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年間5万台のペースで生産されるC8

執筆:Matt Saunders(マット・ソーンダース)翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
第8世代へと一新したシボレー・コルベット。2019年末から生産は始まっていたが、ラインオフするペースはゆっくりだった。2020年に入ると新型コロナウイルスが本格的に流行。一部の業種を除き、順調な1年でなかったことは間違いない。シボレーも。

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だがケンタッキー州ボウリンググリーン工場の生産ラインは、2021年は円滑に稼働している。年間5万台というペースで最新のコルベットが組み立てられている。その大多数は、北米市場にそのまま吸い込まれている。


シボレー・コルベット C8 3LTクーペ(欧州仕様)

スポーツカーとして、驚くべき生産台数だ。今年ポルシェが生産した911と、ジャガーが生産したFタイプを合算しても、追いつかない勢いでコルベットがオーナーへと渡っている。

しかし、スポーツカーというカテゴリーで、シボレーが世界的な尊敬を集めるのに充分なシェアを得たわけではない。ブランド戦略として、重要な意味を持つニッチな市場となってくる。

C8のコルベットが新しいレイアウトを採用し、技術的な進化を遂げたことはご存知だと思う。V8エンジンはミドシップされ、デュアルクラッチATが組み合わされる。アダプティブダンパーを備え、手動調整式のコイルオーバー・サスペンションも付く。

さらに右ハンドル車も用意される。かつてないほど、欧州のライバル勢と接近戦を繰り広げることになる。シボレーというブランドが、対峙するべき相手は多い。

Z51パフォーマンス・キットが標準

ケンタッキー州を旅立ったコルベットは、順調に輸出もスタートしている。サリー州にある英国唯一のコルベット代理店へも、11月には最初の右ハンドル車が届くという。バックオーダーは既に2023年まで抱えているそうだ。

個人的に並行輸入車を手配すれば、より早く運転できる可能性はある。だが正規ルートなら、適切な保障とアフターケアが付いた右ハンドル車を購入できる。日本でも販売は始まっている。


シボレー・コルベット C8 3LTクーペ(欧州仕様)

欧州仕様のC8の場合、シボレーのZ51パフォーマンス・キットが標準装備される。引き締められたサスペンションに強化ブレーキ、ショート化されたファイナルレシオ、エアロキットなどが付く。冷却系もアップグレードされる。

排出ガス規制のユーロ6に準拠させる都合で、アメリカ仕様並みの馬力は得られない。現地では502psを発揮するが、英国仕様では481psとなる。だが標準装備は充実しており、タイヤはグリップの効くミシュラン・パイロットスポーツ4Sが組まれる。

電子制御のリミテッドスリップ・デフも装備される。磁気粘性流体を用いたアダプティブ・ダンパーはオプションだが、試乗車には付いていた。

英国価格は、7万4200ポンド(1127万円)から。大胆なボディをまとう、500馬力近いV8ミドシップの2シーター・スポーツとしては、お手頃な価格設定といえる。

だが、2023年まで英国へ入ってくるぶんは売約済み。契約がこれからの人は、順番が来るのを待つしかない。

コルベットらしい見た目といえるのか

シボレー・コルベットC8を目の当たりにすると、見慣れた要素と見慣れない要素が不思議にブレンドされている。車内に座ると、一層その感覚が強くなる。

ボディの見た目はコルベットらしいというより、フェラーリF430のような雰囲気を感じる。F-22ステルス戦闘機のようでもある。現代のスポーツカーらしいともいえる。


シボレー・コルベット C8 3LTクーペ(欧州仕様)

主要市場となるアメリカは、歴代のコルベットを愛している。批判的な見方をする人も、彼の地なら少ないだろう。でも、コルベットらしいと感じるだろうか。個人的には即答が難しい。

長いボンネットに大きなエンジンを押し込んだ、従来までのFRプロポーションは失われた。コルベット初のミドシップだから、難しい課題だったことは想像できる。

C7のコルベットより、ドライバーズシートは300mmほどクルマの前方にある。シートに腰を下ろすと、前方に伸びていた長いボンネットも、リアアスクルの直前に座ったような感覚も、なくなっていた。

ドライビング・ポジションは従来より良い。座面の高さも、やや下げられている。でも身長の高い人は、頭上空間が少しタイトに感じられるだろう。フロントガラスの上端が、目線のすぐそばに来る。

ドライバーは、コルベットのほぼ中央に座る。実際、典型的なミドシップ・レイアウトらしく、シャシーがドライバーの腰のあたりを軸に旋回するような感覚を備えている。

この続きは後編にて。