【▲NASAの太陽観測衛星SDOが3種類の紫外線で撮影した太陽と、太陽面を通過する金星(Credit: NASA/SDO & the AIA, EVE, and HMI teams; Digital Composition: Peter L. Dove)】


冒頭の画像は2022年3月6日付けのAPOD(Astronomy Picture of the Day)で紹介された太陽です。NASAの太陽観測衛星「ソーラー・ダイナミクス・オブザーバトリー」(Solar Dynamics Observatory: SDO)が3種類の紫外線で撮影しました。「コロナホール」なども写っていて、太陽の活動が神秘的な色合いで表現されています。


しかし、この画像は最近のものではなく、今から10年前の2012年6月に撮影されました。実は2012年6月5日〜6日に金星による「日食」が発生していたのです。


画面左上の小さな黒い円盤がその金星。ふつうは月が太陽を覆い隠す現象を日食と呼びます。しかし、金星は月の4倍ほどの大きさ(直径)であるにもかかわらず、距離の関係で、地球から見た大きさ「視直径」が月に比べてはるかに小さいため、金星が太陽の上を通過していくように見えます。そのため、金星による「日食」は通常「太陽面通過」や「日面通過」と呼ばれています。



こちらの動画は、2012年6月11日付けのAPODで紹介された、その時の動画です。同じく太陽観測衛星SDOが紫外線や可視光で撮影したものを合成してあります。



さらに、こちらの動画は、国立天文台の岡山天体物理観測所65cmクーデ型太陽望遠鏡で撮影された、同じ金星の「太陽面通過」の全過程です。「太陽投影板に映した太陽像を、30秒間隔でインターバル撮影して動画」にしたとのこと。なお、岡山天体物理観測所は2018年3月31日をもって、国立天文台のプロジェクトとしての役割を終了しています。



金星の太陽面通過は非常にまれな現象です。2012年の前は2004年に発生しましたが、次回の発生は2117年とのこと。今年生まれた赤ちゃんでも100歳近くまで生きていないと見ることができません。


 


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Source


Video Credit: NASA Goddard、国立天文台Image Credit: NASA/SDO & the AIA, EVE, and HMI teams; Digital Composition: Peter L. DoveAPOD - Venus and the Triply Ultraviolet Sun

文/吉田哲郎