【▲ チリのアタカマ砂漠にあるBlackGEM望遠鏡。円を描くのは南の空の星々(Credit: Zdeněk Bardon/ESO)】


この画像のように夜空一面に星々の軌跡が広がる様子は、理科の教科書などで見たことがある人も多いのではないでしょうか。


南アメリカ大陸、チリのアタカマ砂漠にあるラ・シヤ天文台でこの画像は撮影されました。ラ・シヤ天文台は、ヨーロッパの国々が参加する「ESO(ヨーロッパ南天天文台)」が作った天文台で、標高が約2400メートルの場所にあります。それぞれの星が弧を描くように見えるのは、地球が自転しているためです。


星を撮影するときは星の光を集めるためにカメラのシャッターをしばらく開けたままにすることがあります。その時間(露光時間)を長くすると、それぞれの星の位置が地球の自転により変わっていくため、カメラが星の光を受ける場所も少しずつ変わっていきます。それが、星の光の軌跡を描き出すのです。教科書などでは北の空の星が天の北極を中心に円を描きますが、ここでは天の南極を中心に回っているように見えます。画像の左側には、紫色でぼやけたようになっていますが「イータカリーナ星雲」が写っています。また、画像の上と右には大マゼラン雲、小マゼラン雲という銀河も見えています(こちらも青くぼやっとして見えています)。


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地上にある設備に目を移してみると、画像の中央付近には「BlackGEM」と呼ばれる望遠鏡のうち2台が見えています。BlackGEMはオランダの大学などにより設置・運用されている望遠鏡群で、右側にあるのは撮影時に建設中だった3台目です。最終的には15台を設置し、夜空の別々の場所を観測したり、連動して1つの望遠鏡のように動いたりすることができるようになる予定です。BlackGEMは、「LIGO」や「Virgo」といった重力波を観測する望遠鏡(観測装置)と一緒に観測を行うことを計画しています。重力波はブラックホールや中性子星の合体といった、宇宙の大イベントで発生します。LIGOやVirgoが重力波を検出すると、BlackGEMがそれに続いて空を広く観測し、こうしたイベントによって発生した可視光を探そうとしています。また、ESOの「VLT(Very Large Telescope:超大型望遠鏡)」がさらにBlackGEMに続いて観測を行います。複数の方法で観測を行うことによって、宇宙の一大イベントをより深く理解しようという計画です。


BlackGEMのWebサイトには黒いダイヤの絵があります。今は見つけることができていない光を宇宙の暗闇に潜む「宝石」になぞらえて、またブラックホールの黒もイメージしているのかもしれません。


 


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Image Credit: Zdeněk Bardon/ESOESO - Searching for Gems

文/北越康敬