日本酒のプロが厳選! 2022年の正月三が日にじっくり飲みたい日本酒5選
食楽web
明日からいよいよ2022年。普段はビールやワインを飲んでいる人も、正月の三が日には日本酒をじっくり飲んでみよう、と思う人も多いのでは? おせちやオードブルを囲みながら、家族や親戚と日本酒を酌み交わすのは至極のひととき。
そこで今回は、全国100種類以上の日本酒が試飲できる日本酒専門店『名酒センター』の取締役で、全国各地の日本酒に造詣が深い今正光(こん・まさみつ)さんに、新年を新たな気持ちで迎えるにふさわしい最高の日本酒を紹介してもらいました。三が日に飲みたい日本酒がまだ決まっていない人、必見ですよ!
2022年にプロが推す日本酒はコレだ!
日本酒専門店『名酒センター』の取締役で、全国各地の日本酒に精通する今正光(こん・まさみつ)さん
オススメの日本酒をご紹介する前に、まずは今さんに、2021年の日本酒シーンを振り返ってもらいました。
「2021年も、コロナ禍の影響で、酒屋も酒蔵も振り回された1年だったと思います。酒蔵が酒造計画を立てる時に減産していることも事実。ですがその一方、減産して空いた時間を使って、新たな味わいやブランド振興にチャレンジする酒蔵も増えています。例えばこれまで敬遠されていた、酸味が強い日本酒が見直されています。新しい麹菌や酵母を使い、時間をかけて今の日本人の口にマッチするよう各酒蔵さんたちが努力されているんですね。飲み手としても“こんなの作ったんだ!”と驚かされることも多い。日本酒シーンも、新時代に突入したことを実感しています」(今さん)
今回、今さんがセレクトしてくれた日本酒のタイプは大きく分けて2つ。(1)これまでの伝統に縛られない新しい日本酒、(2)これからも守りたい歴史のある日本酒。というわけで、さっそく逸品をご紹介していきましょう。
日本唯一の中国人杜氏が造るおせちに合う濃醇な一本
「純米酒 福」(金箔入りバージョン)|愛知・福井酒造
まずご紹介するのは、愛知県豊橋市にある『福井酒造』の「四海王」というブランドの「純米酒 福」。通年販売されていますが、年末年始限定で金箔入りバージョンが登場します。穀物のようなホクホク感+後から酸味がじわ~っとくる濃醇な味わいの純米酒。
さらに、こちらの杜氏さんは日本で唯一の中国出身の杜氏さん。日本人より日本人らしい、とても真面目な方で、日本酒ファンの間ではスゴい日本酒を造る人、として有名です。
「食べ物は、甘みや塩味のあるおせち料理やお雑煮などに合わせると良いと思います。燗にするにも最適で、温度をあまり気にせずどの温度帯で飲んでも美味しくいただけますよ」(今さん)
穏やかな吟醸香と上品な味わいが食中酒に最適
「田むら 純米大吟醸 山田錦」|東京・田村酒造場
こちらは東京都福生市にある『田村酒造場』の「田むら 純米大吟醸 山田錦」。元々、『田村酒造場』は、「嘉泉(かせん)」という銘柄が有名ですが、10年ほど前に誕生したのがこちら。初めて蔵の名を冠した特約店限定の日本酒です。
同ブランドの中でも上位にランクする純米大吟醸で、透明感のあるほのかに香る白い小さな花のような上品な香りが特徴です。淡麗寄りで、花の蜜のような気品のある甘さがすっと広がりすっと消えていくような味わい。加えて、奥のほうでほんのり苦味を感じられる爽やかさと、キレを感じさせる緻密な設計の日本酒です。
「料理は、鯛などの淡白な白身魚のお刺身や、魚を使ったお吸い物、ハマグリの酒蒸しなんかに合うと思います。それと、年越し蕎麦にもマッチするはずです。軽く冷やして飲むのがオススメです」(今さん)
アツアツの鍋と合わせたい力強く繊細な辛口酒
「八海山搾りたて原酒 越後で候」|新潟・八海醸造
「八海山」で有名な新潟県南魚沼市の『八海醸造』が10月~3月ぐらいまで販売している特約店限定・季節限定の日本酒「八海山搾りたて原酒 越後で候」。あまりスーパーには並ばない希少な逸品で、こちらの青ラベルの他に赤いラベルの純米大吟醸もあります。別名“青越後”とも呼ばれ、出荷後に酒屋に並び出すと、日本酒好きは「冬が来たな!」と感じるはず。まさに冬の代名詞的な人気を誇る日本酒です。
特徴は、搾りたてらしいフレッシュなスイカの皮のような青い香りと、ワイルドな味わいが同居している点。原酒らしくアルコールが19%もあり、トロッとしたアルコール感と、荒々しい辛味が口内に広がり、飲み込んだ後も口の中にビリビリと余韻が広がります。高アルコールゆえの辛さと「八海山」の端麗な造りが合わさったしっかり&ガッツリくる辛口です。
「他の『八海山』より複雑で荒めな味わいなので、普段から「八海山」を飲んでいる人も新鮮に楽しめるはず。キンキンに冷やして、熱々の鍋料理と合わせるのがオススメ。カニすきや寄せ鍋、ふぐちり、鶏の水炊きなんかに、ピタリとハマると思います」(今さん)
寝正月のお供にも最適! トロピカルな香りの甘口
「純米大吟醸 夢の中まで」|宮崎・千徳酒造
宮崎県の『千徳酒造』が造っている純米大吟醸「純米大吟醸 夢の中まで」。『千徳酒造』は、どのお酒も南国のようなトロピカルな香りやジューシーさを感じるお酒が多く、こちらも完熟のパインやマンゴーを思わせるトロピカルな香りが特徴の日本酒です。
香りの印象から甘すぎるかと思いきや、さにあらず。氷砂糖のようなさらりとしたくどくない甘さが広がり、喉越しも爽やか&なめらか。冷酒で飲んでも美味しいですが、ぬる燗にするとトロピカルな香りがふわ~っと広がり、さらに飲みやすくなります。
「おせちの定番である黒豆や栗きんとんなど、甘い料理と相性が良いです。それに、『夢の中まで』という名前がいいでしょう。これを飲んで寝正月を楽しもうと思っている人にぴったりだなと思って選びました」(今さん)
老舗酒蔵がチャレンジした新時代の日本酒
「【九尾】 純米大吟醸 無濾過生原酒 四割八分磨き」|栃木・天鷹酒造
最後にご紹介するのは、栃木県の『天鷹酒造』が2021年12月に通年品として初めてリリースした「【九尾】 純米大吟醸 無濾過生原酒 四割八分磨き」。天鷹酒造ではこれまで「天鷹」というブランド一本でやってきたのですが、2~3年前から「【九尾】」という新ブランドを立ち上げています。
“「天鷹」は辛口じゃなければ酒じゃない”と代々言われ続けた蔵のブランドイメージを一新。新しい時代に合わせ“飲み手も造り手もワクワクする”ような、変幻自在なお酒を目指して生まれたのが「【九尾】」です。これまで、年に4~5回、手を変え品を変え数量限定でリリースしてきた中から、特に好評だった栃木県のお米、ナスヒカリを使って造られています。若竹や小玉のメロンのような香りを備え、甘味、旨み、苦味、酸味などのバランスが秀逸。生酒らしく、角がなくてまろやか&華やかな日本酒です。
「通年品なので、春夏秋冬の旬のものなら何でも合うと思います。個人的には、春は苦味のある山菜料理、夏は蕎麦屋の天ざるに“冷や”で合わせたいですね。秋はキノコ系の山菜、冬はカキ鍋、アンコウ鍋、石狩鍋、チゲ鍋など味の濃い鍋もの相性も抜群です」(今さん)
2022年の日本酒はどうなる?
最後に2022年の日本酒シーンはどうなるのか、展望を今さんに聞いてみました。
「先にお話したように、何十年も売り続けた人気のブランドでも、新型コロナの影響で数量を減らさざるを得なくなり、一時は非常に厳しい苦境に立たされました。でもこれを逆にチャンスととらえ、新ブランドを立ち上げたり、造り方を見直すなど、新たな試みをスタートした酒蔵も増えています。さらに、代替わりした30代のフレッシュな蔵元も増えていることもあり、2022年はまだ見ぬ“面白い日本酒”が日本酒業界を賑わせてくると思いますよ」(今さん)
なお、今回ご紹介した日本酒に限らず『名酒センター』では、全国から集めた日本酒の試飲、販売、通販(※一部の商品を覗く)を行っています。現地に行けなくても通販で入手可能。特別な日に、普段とはひと味違う一杯が飲みたい! と思っている人はぜひチェックされたし。
●SHOP INFO
店名:名酒センター 御茶ノ水店
住:東京都文京区湯島1-2-12 ライオンズプラザお茶の水1F
TEL:03-5207-2420
営:14:00~22:00、土曜12:00~22:00、日曜、祝日12:00~19:00(フード、ドリンク閉店30分前LO)
休:月曜
https://nihonshu.com/
※価格は全て税抜