【フラット35】地域連携型(地域活性化)を併用した場合の金利引き下げ幅は、10月改正後、当初7年間0.5%引き下げから当初5年間0.5%、6年目以降10年目までは0.25%引き下げになります。こちらは、10月改正後の返済額が少なくなります。

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改正前までに申し込んだ方がよいのか

10月改正以降は、金利引き下げがポイント制でわかりにくくなり、【フラット35】Sの省エネルギー性の基準も厳しくなるため、9月までの基準で申し込みをしたほうがよいと考える人もいるかもしれません。

しかし、制度は複雑になりますが、ポイントが高い住宅は、省エネ性能が高く、電気代やガス代が節約でき、かつ冬は暖かく夏は涼しい快適性で、高齢になってもヒートショックを起こしにくい健康によい家と言えます。適切な維持保全計画を立ててメンテナンスを行えば、将来にわたり長く住み続けることができる家でもあります。

さらに、住宅ローン減税をはじめ減税や補助金等を受けやすい家とも言えるでしょう。【フラット35】で融資を受ける場合も、合計ポイントが3ポイント以上の性能が高い住宅を取得するのであれば、10月改正以降に申し込んだ方が金利引き下げ幅は大きくなり、返済額も少なくなります。

ただし、購入時期は金利引き下げの損得であわてて早めると一番肝心な物件選びで失敗してしまうかもしれません。まずは、家族のライフプランや資金計画とあわせて、家族が何のために家を買いたいのかをよく話し合い、望む家をじっくりと考えて選ぶことが重要です。