キッチンにはL型やアイランド型、対面式などさまざまなタイプがあります。そしてタイプによって収納や動線が大きく変わり、どのタイプが使い勝手がいいのかは人それぞれ。これまでにさまざまなタイプのキッチンを使ってみたという、住宅収納スペシャリストの藤野ことさん。今回はとくに、コの字型キッチンの使い勝手について、実体験を語ります。

 

3タイプのキッチンを使ってみて感じること

筆者が一戸建てに住んでいたときはL型キッチンでしたが、現在住んでいるマンションは、コの字型キッチンです。かつては壁づけキッチンを使っていたこともあります。

単純にコの字型といっても、対面タイプと独立タイプの2種類があり、わが家は独立タイプ。調理したものをカウンター越しに運ぶことができないので、ダイニングテーブルまで何度も往復するのが面倒だなと感じることがあります。

以前使っていたL型キッチンは対面式のカウンタータイプ。料理をカウンターに置けば、家族がテーブルに並べてくれてラクでした。また、壁づけキッチンの場合は振り向けばダイニングテーブルがあったため、動線が短く、とくに不便は感じなかったです。

 

コの字型キッチンのメリット

今のマンションに引っ越してからコの字型キッチンを使って15年ほど。日々、感じているメリットを紹介します。

 

●動線が短い

作業スペースのまわりに、冷蔵庫やシンク・コンロがあるため、非常に動線がスムーズ。一歩動くだけでほとんどの工程をこなせるので、料理の効率が格段にアップしました。

たとえば、食洗機の動線を考えてみると、以下のような流れに:

・食洗機の横にあるシンク下から、洗剤を取り出して入れる
・乾燥が終わった食器は、背面にあるつり戸棚に振り向いて収納
・ザルやボウルなどの調理道具は、シンク上のつり戸棚に入れる

このように、ほとんど歩くことなく食洗機まわりで作業が完結してしまいます。

 

●つり戸棚が多く収納スペースがたっぷりある

コの字になっているうえに独立タイプのキッチンなので、冷蔵庫とコンロ上のスペース以外は、すべてつり戸棚が設置できます。おかげで収納力は抜群です。

 

冷蔵庫横のつり戸棚はすべて食器を収納しています。そのため、わが家に食器棚はありません。ダイニングにキッチン関連の収納棚は必要なく、キッチンで使うものはすべてキッチン内に収まっています。

 

●ベビーゲートの設置が簡単

子どもがまだ小さい家庭の場合、危険が多いキッチンには子どもに出入りしてほしくないもの。コの字型キッチンの場合は、ベビーゲートの設置がしやすく、通り道を簡単にふさげます。

 

●料理に集中しやすい

対面式のL型キッチンを使っていたときは、テレビや子どもを見ながら料理ができて便利でした。そのぶん、周りが気になって料理に集中できないという一面も。

コの字型キッチンになってからは壁に向かっての作業になったため、料理に集中しやすいと感じています。これは壁づけキッチンを使っていた頃も同じです。

コの字型キッチンのデメリット

メリットが多い一方で、もちろんデメリットもあります。どのようなデメリットがあるのかを紹介します。

●コーナーの収納が使いにくい

とにかくコーナー部分の収納が不便です。つり戸棚は、手前の扉を開かないと奥の扉が開けない仕組みになっており、ものの出し入れがしにくい状況。ですから、使用頻度の低い食器を収納しています。

扉をはずして、オープン棚にしてもいいかなと考え中です。

 

下段は回転式のコーナーラックが設置されています。ですが、やはり奥の調理器具は出し入れしにくく、使用頻度の低いものしか収納できません。

全体的に収納力のあるキッチンなので困っていませんが、コーナー部分は動線的には便利な位置であっても、収納は使いにくいと認識しておいたほうがいいでしょう。

 

●キッチン家電の配置が難しい

作業スペースが広いため、キッチン家電の配置は自由度が高いです。ただし、配線の位置によっては難しいことも。

とくに電子レンジの位置は正解が見つからず、すでに3度も配置替えしています。コーナーに置くと、扉を開けるスペースの分、作業台が使えなくなるので、とても不便。

コーナー部分は奥行きが深くなるので、小さめのキッチン家電を置くと手が届きにくくなります。そうなるとコーナー手前に置くことになり、奥にデッドスペースができてしまううえ、作業スペースも狭くなってしまいます。

 

キッチンのタイプ選びは、生活動線をイメージして

これまで3つのタイプのキッチンを使ってきましたが、どれも一長一短。メリットもデメリットもあります。個人的には、今のコの字型キッチンが、もっとも使いやすいと感じています。

どのタイプを選ぶかは、自分と家族のキッチンでの動線をイメージしてみてから決めるのがおすすめです。簡単にリフォームできないだけに、「あこがれだから」「はやっているから」という理由で選ばず、後悔のないタイプを選びたいですね。