若き巨大な星々を囲むスーパーバブル、ハッブルが撮影した大マゼラン雲の輝線星雲

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【▲ 輝線星雲「LHA 120-N 44」(Credit: NASA, ESA, V. Ksoll and D. Gouliermis (Universität Heidelberg), et al.; Processing: Gladys Kober (NASA/Catholic University of America))】


こちらは南天の「かじき座」の方向にある輝線星雲「LHA 120-N 44」(以下「N44」)です。輝線星雲とは、恒星が放射する紫外線が電離させたガスによって輝いている星雲のこと。アメリカ航空宇宙局(NASA)によると、N44は地球からおよそ17万光年離れた「大マゼラン雲」(LMC:Large Magellanic Cloud、大マゼラン銀河)に位置しており、差し渡しおよそ1000光年に渡って広がっています。


特に目を引くのは、画像の中央上寄りにあるぽっかりと開いた穴のような構造ではないでしょうか。これは「スーパーバブル(Superbubble)」と呼ばれる泡状の構造で、約250光年の幅があるといいます。NASAによればスーパーバブルの成因には謎が残されており、その内部にある大質量星の強力な恒星風によってガスが吹き払われたか、かつて存在していた星が起こした超新星爆発によって形成されたことが考えられるといいます。


また、スーパーバブルの右下(時計で表現すれば5時の方向)にはひときわ明るく輝く領域が存在しています。NASAによると、ここはN44のなかでも最も温度が高い部分であり、激しい星形成活動が起きているようです。恒星としては短命な大質量星の誕生と死、そして星の材料となるガスが一体となって描き出したこの光景は、宇宙のダイナミックな一面を象徴しているかのようです。


冒頭の画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡によって撮影されたもので、NASAから2021年11月2日付で公開されています。


 


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Image Credit: NASA, ESA, V. Ksoll and D. Gouliermis (Universität Heidelberg), et al.; Processing: Gladys Kober (NASA/Catholic University of America)
Source: NASA
文/松村武宏