自国開催でメダル獲得を目標に掲げるU-24日本代表【写真:Getty Images】

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【闘莉王インタビュー|第2回】東京五輪でメダルを獲得するために…勝利のカギを握るのは?

 いよいよ、東京五輪が幕を開ける。

 自国開催でメダル獲得を目標に掲げるU-24日本代表は今日、初戦の南アフリカ戦(東京スタジアム)を迎える。17年前の2004年アテネ五輪に出場した元日本代表DF田中マルクス闘莉王氏は、Football ZONE webの「東京五輪スペシャルアナリスト」に就任。本大会開幕を前に、森保ジャパンについて独自の視点で分析した。アテネ五輪で激闘を経験した闘将の目に映るU-24日本代表の姿とは――。独占インタビュー第2回は「日本のキーマン」について語った。

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「良い意味でダブルボランチが気になる。あと(吉田)麻也。そこが安定しない限り日本の勝利はないと思う。バンバン、カウンターを食らうようじゃ話にならない。カウンターを食らいそうになったら、そこ(ダブルボランチ、センターバック)でどれだけ潰せるか」

 メダル獲得を目指す日本はグループリーグでA組に入り、同居するのは優勝候補の一角に挙がるフランス、北中米カリブ海予選で首位通過したメキシコ、2大会連続3度目の五輪出場となる南アフリカと強豪国が属する。闘莉王氏は目標を達成するためのキーマンが、オーバーエイジ(OA)枠のDF吉田麻也、MF遠藤航に加えて、東京五輪世代のMF田中碧だと指摘した。

 OA枠の2人の名前が上がるなか、唯一、東京五輪世代で“キーマン”に指名されたのは田中碧。川崎フロンターレの下部組織で育ち、今夏にドイツ2部デュッセルドルフへ移籍した。Jリーグ制覇を経験した22歳は、今後A代表でも競争が熾烈なボランチで活躍が期待される逸材だ。闘莉王氏は、田中碧が日本のゲームメイクを左右すると予想する。

「スイッチが入る選手だと思っている。スイッチャーとして、どれだけ前に厚みを出せるのかのカギを握る。引かれた時には(田中碧の)ロングシュートがどれだけ通用するか。流れが少し悪くなった時に、そういうボールを捌ける選手。リズムをなんだかんだ保たせてくれる。(田中碧の)調子次第で日本の試合の運び方が変わってくると思います」

 その田中碧とコンビを組むのが、A代表でも欠かせない存在へと成長した遠藤。守備のカギを握るのは吉田やDF冨安健洋らで形成する最終ラインだけでなく、一つ前のボランチだ。

「(田中碧と)タイプは違うんですよね。潰し屋だから。守備の時の活動がストロングなので、どれだけコンパクトにしたり、田中碧を動かせるか。遠藤は一つのことに集中するのが大事だと思うし、ボールをどれだけ奪えるか、ショートカウンターを食らわせない、頭を上げさせないというのが大事」

 そして、やはりA代表の絶対的主将である吉田の存在も大きい。過去、2度出場したワールドカップ(W杯)だけでなく、五輪の経験も3回目。言葉と行動で仲間を牽引するリーダーシップは頼もしく、ピッチ上での経験値は五輪世代と比べて圧倒的だ。2010年南アフリカW杯では最終ラインを支えてベスト16入りに貢献した闘莉王氏は、吉田の“仕事”について語った。

絶対的な存在・吉田の“役割”とは…「判断は麻也に求められる」

「前に行くか行かないか、守る時も堅くするかしないか、ラインを上げるか上げないか、そこの判断は麻也に求められるし、僕らも期待している。でも、麻也が目立つんじゃなくて周囲をどれだけ動かせるか。おいしいところで顔を出せばいい。カウンターを食らわないような指示を出せるか。ここぞという時間に後ろからどれだけ押し出せるか。麻也がボコボコ跳ね返したり、1対1でもの凄いボールを取るとか、そういうのは期待していないですよ。そうならないように(事前に)仕切るのが大事だと思う」

 グループリーグを突破するために必要なのは、初戦の南アフリカ戦で勝利すること。国際経験の浅い若い世代にとって、自国開催で重圧のかかる初戦の入りは難しいが、立ち上がりからいかに押し込めるかがメダル獲得へのポイントとなる。そのために、吉田は何をすべきか。

「麻也が仕切っているディフェンスラインが高い位置にいないと、(相手を)バタバタさせられない。正直、ちょっとGKは気になっているんですよ。裏のカバーリングをどれだけするかという役割も果たしてほしい。特に初戦は(相手に)楽にプレーさせちゃいけない。どんどんラインを上げて相手のコートでサッカーをすることが大事。ゴールから近いとショートカウンターができる。南アフリカはそういうことをされたら嫌だなと思っていると思いますね」

 吉田が最終ラインをコントロールし、南アフリカへプレッシャーを与えることが重要。豊富な経験値を生かして守備を統制する必要性を語る一方で、闘莉王氏はMF久保建英やMF堂安律が牽引する攻撃陣の“見どころ”も明かした。

「堂安と久保は出るでしょうし、唯一左サイドの選手をどういう風にするか悩んでいると思うんですよね。あとはFWの3人(上田綺世、前田大然、林大地)で誰が一番調子が良いか。左に誰を使うか、ちょっと楽しみにしている。左ウイングを誰にするかでパターンも変わってくる。初戦は僕だったら相馬(勇紀)でいくと思いますね。三笘(薫)はコンディションを見ていないんでね。森保さんも堅くいくと思うんですよ。(森保監督が)相馬のほうが守備をできると思っているんですよ。相馬のほうが堅いんじゃないかと思いますね」

 森保ジャパンが勝利への道を辿るのに必要なのは、やはり「守備」。タレント性を生かした攻撃を形成するためにも、吉田を中心とした日本の“武器”に注目だ。

[プロフィール]
田中マルクス闘莉王/1981年4月24日、ブラジル出身。渋谷幕張高を卒業後、2001年に広島でJリーグデビュー。03年に日本国籍を取得し、04年アテネ五輪に出場した。その後は浦和でJ1とACL初制覇、名古屋でもJ1初優勝に貢献。06年にはJリーグMVPを受賞した。日本代表としても43試合8得点の成績を残し、10年南アフリカW杯ベスト16進出の立役者に。19年限りで現役引退。Jリーグ通算529試合104得点で、DF登録選手の100得点はリーグ史上初。現在は公式YouTubeチャンネル「闘莉王TV」でも活動中。(Football ZONE web編集部)