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 グルメの街として知られる福岡県。皆さんも旅行や帰省などで訪れたことがあると思いますが、その玄関口である福岡空港のお土産売り場は明太子か、明太子味の何かか、博多あまおう味のものばかり。正直行って、明太子かあまおうか、って二極化状態です。

 なおかつ、売り場の人に聞いたら、「福岡空港では10数社の明太子を販売していますからねぇ」。と言われて衝撃。明太子メーカーってそんなにあるの? となると、たまたま出張や旅行で福岡空港に来た人には、どの明太子を買えばいいのかわかんないじゃん! と思われることがほとんだと思います。

 そこで、今回は福岡県出身の知人に福岡空港で手に入る、お手頃価格の間違いない「これ買っておけば大丈夫な明太子」5つを教えてもらい食べ比べてみました!

超個人的セレクト・王道5つの明太子はこれ!

今回購入した5つの明太子。(あくまでも超個人的に王道ということで、あそこの明太子がない、いやこっちの方が王道、ということはご容赦ください)

 ということで、改めて福岡県出身者の知人に聞いてみたところ、
「家庭によって推し明太子があるので、食卓に出るのは大体同じ明太子メーカーばかりなんですよ。なので、全種類食べたことあるかと言われると難しいですね。」と福岡県出身者。

 じゃぁ、どう違うの?「“福岡県民は明太子を食べ比べている”とイメージされますが、毎日食べている訳ではないです。話した通り推し明太子以外はあまり食べないです。ただ、贈り物として貰うことも多いので、他社の明太子が食卓に並ぶ時もありますが、その時は、頂き物が多いと思います」と返事が。

 テンション低めの知人に今回の企画を説明。「知っているところでいうとこの5社が有名ですかね?」となんとか、福岡県出身者が王道と思う明太子5つを絞り出してもらい購入。片っぱしから食べ比べることに。ということで、今回購入したのは、福岡ではおなじみの明太子メーカー5種類の、1個1000円台の5種。果たしてどんな違いがあるのか、早速食べ比べです!

一つずつ取り出して並べてみた。左から、稚加榮(ちかえ)、福さ屋、平塚明太子、やまや、かば田

 今回購入の際、『福さ屋』、『かば田』、『やまや』は無着色明太子を。そして『稚加榮(ちかえ)』は「お徳用めんたいこ切子」をセレクト。そして、公平に? いや、より美味しく味わうために、福岡県の中心地、天神にあるスーパーで「福岡県産めし丸元気つくし」1kg、つまり地元産の新米も購入。そして明太子の価格は2021年10月末、福岡空港での販売価格になります。

別添えのタレ付きで香り高い『やまや』の「辛子明太子」

『やまや』の「辛子明太子(無着色)140g 匠のタレ付き」1296円。そういえば街中にも「やまや」の看板、結構みた気がする

 まずは明太子といえば『やまや』。空港内はもちろん、街中でも「やまや」の文字は結構見かけた気がする。

「『やまや』は東京にも『もつ焼きやまや』というお店を展開していて、全国的にも名前が知られている大手明太子メーカーの一つですね。別添えになっている“匠のタレ”が特徴的で、後を引かない辛さに、柚子の爽やかな味が特徴です。福岡育ちの自分にとっては、子供の頃から親しんだ味の一つです。私の家では、お米とも食べてましたが、親がお酒の肴として食べていたことが多かったと思います」。なるほど。お酒との相性が抜群の明太子なんですね。

 箱を開けてみると、別添えでタレが付いていて、さっとかけて味わいます。タレが別添えなので、そのままでも、ちょっとかけてもいい感じ。ツヤ感も増すし。ゆず由来のフレッシュな香りと辛さを感じます。

発酵食品同士だから間違いない!ソフトタイプのチーズに乗せておつまみに

一口サイズのブリーチーズに乗せてみたら、旨み倍増! ワインでも焼酎でもなんでも合う美味しさ

 このフレッシュな感じの辛さと華やかさを生かすならと、ソフトタイプのチーズに乗せたところ、めっちゃめちゃ美味しい! ねっとりしたチーズに明太子のピッとくる辛さと旨み、ちょいかけタレも援護射撃してきます。

 そして、5つの明太子の中で、一番プチプチ感を感じたのが『やまや』の明太子。だからこそねっとり&プチッと感がいいのかも。プチプチ感の強い明太子が食べたいなら、『やまや』をセレクト、ですね。

一般的にイメージする明太子ってこれなのかも。『福さ屋』の「辛子めんたい」

『福さ屋』の「無着色 辛子めんたい」90g 1080円。こっちの箱には「博多名物」の文字が

 続いて『福さ屋』の辛子めんたい、無着色タイプなので、開けるとツヤツヤプルプルのたらこ、といった感じ。

「『福さ屋』は私の勝手なイメージですが、時報ですね(笑)。テレビで21時を知らせるCMを昔から放送しているので、このCMを見るともうこんな時間か~。と少し寂しい気持ちになったのを覚えています。見た目は他の明太子に比べると薄いのですが、結構辛いです。ちなみに私の家の推し明太子がこの『福さ屋』ですね。パンチのある辛さがクセになります。子供の頃は、マヨネーズと混ぜて明太マヨにしてお米の上に乗せたり、野菜にディップして食べていました!」。21時のお知らせ。東京育ちで言うと、スジャータみたいなもの?

ホクホクジャガイモに乗せて明太バター! 何個でもいけそうな気がする!

ジャガイモを十字に切って明太子一切れとバター。小腹を満たす最強おやつ! 2つぐらいぺろっといける気がする

 程よいピリッと感と旨味を楽しむなら、ゴハンはもちろんのこと、じゃがバター&明太子、明太バターが合う! ジャガイモのホクホク感と、熱で溶けるバターに、明太子のピリッと感がいいバランス。ほんのちょっとだけ刺激を感じるメリハリのある美味しさにしてくれます。

 最後の一口の後には手にバターやら明太子やら色々付いたけれど、もぉ、指舐めてもうまい! あっという間に食べ切ってしまいました。ちなみに、ジャガイモを深く切ると、明太子とバターが流れていっちゃうので、十字の切れ目はほどほどに入れるのがオススメです。

5個の中で一番辛味がビシッと来た!『かば田』の「辛子めんたい」

『かば田』の「昆布漬辛子めんたい(無着色)」110g 1080円。昆布漬けなので、昆布の細切れも一緒に入っている

 そして、食べ比べた中で一番辛さがビシッとキリッと来たのが、『かば田』の「昆布漬辛子めんたい」。他の明太子に比べて、ゴハンが1.5倍ぐらい進む。

「『かば田』は福岡市じゃなくて北九州市に本社がある会社です。元々海産物と漬物の店だったこともあり、漬け込むことにこだわりがあるメーカーですね。5社の中では唐辛子の辛さが際立つ味付けですが、昆布を一緒に漬け込むことで、辛さだけじゃない昆布の旨さも感じる奥深さを楽しめる明太子です。店頭では、創業時の名残なのか干物なんかも売っているので子どもの頃は、明太子屋さんではなくお魚屋さんだと思っていました」。

ビシッとくる辛さをダイレクトに堪能するならシンプルに海苔巻きで!

昆布の旨みのポテンシャルがありつつ海苔で包む。じわじわピリッと、パリッとうまいっ!

 この辛さは、ぜ~ったい酒! 地元の焼酎があれば最高だけれど、チューハイとか、サワーとかのアテでちょこっとずつ味わうのがいいっ! ということで、シンプルに海苔巻き。昆布漬けだからノリとも相性抜群だし。ちなみにこのノリ、有明海産焼き海苔。コメもだけれど、ノリも地元産を入手していたので更にいい感じにハマっている気がします。大人の味だ~。

色は一番鮮やかだが、辛味一辺倒ではなく甘さもほのかに感じる「平塚明太子」

福岡県北九州名物 「平塚明太子(中辛)」100g 1080円。空港内の売り場では「中辛」しかなかった気がする

 そして、一番色が鮮やかだから、一番辛いのかも、と思っていた「平塚明太子」。実は『かば田』の方がが辛味がしっかりしていた。

「『平塚明太子』は、本来なら辛さが10段階あって、激辛まで辛さが選べるんですよ。他の明太子メーカーに比べたら登場したのが少し後(昭和46年に発売)なので全国的な認知度は低いかも知れませんが、新しいからこそチャレンジ精神があった明太子だと思います。10辛の明太子は食べたことないですが、7辛(中辛)を子どもの頃、友人の家で食べた時は予想以上の辛さにビックリしたことを覚えています。辛さに抵抗がある人は、5辛ぐらいから始めた方が良いと思いますね」。

いろんなものにかけて食べたくなる旨さ!明太マヨがうっとりするぐらい素敵

明太子とほぼ同量のマヨネーズであえたら、もんのすんごく美味しいディップソースに

 この色の鮮やかさと甘辛い味わいを味わうには、そのままもいいけれど、マヨネーズと混ぜて明太マヨに。マヨネーズと明太子をほぼ同量で混ぜたところ、オレンジ色も綺麗な、贅沢ディップが完成。で、生野菜も合いそうだけれど、ブロッコリーやアスパラ、ジャガイモなど茹で野菜と合わせたら、もぉたまらん! ジャンクフードのような癖になる、あの感覚! 明太マヨというものを、初めて作った人に感謝したくなる美味しさでした。

ちょっとお高めだけのことはある!『稚加榮』の「お徳用 めんたい切子」

「お徳用辛子明太子切子(簡易容器入り)」 100g 1080円。空港内の『稚加榮』の商品で1000円台の明太子、これだけだったんです

 最後は『稚加榮』の明太子。

「『稚加榮』は明太子というより料亭のイメージが強いですね。元々、福岡市内で有名なお店です。なので、明太子にも和食の要素が多く、口に含んだ瞬間に口に広がるダシ感が特徴だと思います。さらに『稚加榮』の明太子は、福岡の人が同じ福岡の人へのお土産に選ぶほど地元でも高価なイメージもあります。我が家でも『稚加榮』の明太子を貰った日は親のテンションがちょっと高かった気がしますね」。

 空港内のショップや販売しているところを色々みたけれど、ここは他の4つのような箱&包装紙の明太子は2000円台からなので、1000円台で買うならお徳用サイズの切子に。

文句なしでオンザライス!一切れでゴハン2杯は余裕でいける

この明太子があれば早起きしてゴハン食べる~。って思える、しみじみするうまさ。さすが料亭生まれ!

 5つの明太子の中でどれがゴハンに一番合うのか選ぼうとしたけれど、それぞれに良さがあって選べない。最初に聞いた、問「明太子どれがうまい?」答「全部」ってのが納得。でもその中で、超個人的ですが、しみじみうまいのが『稚加榮』の明太子。切子一つでお茶碗のゴハン2杯余裕でいける。

 福岡産の今回買ったお米、ねっとり甘いとかじゃなくて、割とすっきりとしたみずみずしさを感じるお米のせいか、明太子の辛さと旨みにものすごく合う。やはり地元のものは地元のものとの相性バッチリなんだなぁ~。ダシ感のある明太子、というのにものすごく納得です。

今回食べ比べのために炊いた「福岡県産 めし丸 元気つくし」。中央にいるのは、福岡県産米キャラクター「めし丸くん」

 福岡名物辛子明太子って言っても、その味は千差万別。いや、本当に、一つとして同じものがない。本当にランキングなんてつけられないって今回の食べ比べにより実感。東京モンが気軽にどれがうまいの~? なんて聞いちゃダメだった。

 ということで結論。明太子は全部旨い。そして福岡県出身者が王道と思う明太子にはハズレなし! 地元の名産品は、地元民に聞いてから買えば、どれも極上の美味しさ、ってことでした。

(取材・文◎いしざわりかこ)