「先代に比べるとなぁ」は乗ってから言え! なぜか酷評されがちだが「じつは凄い」国産スポーツ3選
この記事をまとめると
◼︎新型に対する批評はよく起こることだ
◼︎先代モデルを越えるために開発されているので走りの面で悪いことはほぼない
◼︎不人気扱いされてしまったクルマは中古で狙い目になりやすい
「あんなの全然ダメ」は都市伝説! 悪評は一部の噂だけだった
スポーツカーには思い入れが強く、こだわるオーナーが多い。そのため新しくなったモデルをついつい否定したくなる気持ちが生まれてしまうことも少なくない。
1)ホンダ・シビック タイプR(FK8)
たとえば、FF世界最速を目標に開発されたホンダのシビックタイプR。2021年に生産終了となったFK8、その前モデルとなるFK2とも2リッターターボエンジンを搭載している。それまでのタイプRが持っていた高回転が気持ちいいNA(自然吸気)のVTECエンジンとは対極のキャラクターといえる。ということで、ターボエンジンを搭載したこと自体が批判されることもある。
しかし、ロジカルに考えると、2リッターターボの採用は当然の結論といえる。世界最速を目指すには300馬力級のパワーソースが必要であり、FFで走りを優先するならばフロントの重量を無闇に重くしたくない。つまり大排気量NAエンジンを積むというのはパッケージングの面からしてあり得ないといえるのだ。
そもそも高回転まで回してパワーを絞り出すというアプローチは現代的とはいえない。F1パワーユニットにしても、回転でパワーを稼ぐのではなく、熱交換によってパワーを引き上げるというのが現代の考え方だ。もちろん、ここには燃料量を制限されているというレギュレーションも影響しているが、高回転まで使うことはメカニカルロスが大きくなることでもあり、やはり効率的とは言い難い。
実際、FK8シビックタイプRに乗れば、街なかを3速に入れっぱなしで走れるほどトルクフルでフレキシビリティはあるし、負荷がかかれば過給圧はしっかりと上がるようにターボラグも気になるほどではない。高回転エンジン特有の快音がないという批判については確かにその通りと認めるところだが、ターボはタイプRとして認めないと頑なになるような特性のエンジンではないと思う。
とくに最終型のFK8ではシフトノブを専用に仕立て直すなどしてマニュアルトランスミッションを気持ちよく操作できるようブラッシュアップされている。ターボだからと食わず嫌いにならず、是非ともその走りを味わって欲しい。
大きくなったボディは悪いことどころか良いことばかりなのだ
2)日産スカイラインGT-R(BCNR33)
さて、実際のパフォーマンスよりもコミックなどの影響か、評価を下げている国産スポーツカーといえば思い出すのがBCNR33型スカイラインGT-R(以後、R33)だろう。第二世代GT-Rの次男坊にあたるR33は、BNR32ほどのインパクトもなく、かといって最終型となったBNR34のようなカリスマ性もなく、どことなく地味な存在となっている。
だから叩きやすいのか、「ホイールベースが長くて動きが鈍い」だの「GT-Rとしては失敗作だ」といった批判を浴びやすい。しかし、本当にR33GT-Rは駄作なのだろうか。
結論からいえば、巷で言われているような失敗作ではない。スタイリングの好みは人それぞれなので置いておくとして、シャシー性能自体が大きく劣っているということはないし、むしろホイールベースを伸ばしたことと、そのスタイリングが生み出す空力性能によって高速巡行での安定感でいえば、第二世代GT-R随一といえるほど気持ちよく乗れる。
スペックだけでみるとR32GT-Rより車両重量が増えたことでコーナリングは苦手という印象を持つかもしれないが、電子制御デフや電動四輪操舵の採用によってハンドリング性能は明らかにR32GT-Rを上まわっており、なぜ駄作といわれるのか理解しがたい。実際、GT-R専門ショップのスタッフでもマイカーにはR33GT-Rをあえて選んでいる人も少なからず存在しているほどだ。
3)マツダ・ロードスター(NC)
このR33GT-Rと同じく、ボディが肥大化したことで評価を下げているのがNC型ロードスターだろう。初代(NA型)、2代目(NB型)は1.6〜1.8リッターのライトウェイトスポーツで5ナンバーボディだったが、それがいきなり2リッターエンジンとなり、3ナンバーボディへ成長したことで「ロードスターらしさがなくなった」と言われることも多く、中古車相場もスポーツカーとしては低めで手の届きやすい価格帯となっているようだ。
しかも、RX-8と共通の新設計プラットフォームは、それまでのロードスターとは段違いのボディ剛性を得ている上に、細かく軽量化を積み重ねたことにより。ボディが大きくなったイメージほど車重も増えていない。数十kgの違いでしかないのだ。
ハンドリングについても4ドアスポーツカーRX-8をショートホイールベース化したといえるもので、キビキビと動き過ぎるキライもあるほど。実際に乗ってしまえばまったく鈍いという印象を持つことはないだろう。
なにより、エンジンが素晴らしい。当時のアテンザなどと同じL系エンジンを縦置きにして積んだことで、スタンダードは2リッターだが、チューニング次第では2.5リッターまでの排気量アップも狙えるし、ターボをつけたときの耐久性も悪くないという。
歴代ロードスターでいえば最速を目指せるのがNC型である。思い込みで選択肢から外してしまうのはもったいないポテンシャルを持っている。