突然だが、皆さんは新宿駅(東京都)を利用したことはあるだろうか。

訪れたことがなくとも、巨大なターミナル駅だというのはご存知だろう。世界一の乗降客数を誇る駅としてギネス世界記録にもなっている。

JR東日本、京王電鉄、小田急電鉄、東京メトロ、東京都交通局の5社局11路線が乗り入れており、構内の造りは極めて複雑。初めて来た人のほとんどが迷ってしまうような構造であることから、インターネット上では「迷宮」「ダンジョン」と称されることも多い。

そんな新宿駅で、中国・三国時代の君主たちが民を奪い合っていた、というつぶやきがツイッターで注目を集めている。

これはイラストレーターの長崎祐子(@nukopin)さんによる、2021年9月21日の投稿だ。

映っているのは、「三国志」に登場する魏、呉、蜀の三国の各君主たちのイラストと、

「小田急こそ、曹孟徳の覇道である!」
「父とも兄とも違う、京王こそ孫仲謀の道」
「JRの民よ、劉玄徳と共に歩みましょう」

といったフレーズ。確かに新宿は世界一多くの「民」が利用する駅ではあるが、なぜこんなところで三国間の争いが起きているのだろうか......?

「小田急線沿線に引っ越さなきゃ...」

実はこれ、コーエーテクモゲームスが配信するスマートフォン向けシュミレーションゲーム「三國志 覇道(ハドウ)」の一周年を記念し、20日から26日まで新宿駅の西口広場に掲載されていた広告

魏の礎を築いた曹孟徳が小田急線、呉の初代皇帝である孫仲謀が京王線、そして蜀の初代皇帝の劉玄徳がJR線と、それぞれ新宿駅に乗り入れている各路線の「民」を率いているかのような面白いシチュエーションの広告となっている。

この広告に対し、ツイッターでは

「JRの路線が強すぎませんかね 多いぞ、JR」
「曹操推しなのに強制的に劉備軍に配属させられるJR民」
「小田急沿線に引っ越さなきゃじゃん......(魏の民)」
「大江戸勢のわたくしは誰について行けばよいのか」
「黄色は群雄...中央総武線?」

といった反応が寄せられ、話題となっている。

21日にこの写真を撮影したという投稿者の長崎さんも、24日、Jタウンネットの取材に対し

「各線と三国志ゲームのイメージカラーを合わせてあるのは素敵ですね。
好きな将についていきたくなるような、吸引力の強いキャッチコピーに心惹かれました。
私は曹操様が好きな小田急民なので嬉しい組み合わせでした」

と感想を述べている。

記者は27日、この広告を掲載したコーエーテクモゲームス(神奈川県横浜市)も取材し、マーケティング本部の担当者に詳しい話を聞いた。

各路線のカラーを意識して決定

9月に1周年を迎え、大型アップデートや各種キャンペーンなどを実施しているという「三國志 覇道(ハドウ)」。

担当者は「この機に遊んでいただく方を増やしたい」との思いで交通広告を実施した、と話す。掲出場所に新宿駅西口広場を選んだのは、ビジネス街であり、接触人数が多く、交通量の多い駅であることが理由。ゲームのメインターゲットが大人の男性で、その世代の多くは社会人だからだ。

その上で、このようなユニークなコンセプトの広告にした理由を、こう語る。

「コーエーテクモゲームスは、36年にわたり『三国志』を舞台にしたゲームを作り続けていますが、最近は海外も含め、競合タイトルが増えています。
そのため、単にメインビジュアルを出しているだけのクリエイティブではなかなか記憶に留まらず、広告効果が薄くなってしまう。さらに、単に交通広告では、新宿西口の該当の場所を通った方にしかリーチしない。
人流は戻りつつあるとはいえ、いまだに新型コロナウイルス感染拡大による影響がある中、新宿を通る方以外にもSNSを通じてこの広告に触れていただけるよう、話題になることを意識してクリエイティブを作成しました」

ところで、なぜ曹孟徳が小田急線、孫仲謀が京王線、そして劉玄徳がJR線の「民」を率いるという図になったのだろう。担当者に尋ねると

「コーエーテクモゲームスの『三國志』シリーズでは、長く『魏=青』『呉=赤』『蜀=緑』いう勢力カラーを使っています。その勢力色と、各路線のカラーが一致することから、『魏=青=小田急』『呉=赤=京王』『蜀=緑=JR』としました」

との回答が。ツイッター上で「カラーリングに合わせたのでは」と推測されていた通りだった。

今回、「三国志」好きをはじめ、多くのユーザーからの反応が寄せられたこの広告。反響に対する感想を尋ねると、担当者は、「とても多くのRTをされているツイートをはじめ、皆さんの反応は可能な限り拝見しております」とした上で、

「何よりもの感想は『皆さん、三国志に詳しい方が多い』という事に尽きます。
また、東京メトロはどの勢力だろう、総武線各停は黄色だから袁紹では という風に話題が拡がっていくのもとても面白いです。当社の広告を通じて、三国志について語る場ができていることを嬉しく思っております。
さらに言えば、そんな三国志好きの方には、ぜひ『三國志 覇道』をインストールして遊んでいただければと思います」

とコメントした。