網で余分な脂を落とすのが「羊焼肉」のならわし | 食楽web

 こんにちは。日本への羊肉の普及を目的に日夜活動している団体・羊齧協会の菊池です。

 2021年はコロナ禍にもかかわらず多くの羊のお店がオープン。ジンギスカンやエスニックに限らず、珍しい羊肉専門店が増えた年でした。今年はこの流れがさらに加速するとみており、2022年も羊のお店から目が離せません。今回は筆者がとりわけ注目している新しい羊料理のジャンル「羊焼肉」をご紹介しましょう。

いま注目の「羊焼肉」とは?

一般的なジンギスカンは羊の脂の旨味を活かすのが普通だが…

 ジンギスカンといえば、ジンギスカン鍋を使って羊肉から染み出す脂を使って野菜も美味しくいただく料理。それに対し、羊焼肉は網焼きにすることが多く、滴る脂は使いません。羊肉は好きだけどジンギスカンは脂っぽい…と感じている人にこそ食べてほしいのが「羊焼肉」です。

 とはいえ、実は“羊焼肉”とは謳っていなくても、ジンギスカンのお店で羊肉を網焼きで楽しめる店は多々あります。例えば『ラム焼肉専門店らむね』(新宿三丁目)、『羊の新町や』(門前仲町)。『羊肉酒場 悟大』(大手町・新宿ほか)など。日本では次の2種類のジンギスカンが混在しているため、「羊焼肉」がジャンルとしてきっちり確立されていないのが現状。ジンギスカンと羊焼肉の境界線はかなり曖昧なんです。

・羊料理(特に羊肉炒め)全般をジンギスカンと呼ぶパターン
・ジンギスカン鍋で調理するものをジンギスカンと呼ぶパターン(この場合、豚や鶏のジンギスカンもある)

 そこで筆者は最近、ジンギスカン=ジンギスカン鍋で羊肉を焼く料理、羊焼肉=焼肉の設備で羊肉を焼く料理、と自分の中で再定義するようにしています。

 前置きが長くなりましたが、2021年11月に東京・新橋にオープンした『羊肉焼肉 白金羊(プラチナラム)』は、まさに焼肉の設備で焼く「羊焼肉」が堪能できる注目の店。その魅力をご紹介していきましょう。

楽しみ方は無限大!『羊肉焼肉 白金羊』の楽しみ方

「ラム肉2か国食べ比べセット」3400円

『羊肉焼肉 白金羊(プラチナラム)』は、羊焼肉のお店の中でも、特に“味付けの自由さ“がスゴイお店です。

 ご存知のように、一般的な飲食店は、お店ごとの調理方法や味付け、雰囲気を楽しむ場所ですが、例外として鍋料理や焼肉には「自分たちで好きに焼く(煮る)」という自由度が加わります。そしてこの白金羊では、肉が焼き上がったのち、さらに圧倒的な自由が待ち受けているのです。

9種類のタレとスパイスで、無限に増える味の選択肢

 それを可能にするのが「9種類の付けだれ」。塩胡椒も加えると11種類。おろしポン酢、山椒醤油、ニラ花醤、ヨーグルトソース、葱塩タレ、ブレンドスパイス、湖南唐辛子醤、ハーブオイル、特製和風タレという具合。とにかく種類豊富でめまいがしてきそうです。

 これらのタレやスパイスは、『羊肉焼肉 白金羊』の系列店のシェフたちのアドバイスやアイデアから生まれたものもあれば、大人気の中国料理店『味坊』(神田)と共同開発したタレも含まれています。ちなみに後者はニラ花醤、ブレンドスパイス、湖南唐辛子醤ですね。

次はどの味にしようかと頭を悩ます時間もまた楽しい

 羊肉をじゅうじゅう焼きながら、次はどのスパイスで食べようか、と悩む時間が最高なのです。最初は塩だけで食べて、次は湖南発酵唐辛子やブレンドスパイスを楽しんで、味変にさっぱりヨーグルトソース、さらにはおろしポン酢×ニラ花醤で“和中折衷ソース”にしてみようか…という感じで、もうすんごい楽しいんです。

 焼き上がった羊肉をキッチンバサミで切り分けて色々なタレを楽しみ、すべてを楽しみきれないうちにおなかが一杯になる…。そんな幸せな味の実験が心ゆくまで堪能できるけです。

 ちなみにマーケティングの法則として「選択肢を与えすぎると人は選択しなくなる」なんて言われたりもしますが、食べるのが大好きな人間にはその法則は当てはまらないことが、この店でよくわかると思います。

ラムチョップ。原産国により900円~1500円と値段が変わります

 タレの話ばかりしてきましたが、『羊肉焼肉 白金羊』は当然ながら肉の旨さも格別です。日本に流通している羊肉の99.5%は輸入品ですが、このお店では基本的に「オーストラリア」「ニュージーランド」「アイスランド」産の極上の羊肉が用意されています。もちろん肩ロース、ショルダー、チョップと部位もさまざま。どれも何もつけずに食べても旨い!

羊肉は「オーストラリア」「ニュージーランド」「アイスランド」産の極上の肉が味わえます

 ちなみに、個人的ベストのタレの組み合わせは「ヨーグルトソース×ブレンドスパイス」、「おろしポン酢×湖南唐辛子醤」。また、あらかじめ肉にブレンドスパイスをふりかけて焼くのもオススメです。

まとめ

 羊肉をウリにするお店で「肉が旨い」「料理がうまい」は今や当たり前。2022年はプラスアルファでどういう要素を足していくか? が問われる時代に入ってくると思います。そういう意味で「羊焼肉」は今年最注目の羊料理ジャンル。羊好き、焼肉好きの人はぜひ食べてみてください。

●SHOP INFO

店名:『羊肉焼肉 白金羊(プラチナラム)』

住:東京都港区新橋2丁目9-14 三浦ビル 2階
TEL:03-3591-3000
営:17:00~23:00(フード22:00、ドリンク22:30LO)
定休 日・祝(土曜は予約のみ)

●著者プロフィール

菊池一弘
羊齧協会主席。羊肉を常食する岩手県遠野市出身の父の影響で羊料理に親しんで育つ。北京留学中に現地の味に触れ、その魅力に開眼して羊好きの消費者団体「羊齧協会」を結成。監修書籍に「東京ラムストーリー」(実業之日本社)、「家庭で作るおいしい羊肉料理」(講談社)など