夫の年収3500万円専業主婦...働きたい理由「自分磨き」は贅沢? 「ぐうたら生活むなしい」で大炎上! 専門家に聞いた(1)
夫の年収が3500万円の40代の専業主婦の悩み。
――ぐうたら生活で、頭の回転が悪くなってきたので「自分磨き」のために働きたい。
そんな投稿が大炎上している。女性には子どもはなく、結婚後は一度も働いたことがないらしい。仕事を探すにはどうしたらよいか、というのだ。
「お金があるのだから、寄付かボランティアでもやれば」と冷ややかに突き放す意見が大半だが、「働いて自己実現したい気持ちはわかる」という共感の声も寄せられている。専門家に聞いた。
「ふとこのままでいいのか不安に」
話題になっている投稿は女性向けサイト「発言小町」(2022年1月15日付)に載った「専業主婦、このままでいいのか」というタイトルの投稿だ。
投稿者は40代女性で、子どもはいない。ざっと紹介するとこんな内容だ。
「夫の要望で結婚してから20年ほど専業主婦をしております。子供はおりません。結婚当初は働きたい意欲があったのですが、ここ数年はもうぐうたら生活です。この期間でだいぶ頭の回転が悪くなった気がします。自信もなくなり、友達と会いたい気持ちも薄れてしまいました。夫(40代会社員)の年収は3500万円程度で生活に不満はなく(中略)心は平和です。夫は十分に愛してくれ、お金をかけてくれますが、ふとこのままでよいのかと不安になります」
そして、専業主婦の自分自身には何もないのに「高所得者の妻」という変な自信があり、そんな自分が嫌になる。夫の周りの奧さんたちは、子どもがいれば専業主婦だが、子どもがいない場合はバリバリ働いている人が多いらしい。そして、
「自分を磨き、本当の意味で自分に自信が持てるようになったら、夫を説得し、また働きたい。再就職のためにどんなことから始めたらよいのでしょうか」
と、悩みを訴えるのだった。
ちなみに、結婚前はMR(医薬情報担当者)の仕事をしており、薬剤師の資格がある。帰国子女だったため英語が得意。ほかに、JavaやJavaScript(コンピューター言語)、簿記2級、FP(ファイナンシャル・プランニング)2級の資格も持っているという。
もっとも、問題は夫の考え方だ。
妻が働くことに断固反対しており、ふだんは優しく怒ることもない。しかし、こと仕事の話題を持ち出すと、「心配だから(ダメ)、以上!」と話を打ち切ってしまうのだ。
「お金が余っているのだから、寄付で自己実現してはいかが」
この投稿には「お金持ちの専業主婦のわがままな自分磨き」「仕事探しより、寄付やボランティアをしては」といった冷ややかな反応が多かった。
「お金は余っているのでしょうから、寄付がいいのではないかと思います。やりがいがあるかどうかは分かりませんが、職歴のない方が経済的な目的もなく働くよりも、旦那様の稼ぎを流用したほうがすぐに効果が出ますので」
「経済的に余裕があるあなたが就活したら、本当に生活に困窮している人の雇用を奪ってしまう恐れがあります」「自分磨きならば就職ではなく、ボランティアをしませんか。きっとあなたの特技や時間が活かせるものがありますよ」
転職支援の仕事をしているという人からこんなキツイ指摘もあった。
「いわゆる転職エージェントを仕事としています。たまに(こうした)相談を受けることがありますが...ハッキリ言って難しいですね」「結局、高所得の夫がステイタスなので、仮に就職しても上司に対して『夫より稼いでないくせに、偉そうに指図しやがって』とか思っちゃうんですよね」「『自分を磨き、本当の意味で自分に自信が持てるようになったら』。このフレーズもクセもので、結局なんの経験も実績もないのに花形の仕事しかしたくない。雑用や下働きなんて私の仕事じゃない、もっとドラマみたいにキラキラ働きたい、って感じで怒って退職してしまいます」
「私はあなたの年齢で海外留学して修士号を取りましたよ」
一方では、エールとして「一歩踏み出すためには、夫から自立すべきだ」という指摘も多かった。
「『50前に新しいことに挑戦したい』と思う時期だと思います。『変な』自信なんて思わなくてよいと思います」「ただ気になったのは『夫の要望』で専業主婦。『夫を説得し』また働きたいというところ。お子さんもいなくて自由な時間も経済的な余裕もあるのに、ご主人の許可いりますか?」
ほかに、投稿者と同年代の女性から「私も同じ気持ちだ」という共感の声や、「大学で勉強することをおススメします」という親身のアドバイスも寄せられた。
「同じく40代女性の専業主婦です。旦那の収入はご主人には遠く及ばずですが、それでも生活していくには十分な金額をいただいています。私もいつも、このままでいいのか、と思っています」「私は学校に行って資格を取得しようかと考えています。本当に続くか、勉強についていけるか、とか色々気にはなってしまうのですけどね」「どうせなら自分に誇れる生き方をしたいなと思います」
「もう一度大学に戻ったっていいじゃないですか。やってみないうちに不安ばかり想定していては時間がもったいないですよ。私はね、あなたの年齢で海外留学して修士号を取りましたよ。後先考えずに飛び込みました。そのおかげで今の仕事をしております」
「まずは大学に行かれてはどうですか。勉強してMBA(経営学修士)をとって、その過程でやりたい仕事などの将来像が具体的に見えてくると思います。人脈もできますよね。どんな仕事に就くかはお楽しみでいいじゃないですか」
20代主婦でも働く理由が「社会と関わりたい」人は多い
J‐CASTニュース会社ウォッチ編集部では、今回の「夫の年収3500万円の専業主婦」の投稿をめぐる「『自分磨き』の仕事はぜいたくですか?」という論争について、女性の働き方に詳しいワークスタイル研究家の川上敬太郎さんに話を聞いた。
――この投稿と多くの回答を読み、率直にどのような感想を持ちましたか。
川上敬太郎さん「投稿者さんは真剣に悩んでいらっしゃると感じました。しかし、生きるために日々精一杯働いている人から見ると、一般家庭よりはるかに多い世帯収入を得て、自ら『ぐうたら生活』と言うほど恵まれた環境にある投稿者さんの考えは、『甘い!』と映ってしまうのかもしれません」
――今回の論争の背景には、専業主婦の「生きがい」、あるいは「仕事を始める時のスキル」「心構え」といった問題があると思います。川上さんが研究顧問をされている、働く女性の実態を調べている『しゅふJOB総研』で、そうした問題について調査したことがありますか。
川上さん「仕事と家庭の両立を希望する主婦層に、働く理由を尋ねたことがあります。その結果、主婦が働く動機は、年代ごとに傾向が異なることが見えました。◆主婦が働く理由ランキング20代、30代では『子供の教育費のため』が最も多くなっていますが、50代では『社会と関わり視野を広げたいため』がトップです。理由として、子育てが始まる頃には教育費の心配が頭をもたげるものの、子育てが終わる年代になるにつれ、自分自身の中にあるこの思いを優先できるようになるからでしょう。ただし、この『社会と関わり視野を広げたい』と回答している人は、20代であっても5割に及びますし、30代、40代では6割を超えます。また、投稿者さんと同じ40代の人は『自己実現、自己成長のため』と回答している人が5割近くに達します。これは、まさに『自分磨き』ということでもあります。このように、個々の人が働く動機は、人それぞれ異なるのです。それは主婦層にも当てはまることを、人生のパートナーである夫はよく認識しておく必要があります」
このあとも、川上さんのアドバイスは白熱します――。<夫の年収3500万円専業主婦の働く理由「自分磨き」は贅沢? 「ぐうたら生活むなしい」で大炎上! 専門家に聞いた(2)>に続きます。
(福田和郎)