Amr Alfiky / Reuters
Amr Alfiky / Reuters

米連邦裁判所が「大炎上男」ことマーティン・シュクレリ氏に対して製薬業界への就業を生涯にわたって禁止し、さらにエイズ患者らに使用される感染症治療薬の価格吊り上げで懐に入れた収益6460万ドル(約74億円)を返還するよう命令しました。

シュクレリ氏は米製薬会社Turing Pharmaceuticals(現Vyera Pharmaceuticals)を所有していた2015年に、特許が失効したトキソプラズマ症治療薬”ダラプリム”の製造権を手にしジェネリック薬が生産されないよう手を回した上で、その価格を数十倍にも引き上げたことで、非常に多くの利益を手にしていました。トキソプラズマ症はエイズ患者や新生児など免疫の弱い人に対して致命的になり得る感染症のこと。価格引き上げ当時、あまりの値上げ幅に 米国感染症学会やHIV医学協会から当時大統領候補だったヒラリー・クリントン氏、バーニー・サンダース氏、ドナルド・トランプ氏ら多数から非難の声があがっていました。

その後、シュクレリ氏は2017年にダラプリムの価格つり上げ以前に経営していたヘッジファンドに関連する証券詐欺で7年の実刑判決を受け服役中。さらにウータン・クランの世界に1セットのCDボックスセット「Once Upon a Time in Shaolin」を含む約740万ドルの資産没収処分とされています。

そして今回、連邦取引委員会と7つの州(ニューヨーク、カリフォルニア、イリノイ、ノースカロライナ、オハイオ、ペンシルバニア、バージニア)が新たに起こした訴訟では連邦地裁判事が、シュクレリ氏がダラプリムの独占的利益を守るために反競争的行為におよんだと認定し、今後生涯にわたって製薬業界への就業を禁止する判決を言い渡しました。さらに、シュクレリ氏がTuringにおける違法行為の首謀者だったと認定し、6460万ドルの不正利得を返還することが「司法の利益に適う」ものだとしています。

この判決を受けてニューヨークの司法長官レティシア・ジェームズ氏はウータン・クランの曲の一節を引用し「『羨望、貪欲、欲望、憎悪(Envy, greed, lust, and hate)』は、単に『引き離す(separate)』だけでなく、シュクレリ氏とそのパートナーらが、米国人の命がかかる救命薬の価格を不正につり上げる動機になった」「しかし、もう彼は製薬会社にはいない。米国人は安心して良い。金持ちや権力者であっても身勝手なルールで行動することはできない。彼の周囲でも現金がすべてを支配しているわけではない」とコメントしました。

なお、元TuringことVyera社とその親会社Phoenixusは先月、シュクレリ氏が吊り上げたダラプリム価格を支払わされた被害者らが起こした訴訟に最大合計4000万ドルを支払うことで和解合意に達しました。この和解案には、Vyera社が今後10年にわたってダラプリムを競合他社に原価で提供することを義務づけ、またシュクレリ氏の行動をサポートしていた人物にも7年間の製薬業界からの追放が含まれています。

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Source:New York State Attoney General