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 東京で古くからの問屋街といえば日本橋馬喰町。ひらがなにすると「ばくろちょう」。そして最寄りの駅名は馬喰横山(ばくろよこやま)。こっちも難読駅名としてメジャーだったりします。“うまくい”とか、“ばくう”じゃない。千代田区と中央区のほぼ区境の街で、老舗の人形店や花火店、専門商社などが立ち並ぶエリアです。

 そんな馬喰町に、昔から地元で働く人たちに根強いファンが多く、リタイアしてからもその味が恋しくなって食べに行く人がいるという、伝説のジャージャー麺の店、しかも大盛りがあると聞いて向かったのは『熊公』。オープンから半世紀以上、馬喰町に住んでいたり、働いていた人なら誰もが知るお店です。

看板メニューはジャージャー麺。アレンジメニューも色々

卓上にあるメニュー表。ラーメンやカレーもあるが、ほとんどの人が「ジャージャー麺」目当て

 店内はカウンター席のみ。早速卓上にあるメニュー表をチェックします。「ジャージャー麺」、「冷やし醤油ラーメン」、「冷やし味噌ラーメン」に続き、いろいろなラーメンのメニューが書かれていますが、その前に緑色の文字で 「※以後、それぞれにジャージャー麺、醤油味、みそ味があります」と書かれています。

 つまり、「ワンタン麺」も「メンマラーメン」も「野菜ラーメン」もジャージャー麺で注文可能。ジャージャー麺って、麺の上に肉みそとキュウリ千切り、ってイメージですが、ここではいろんなトッピングのジャージャー麺が楽しめるってことですね。

 そしてメニューには書かれていないけれど、いずれの料理も大盛りは+150円。今回は2人で来たので、「極上ジャージャー麺」の大盛りと、「野菜ジャージャー麺」の大盛りを注文!

想像以上に大盛り! 問屋街で働く人の胃袋を支えるデカ盛り「ジャージャー麺」

「極上ジャージャー麺」880円+大盛り150円。左側にあるのはママさん手作りワンタンとチャーシュー

 カウンター内にいるママさんと世間話をしつつ、出てきたのは、一般的な大盛りをはるかに超えるボリュームのジャージャー麺。というか、山盛りの具でほぼ麺が見えない。

 早速計測。直径28cmの大皿に高さ約14cm、重さは1929g(器の重さを除く)。約2kg! キュウリの千切りやもやし、コーンなどの野菜たっぷり、そしてチャーシュー3枚、ワンタン3個、ゆで卵。たっぷりの自家製肉味噌も存在感抜群です。

「肉味噌はごま油、生姜、ニンニク、味噌、唐辛子などで作る自家製のものですよ」。とママさん。卓上にはツボが置いてあり、足りなくなったら追加可能。ニンニクやごま油たっぷり、野菜にも麺にも合う、辛味がきいた味わいとのこと。

スマホや卓上にある調味料が小さく見える「極上ジャージャー麺」の大盛り。キュウリともやしが大盤振る舞い!

 計測を終えてまずは一口。麺を引っ張り出すのが大変そうなので、まずはもやし&きゅうりから。肉味噌につけて味わうと、みずみずしい野菜と肉味噌がメリハリのきいた美味しさ。あとから唐辛子の刺激がやってきます。

 野菜をある程度食べ進めたところで麺に肉味噌を絡めて一口。今度は、肉味噌の中のニンニクや生姜の味わいが強く感じられます。麺はストレートの太麺で新栄食品の麺。茹で前で1玉200gが大盛りは3玉半入っているとのこと。となると、おそらく、茹でた後は1kg前後のボリューム? そして、具と肉味噌が約1kg? そう考えると、炭水化物、野菜、タンパク質のバランス、いいかもしれません。

極上の大盛りよりさらに大きい『野菜ジャージャー麺大盛り』!

「野菜ジャージャー麺」880円+大盛り150円。さっきも大きいと思ったけれど、こっちの方が高さがある!

 続いて出てきた「野菜ジャージャー麺」の大盛りを見てさらに驚愕。さっきもでかい~と思ったけれど、こっちの方がでかい! 高さがある!

 こちらも計測。お皿は同じ直径28cmの大皿。高さは約16cm、そして重さは2116g(器の重さを除く)。2kg超えた! いや、見てわかる2kg超え! 野菜がたっぷりだから、実際は2kgなんて余裕で超えているように見えます。こんなにボリュームあって、880円+150円の、1030円でいいの? ママさん、大盤振る舞い過ぎでは?

「若い人たちに、野菜をいっぱい食べて欲しいのよ」とニッコリ微笑むママさん。とはいえ、野菜の量がすごい! 愛情たっぷりすぎです!

高さはスマホを超える約16cm。野菜たっぷりでとってもヘルシー! ボリュームはすごいけれど

「野菜ジャージャー麺」、という名前だけあり、とにかく野菜が盛り盛り。もやし、きゅうり、トマト、レタス、キャベツ、コーン、玉ねぎなどが溢れんばかりに盛られ、もはやパーティー? ブッフェ? ママさんの、野菜を食べて欲しいという気持ちが、大皿から溢れんばかりに盛り付けられた約2kgの山。素晴らしすぎます。

 食べても食べても山が平らにならない、そして肉味噌は食べ進めるごとに口の中に辛さが蓄積されていき、中盤になるとかなり口の中がビリビリきます。「時間がかかったらお酢をかけるといいわよ~」とママさん。野菜の重さで圧縮され気味だった麺をほぐす意味でも途中でお酢、オススメです。

 当然、途中で肉味噌が足りなくなり、卓上のツボから追加投入。でも、肉味噌をかけすぎると、さらに口の中のビリビリが強くなることに。この刺激がまたたまらない。そのせいか大盛りなのに飽きずに食べ進められます。野菜が多いから罪悪感ゼロ。大盛りなのに、体にいいことしている気分になります。

シメに出てくる「コーヒーゼリー」。口の中に溜まった辛さがこれで癒される~

 食べきれない場合、希望すれば食べきれなかった分はテイクアウト可能です。むしろ、こんなに山盛りにしてもらったのに、食べ残して去るのはいたたまれない。ママさんの愛情を裏切れません。もちろん、食べ残した分は包んでもらいます。

 そして、食事の後に出てくるのが「コーヒーゼリー」。これが肉味噌効果で痺れた口の中を、さっぱりとリセットしてくれる絶妙なデザート。水では流しきれなかった口に残るビリビリを消してくれます。はち切れそうなくらいお腹いっぱいでもスルッと入る「コーヒーゼリー」。もちろんこの「コーヒーゼリー」もママさんの手作り。肉味噌もワンタンもほとんどの加工品は手作りなので、どこか家庭的な、お母さんの味を感じられます。

カウンターの奥でどんどん具材を盛り付けていくママさん。青い容器の中には自家製の肉味噌が

 もやしやきゅうりなど野菜たっぷり、茹でたてのツルツル麺に辛さがじわじわくる肉味噌。そしてチャーミングなママさんとの軽快な会話。どこか懐かしささえも感じるアットホームな雰囲気の『熊公』。今回は大盛り注文で2kgですが、当然普通盛りでも一般的なお店よりボリュームがあるため、初めていく人は普通盛りから頼むのがオススメです。普通盛りじゃちょっと足りない、というときは、おにぎりやおいなりさん1個各60円などを追加注文できます。

 そして、ここにくる常連の大喰いさん情報によると、「ジャージャー麺半カレーセット」(780円)を頼むと、かなりお腹いっぱいになれるとのこと。次回はこっちを調査しに来ねば! 愛情たっぷりママさんのことだから、きっと1kgは余裕で超えるボリュームのような気がします。

 ちなみに、テイクアウトの「お弁当ジャージャー麺」は500円。「お家で作るジャージャー麺」は1人前250円で2人前から購入可能。甘い肉味噌って苦手、という人には、ぜひ『熊公』の肉味噌を一度味わってほしい! 食欲が落ちる暑い日とか、湿気でぐったり、って日でも、ここの肉味噌なら食欲復活、パワーチャージできるはずです。

 JR浅草橋駅からも徒歩圏内。だから、今度は問屋街のお祭りの日とか、都営新宿線でこっち側に来た時にまた食べに来たいなぁ。美味しさはもちろんですが、ママさんの笑顔を見たくて食べにくる、昔からの常連さんも多い気がする。長年にわたって馬喰町で愛され続けている理由が、ちょっとわかった気がしました。

(取材・文◎いしざわりかこ)

●SHOP INFO

店名:熊公

住:東京都中央区日本橋馬喰町2-5-11
TEL:03-3663-8955
営:11:00~14:30、17:00~19:00
休:土曜、日曜、祝日