井桁良樹シェフの「鶏と冬瓜の陳皮煮込み」【暑さ吹き飛ぶ!シビ辛レシピ #2】

中華の巨匠が教える、シビ辛な家庭料理

夏本番ももうすぐそこ!食欲が落ちがちなこれからの時期は、スパイスの利いたひと皿でなんとか乗り越えたいものです。

世界にはじつにさまざまなスパイスがありますが、中国特有の香辛料も忘れてはいけません。そこで、テレビでもすっかりおなじみの「中國菜 老四川 飄香(ピャオシャン)」の井桁良樹シェフに、香辛料が主役の家庭料理を教わります。中国香辛料を知り尽くす巨匠は、どんなレシピを教えてくれるのでしょうか。

井桁シェフの夏のおすすめスパイスは、唐辛子、花椒、陳皮、クミンの4種。そのなかから今回は、漢方薬としても重宝される、陳皮を使った料理を紹介します。

マンダリンオレンジの皮を乾燥させた陳皮は、整腸や咳止め効果がある漢方として用いられるほか、柑橘系の甘酸っぱい香りを楽しむスパイスとして重用されています。身近なところでは、七味唐辛子に混ぜられているんですよ。

たっぷりの陳皮を冬瓜と鶏肉と煮込んでいくと、ごはんにもビールにも合うひと皿ができあがります。

ごはんやビールとの相性抜群!鶏と冬瓜の陳皮煮込み

調理時間:30~35分

「うさぎを唐辛子と陳皮で煮込む四川料理の前菜をアレンジしたレシピです。うさぎを鶏肉に変え、本来は野菜は使わないのですが、夏らしく冬瓜を加えました。唐辛子をたくさん入れる料理ですが、今回は陳皮が主役なので、控えめしています。

“養生”という言葉があるように、中国料理の基本は“食べて健康になる”という考え方。それぞれの食材やスパイスには、体を整える効果があると考えられています。

陳皮はリラックス効果や気を巡らす働きがあるので、お肉のような活力を補うものを取り入れたときには最適です。一方の冬瓜は体の熱を冷まし、利尿作用がある、暑い夏にぴったりの野菜なんですよ」

材料(2人分)

・鶏もも肉……1枚(350g)
・しょうゆ……小さじ1杯
・冬瓜……450g
a. 唐辛子……3本
a. 花椒……10粒
a. 陳皮……25g
a. 長ねぎ(青い部分)……30g
a. しょうが……15g
b. 紹興酒……大さじ3杯
b. しょうゆ……大さじ1杯
b. 砂糖……大さじ3杯
b. 塩……小さじ1/4杯
・チキンスープ……500cc
・黒酢……小さじ1杯
・ごま油……小さじ1杯

下準備

・陳皮を15分ほどぬるま湯につけて戻す
・長ねぎの青い部分としょうがは、香りがでやすいように包丁の腹で叩いておく

作り方

1. 鶏もも肉に下味をつける

鶏もも肉を3cm角くらいの大きさにぶつ切りし、しょうゆを揉み込んで下味を付けます。

「しょうゆを先にお肉にまぶしておくと、炒めるときに香ばしく焼き上がります」

2. 冬瓜を下ゆでする

冬瓜は種を除き、皮をむいて約4cm角にカットし、面取りをします。ピーラーを使うと皮むきも面取りもサッサッとできます。続いて熱湯で軽く下ゆでします。沸騰したお湯に冬瓜を入れて、再度沸騰してきたらザルにあげます。

「冬瓜は90%以上が水分です。煮崩れしやすいので必ず面取りしてくださいね。また、下ゆですることでアクが取れ、独特の青臭さが気にならなくなります。

大きめにカットすると食べ応えもありますし、中まで味がしみてとてもおいしく仕上がるんですよ」

3. 陳皮をひし形に切る

陳皮は内側の白い部分をそぎ落とし、表皮を1cm幅のひし形に切ります。

「白い部分は煮込むと苦味が出てくるので、できるだけ削ぎ落としてください」

陳皮は一般のスーパーではあまり見かけませんが、ネットや中華系スーパー、漢方薬局等で購入することができますよ。

4. 鶏もも肉を軽く炒める

中華鍋でサラダ油(分量外)を熱し、下味をつけた鶏もも肉を中火で炒めます。あまり動かさずに、軽く焼き色を付けます。1分ほどで色付いたら肉は別皿に取り出します。

「お店では油通しで火を入れますが、ご家庭では油で軽く炒めれば十分です。テフロンのフライパンを使う場合は、油は入れなくてもいいですよ。

日本料理ではさっとゆでて煮込むことが多いですが、中国料理では必ず油を通して香ばしくしてから煮込みます」

5. (a)を炒め、(b)を加える

鍋にサラダ油大さじ2杯(分量外)を入れ、弱火で赤唐辛子、花椒を炒めます。油に香りを付け、続いて陳皮を加えて軽く炒め合わせます。

油が全体に回ったら、しょうが、長ねぎを加え、さらに炒めます。香りが十分でたら、紹興酒、しょうゆ、砂糖、塩を加えます。

「この料理では陳皮に加えて、唐辛子と花椒が入ります。元のレシピより控えめにしていますが、辛味が苦手な人はさらに減らしてもOKです。香辛料を油で炒めることで、香りと旨味が増すので、弱火でじっくり火を通してください」

6. スープ、冬瓜、鶏もも肉を加える

5にチキンスープ、冬瓜、鶏もも肉を加えます。強火で煮立たせ、鶏肉のアクを取り除きます。アクが出なくなったら、落とし蓋をして弱火で20分ほど煮ていきます。

「骨付きの鶏肉の場合はアクがたくさんでますが、今回は骨なしのもも肉を使っているので、あまりアクは出ないと思います。落とし蓋はベーキングペーパーを鍋の大きさに合わせてカットして使ってください」

「スープを500cc入れるので、フライパンでは溢れ出てしまうかもしれません。その場合は、炒めるときにはフライパン、煮込みは鍋でと使い分けるといいでしょう。

今回使ったのは33cmの広東鍋です。ご家庭用に購入する場合は、30cm前後のサイズが使いやすいと思います」

7. 仕上げに黒酢とごま油を加え、煮詰める

20分煮込んだら、香り付けの長ねぎ、しょうがを取り除き、黒酢、ごま油を加えて強火でさらに煮詰めていきます。汁気がなくなってきたらできあがりです。

「しょうがは見つけにくいので、取り除くのはお皿に盛り付けるときでも大丈夫ですよ。

酢はコクのある黒酢をぜひ使ってください。アツアツもおいしいですが、冷めるとさらに味が染みます」

冬瓜のイメージが大きく変わる逸品

「これが冬瓜?」と思うほどのねっとりとした食感に衝撃を受けました。鶏肉はしょうゆが香ばしく、陳皮の風味もじつに爽やか。間違いなく、冬瓜の新しい魅力を伝えるひと皿です。

「冬瓜と鶏もも肉の煮あがりの時間がほぼ同じなので、今回は鶏もも肉を使いました。でも、牛肉や豚肉を使ってもおいしくできます。

気を付けたいのは、煮込みにかかる時間の違いです。煮込み時間の長い牛のすね肉ではできあがりの20分前に冬瓜を加えてください。

豚の薄切り肉も合いますが、その場合は冬瓜を先にゆで、仕上げに豚の薄切り肉を加えてくださいね」と、井桁シェフからは貴重なアドバイスも。

柑橘風味がいいアクセントになる「鶏と冬瓜の陳皮煮込み」。アツアツもよし、冷めてもよし。ごはんにも合うし、ビールにも合う。この夏、いろいろな場面で活躍してくれそうです。

取材協力

店舗名:中國菜 老四川 飄香(ピャオシャン)麻布十番本店
電話番号:050-3134-5664
最寄駅:都営大江戸線 麻布十番駅 7出口 徒歩4分地下鉄メトロ南北線 麻布十番駅 5a出口徒歩 6分
郵便番号:106-0046
住所:東京都港区麻布十番1-3-8 Fプラザ B1F
市区町村:港区
町域:麻布十番1-3-8 Fプラザ B1F
営業時間:ランチ 11:30 ~ 15:00 (L.O. 14:00)ディナー 18:00 ~ 23:00 (L.O. 21:30)
定休日:月曜日、第1・3火曜日

※麻布十番本店、六本木ヒルズ店、銀座三越店では、いずれも本場成都の伝統四川料理が味わえます。汁なし成都タンタン麺「正宗担担面」が人気。“ひとさじ加えるだけでいつもの味が劇的に変わる!”と噂のオリジナルラー油「一滴香(イーディンシャン)」はオンラインでも購入が可能です。