強化試合の楽天戦に先発した侍ジャパン・山本由伸(左)と甲斐拓也【写真:荒川祐史】

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過去の経験生かしここ1番ではリリーフ起用も

 東京五輪に臨む野球日本代表「侍ジャパン」は24日、仙台市の楽天生命パーク宮城で楽天を相手に強化試合を行い3-5で逆転負け。しかし、先発のオリックス・山本由伸投手は2回1安打2奪三振無失点と、文句なしの好投でエースの風格を漂わせた。28日に開幕する五輪野球競技本番では、悲願の金メダル獲得へ向けて大車輪の働きが期待される。

 山本を現状でNPBナンバーワン投手と見る人は数多い。最速157キロの速球、150キロを超えることもあるフォーク、カットボール、カーブ、スライダーなど球種1つ1つが、どれを取っても一級品。今季は防御率1.82、9勝、121奪三振が全てリーグトップで、他の追随を許さない。

 この日は初回、先頭の小深田に141キロのフォークを右前打されたが、続くオコエには釣り球のインハイの149キロ速球を振らせて3球三振。茂木は143キロのフォークをとらえられるも中飛。続く島内の打席中、強肩のソフトバンク・甲斐拓也捕手とのバッテリーで小深田の二盗を阻止し、無失点で切り抜けた。

 2回は簡単に3者凡退。特に1死から“仮想外国チーム”として適役のディクソンを、ストレートだけで3球三振に仕留めたのは圧巻だった。初球にインハイの150キロでファウルを稼ぎ、2、3球目はいずれも外角いっぱいに決めてバットを出させなかった。

「フォークは外野まで飛ばされることが多く、空振りを取れなかった」

 前日(23日)には「楽天打線というより、(五輪で対戦する)外国人の打者を想定して投げられたらと思います。いつもの配球とは多少変わるかもしれません」と予告していた。実際には、この日投じた31球の内訳は、ストレート15球、フォーク6球、カーブ5球、カットボール4球、シュートが1球。ペナントレースでは30〜40%の配分のストレートが、48.4%を占めたのが目立った。

 東京五輪では、ミズノ製のNPB統一球とは違い、SSK製が使用される。この日も侍ジャパンの守備時はSSK製(攻撃時はミズノ製)。山本は「ボールの感覚は、困るほどではないけれど多少違う。どちらかと言うと変化球の方に違いが出るかな。変化量なども変わると思います」と説明。この日はストレートに手応えを感じる一方、「フォークは外野まで飛ばされることが多く、空振りを取れなかった」と口にした。

 とはいえ、2イニングの投球内容は危なげなし。ストレートの配分を増やしても十分抑えられることを実証した。バッテリーを組む甲斐とも話し合いながら、五輪本番での配球を練り上げていく。

 稲葉篤紀監督はかねてから山本を「先発、リリーフの両方ができる。非常に重要な投手」と評している。3年前の2018年ペナントレースでは、主に中継ぎとして54試合に登板した実績があり、東京五輪でも当面は先発の軸だが、メダルがかかる終盤のここ1番でリリーフ起用される可能性もある。獅子奮迅の働きで悲願の金メダルを奪う準備はできている。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)