なぜトヨタ「プリウス」は狙われる?  日本人気の影であえてプリウスを盗難する世界的理由とは

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アメリカやイギリスでとくに多いトヨタ「プリウス」の被害、なぜ?

 盗難されやすいクルマとしてトヨタ「プリウス」が有名ですが、実は日本だけではなく世界中でプリウス盗難被害が多発しているといいます。
  
 なぜ、プリウスは日本のみならず世界中で盗難被害に遭いやすいのでしょうか。

なぜトヨタ「プリウス」が異様に狙われる? 人気車多いなか、あえてプリウス盗難する世界的な理由とは、どのようなものなのでしょうか?

 日本におけるプリウス盗難台数は近年、トップとなっています。

【画像】 黒マークがカッコイイ!トヨタ新型「プリウス」正式発表!(25枚)

 同じくトヨタの「ランドクルーザー」が1位となっている盗難台数統計もありますが、これは1年のなかの特定月における調査です。

 さらに盗難と認められて保険金が支払われたケースに限定されるなど、日本で盗まれたすべての台数を集計しているわけではありません。

 警察庁の統計をはじめ自動車盗難データを関連資料から抽出した車種別の盗難台数では、プリウス(2019年:793台/2020年:517台)、ランドクルーザー(2019年:654台/2020年:395台)となっています。

 プリウス盗難が多い理由について、2021年7月6日に一部メディアで「窃盗団の足として使われるため」という報道が出ていました。

 これは、ハイブリッド車が夜間に住宅街を移動する際など静かで都合が良いことが挙げられます。

 実際、車両盗難の様子を記録した防犯カメラの映像にプリウスが映っている例は多く、盗難車を物色していたであろう目撃事例でも「プリウスに外国人風の男が4人乗っていた」という報告を聞きます。

 しかし、プリウス盗難される例が多い理由はほかにもあります。

 日本で盗難されたクルマはそのほとんどが、解体されて部品として海外に持ち出されています。

 完成車での輸出は「輸出の届出」が必要となり、ナンバープレートの返却や輸出抹消登録などが義務付けられているので、バラバラにしてコンテナに押し込んで部品として海外に密輸するというわけです。

 プリウスやランドクルーザーなど海外でも数多く走っているクルマの場合は中古補修部品としてアフターマーケットにおける需要が高いのです。

 昨今それらの部品のなかでもとくに高値で取引されている部品のひとつに「触媒コンバーター」(Catalytic converter)があります。

 触媒コンバーターとは、排気ガスに含まれる環境や人体に悪影響を及ぼす汚染物資を酸化・還元反応によって浄化する装置です。

 クルマの排気系統に取り付けられる装置で排ガス中の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)の3物質を浄化します。

 この触媒には高額な白金、パラジウム、ロジウムが使用されており、2020年以降は世界的に価格が高騰しています。

 アメリカやイギリスでも盗難が急増している部品でとくに、プリウスに代表される日本製ハイブリッド車が狙われているのです。

 触媒コンバーターはクルマの下にもぐって接続部品をカットすればものの数分で盗むことが可能なため「盗みやすくて価格が高い」コスパが良い部品ともいえます。

 アメリカでの盗難事情について、ロサンゼルス近郊に住むA氏は次のように話しています。

「今アメリカで一番大きい出来事は触媒コンバーターの窃盗です。

 1番人気はプリウスの触媒コンバーターで家の前に停めていても盗まれてしまう事件が多発しています。

 非常に高価な部品(20万円から30万円)の為に盗まれてしまったら一大事です。

 夜間、家の前に停めていたクルマから触媒コンバーターだけを外して盗む例が多発しています。一晩で近隣のハイブリッド車が軒並み被害にあった地域もあります」

なぜ? 日本製ハイブリッド車が狙われる?

 アメリカだけではなくイギリスでも触媒コンバーターの盗難は急増しています。

 ロンドン警視庁の自動車犯罪対策チームによると、2019年にロンドンで9500件だった触媒コンバーターの盗難は、2020年に約1万5000件にまで急増。ロンドン以外のほかの警察も触媒コンバーターの盗難増加を報告しています。

 英国チューリッヒ保険によると2019年からの2年間で触媒コンバーターの請求が450%も増加しており、盗難保険金請求の約8割がトヨタ、レクサス、ホンダのハイブリッド車に対するものだったと公表しています。

 ほとんどはクルマが自宅近くの道路や駐車場に停まっているときに発生していますが、オーナーが買い物中のスーパーマーケット駐車場で盗まれる例も多くあるようです。

複雑かつ高価なパーツで構成されるトヨタ「プリウス(現行型)」

 ところで高価な金属が使われる三元触媒は1990年代以降生産されたほとんどのガソリン車に装備されていますが、なぜ、プリウスに代表される(とくに古い世代の)ハイブリッド車が多く狙われるのでしょうか。

 大きく理由はふたつ挙げられます。

 1. 古い世代の触媒にはより多くの高価なパラジウムやロジウムなどの貴金属が含まれる。

 2. 電気モーターとガソリンのふたつの動力源を備えているため触媒コンバーターが汚染物資の処理に使用される頻度が低い(=触媒の内部にある金属が腐食する可能性が低くなり価値が高まる)

 英国トヨタでは公式サイトにおいて、次のように注意喚起しています。

「貴金属の含有量が高い第2世代(2004年から2009年)と第3世代(2009年から2016年)のプリウス、第2世代の「オーリスハイブリッド(2012年から2018年)が標的になりやすい。

 新しいハイブリッド車の触媒コンバーターでは貴金属の量を最大84%削減しているため、新型ヤリスなどは盗難リスクが低い」

 注意喚起以外にも、英国トヨタを含む海外の日本車ブランドでは、メーカーによる触媒盗難防止活動を積極的に展開しておりCatlocという保護装置や盗まれた触媒の行方が追跡できるシステムなどを導入しています。

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 ちなみに、車両本体が駐車場からなくなればすぐにわかりますが、触媒コンバーターを外されたクルマはパッと見たところでは気づきにくいという難点があります。

 触媒コンバーターを盗まれたクルマの場合、エンジンをかけるとO2センサー異常でエンジンチェックランプが付くのと、何よりも排気音が爆音になるためそこで初めて異変に気づく人が多いようです。

 外出自粛でクルマに乗る機会が減っており、盗まれたことに気づくまで数日かかるという状況も触媒コンバーターの盗難が世界的に増える理由のひとつかもしれません。