Appleはプライバシー強化のため、ユーザーがアプリによる追跡の許可・拒否を選ぶ「App Tracking Transparency(ATT)」を実装しています。しかし、The Financial Timesは2021年12月8日に「たとえユーザーがアプリによる追跡を拒否していても、サードパーティーはユーザーを『グループ』に分けて行動を追跡したり情報を収集したりすることが可能である」と指摘しました。

Apple reaches quiet truce over iPhone privacy changes

https://www.ft.com/content/69396795-f6e1-4624-95d8-121e4e5d7839

Apple reaches quiet truce over iPhone privacy changes | Ars Technica

https://arstechnica.com/gadgets/2021/12/apple-reaches-quiet-truce-over-iphone-privacy-changes/

Report: iOS Users Who Opt-Out of App Tracking Continue to Be Tracked by Facebook and Snapchat - MacRumors

https://www.macrumors.com/2021/12/08/users-continue-to-be-tracked-by-facebook/?scrolla=5eb6d68b7fedc32c19ef33b4

Appleが2021年4月26日にリリースした「iOS 14.5」で、アプリが広告配信のためにユーザーを追跡する際にはユーザーに許可を求める必要があるというATTが有効になりました。許可を求めるポップアップが表示されると、ほとんどのユーザーは拒否を選択するため、アプリはユーザーの行動を追跡できなくなり、広告パフォーマンスが落ちたとして話題になりました。広告事業をメインとするFacebookは特にATTの影響を強く受けたといわれています。

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しかし、The Financial Timesは「Appleはプライバシーポリシーを緩く解釈できるようにしており、その結果としてFacebookやSnapchatといった企業はユーザー追跡が可能になっている」と指摘しました。これはAppleが開発者に対して「個々のデバイスを識別するためにデバイスからデータを収集してはならない」と示しており、「ユーザーの集団による行動やそのシグナルを観察する」ことは禁じていないため。

Appleは上記の方法を正式に承認していませんが、プライバシーポリシーを緩く解釈した場合、たとえ個々のユーザーが広告の追跡を拒否していても「サードパーティーがユーザーの集団を追跡する」という行為は可能になります。収集されたデータは匿名化され集約された状態なので、個々のユーザーのプロファイルとは結びついていないものの、「FacebookやSnapchatはiPhoneからユーザーレベルのシグナルを収集することができる」とThe Financial Timesは述べています。

実際にSnapchatの開発元であるSnapは投資家に対し、「アプリの追跡を拒否する」ユーザーを含む約3億6000万人分のデータを共有する予定であり、広告主が広告キャンペーンにおいて「より完全なリアルタイムの情報」を得ることができると説明したそうです。また、Facebookのシェリル・サンドバーグCEOも同様に、集約・匿名化されたデータを使用して広告インフラストラクチャを再構築していると発言しています。

匿名化したユーザーをグループに分類し、そのグループの行動を追跡して興味・関心を割り出し、ターゲティング広告を配信するという方法は、Googleが提案して大きな批判を浴びている「FLoC」と基本的に同じです。

Googleが導入予定の「FLoC」は最悪なものだと電子フロンティア財団が指摘 - GIGAZINE



このような追跡は新しい標準となりつつある、とThe Financial Timesは指摘。AppleはThe Financial Timesの記事に対するコメントを控えており、上記の方法を歓迎しているかは定かではありません。また、端末の言語や画面サイズといったユーザー情報がなければ、アプリの体験そのものが低下することがあるため、全てのデータ収集が止められるものではないということは確かです。一方で、ユーザーは収集されたデータが匿名化されているかなど、実際のプライバシー保護が機能しているかを確かめることができず、ブラックボックスの状態になっていることが問題として指摘されています。