若手の芸能人らと記念写真を撮った金正恩氏(朝鮮中央通信)

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首領、将軍、元帥。いずれも北朝鮮の歴代の最高指導者の呼称として使われてきた。通常、「首領」「偉大な首領」と言えば、故金日成主席を指す。ところが、最近それに変化が生じつつある。

わが党と革命の偉大な首領でいらっしゃる敬愛する金正恩同志の卓越した思想と指導があるからこそ、党中央の周りに一つの志と意志で固く団結した千万人民の一心団結があるからこそ、われわれは永遠に屈することのない勝利者として、尊厳を轟かせ、社会主義強国の明るい未来を前倒しすることだろう。

これは、朝鮮労働党機関紙・労働新聞が今月8日の1面に掲載した「鍵となる初年の戦闘の決勝戦は遠からず、必勝の信心高く勇気百倍で前進!」という記事の一部だが、「偉大な首領でいらっしゃる敬愛する金正恩同志」と、金正恩総書記に対して首領という呼称を使用している。

このような呼称の変化について、北朝鮮国民はどう考えているのか。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

最近、朝鮮中央テレビや労働新聞が金正恩氏のことを「革命の首領」「人民の首領」などと呼んでいると伝えた平壌の情報筋は、このような呼び方に市民は首を傾げていると、現地の反応を伝えた。

「まだ40代にもなっていない金正恩氏が、自らを祖父金日成氏と同じ地位に立たせたのは、父親の金正日総書記とはあまりにも異なる姿だ」(情報筋)

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父金日成氏を死後に「永遠なる主席」に推戴して礼を尽くし、自らは国防委員長の座にとどまり、自らのことを「首領」とは呼ばせなかった金正日氏とは異なるというのが、情報筋の見方だ。ちなみに現在では「偉大なる首領様方」という複数形の呼称に、金正日氏を含めることがある。

このような呼称の変化について情報筋は、金正恩氏が総書記の座に就いた、今年1月の労働党第8大会に端を発しているとした。

「党大会が金正恩氏の誕生日に合わせて1月に開催され、すべての行事、会議のときに主席壇の背面中央に掲げられていた金日成氏と金正日氏の肖像画が姿を消し、その場に党のマークが掲げられた」(情報筋)

金正恩氏が今まで金日成氏の痕跡を消し続けてきた理由がようやくわかった」とした情報筋は、「民族も金日成・金正日民族、党も金日成・金正日主義の党、国も金日成・金正日の朝鮮と先代を追慕する姿を見せていたが、急に全ての最高の地位に自分を立たせた金正恩氏の動きには本当に驚き、理解ができない」と述べた。

両江道(リャンガンド)の情報筋も、「金正恩氏が、祖父と父を押さえてその上に上がろうとする姿は本当に衝撃的」だとして、「首領は父・金正日氏ですら使えなかった呼称」だと述べた。

また、金正恩氏は当初、金日成氏、金正日氏を「永遠なる首領」「永遠なる総秘書」と持ち上げて、「金日成・金正日主義」を強調し、先代を尊重する態度を示していたが、わずか数年で首領と総書記という最高の尊称と肩書をすべて手に入れたと説明した。

さらに、金正恩氏のこれらの動きに対して現地の人々は舌打ちをし、彼が「父よりも権力と肩書に対する欲望と野心が強い」と評していると伝えた。

ちなみに、今年4月に「金日成・金正日主義青年同盟」の名称を「社会主義愛国青年同盟」に変更したときにも、全国の人民がざわついたと、当時の雰囲気を伝えた。